BMW M 50年のあゆみ|M’s GREATEST HITS



そして90年代…

E30がグループAの厳格なルールに則って作られたのに対し、E36はそのような制約を受けずに開発された。1992年に発表された新型M3は、よりロードフォーカス・マシンとして、286bhpを発生する新しい3.0リッター24バルブツインカム直6エンジンを搭載していた。このエンジンは、ドライバーの操作性だけでなく、快適性や洗練性も重視され、それ以降のすべてのM3の形式を決定づけた。クーペのほか、一時期は4ドアサルーンやコンバーチブルも用意され、アメリカではビッグセラーモデルとなった。また、1996年からは6速マニュアルかセミATを選択できるようになり、3.2リッターエンジンは316bhpにパワーアップされた。



1993年の社名変更では、モータースポーツ部門がレースの枠をはるかに超えて成長したため、BMW M GmbHとなった。名称に関する話で言うと、1998年に発表されたMクーペは、「ピエロの靴」という蔑称で呼ばれ、デビュー直後の印象はあまり良くなかった。M3の直6(当時317bhp)を搭載したこのモデルは、1997年のZ3Mの廉価版であり、ちょっとしたホットロッドのような存在だった。リアのセミトレーリングアームがやや雑なため、M3の兄貴分と言うには落ち着きと実力に欠けるものの、クーペのボディはねじれ剛性を高め、ストリートでは絶対的な存在であった。そのルックスもまた、年月を経るにつれて確実に円熟味を増している。E46 M3の改良型エンジンが搭載されたのも魅力の一つとなっているだろう。

1998年に登場したE39 M5は、多くの人にとって最高のモデルである。M初のV8エンジンは400PS(英国では394.5bhp)を誇り、2万台以上が製造された。



最近のモデルたち

そして1999年に発表されたのがE46 M3だ。軽量版のE46 M3 CSLの素晴らしさについては、グレン・ワディントンがすでに語っている(前号のUK版オクタンの特集を参照)ので省略させていただく。標準のM3は、新しいエンジンと遊び心のあるシャシーのおかげで、もともととても優れていた。SMG-IIシーケンシャル・ギアボックスも購入者にとって以前より選びやすいオプションとなっていた(先代に比べてかなり改良が重ねられていたため)が、SMG-IIの設定のみのCSLとは異なり、標準モデルはまだ6速マニュアルでを選択することができたのも魅力的である。CSLの改良が施されたマニュアル仕様のCSも、とてもお買い得である。

続いて登場したのはV10エンジンを搭載したM5だ。ロードカーのエンジンとしては、ポルシェカレラGTやフェラーリF50に匹敵するものがある。ランニングコストでも、おそらく遠く及ばないだろう。V10はM5を初めて500bhpに押し上げ、アウトバーンでは非公式ながら時速200マイルを超えた。究極の興奮を求めるなら、ツーリングバージョンを選択することも可能だ。ちなみにこのV10エンジンはM6クーペにも搭載されている。



2006年に登場したZ4Mロードスターとクーペは、先代のZ3Mと同様に、視点を変えて改良されている。クーペは硬派な小型スポーツカーで、トリッキーなハンドリングで知られる。E46の直6を搭載し、直線ではM3より速かったのだ。

そして、もうひとつのV8モデルが登場した。2007年、M3の気筒数はさらに増え、珠玉のMエンジンが登場した。当時はまだ誰も知らなかったが、これがM3にとって最後の自然吸気エンジンとなった。当時、直6を惜しむ声がある一方で、V8は別次元で特別な存在となった。M5と同様、4.0リッターを8400rpmまで回転させるF1技術が導入され、トランスミッションは従来のマニュアルに加え、より優れたDCTが採用された。クーペとサルーンが用意され、なかでも444bhpのGTSを4ドアにしたモデルであるM3 CRTは、選りすぐりの車である。

当時、自然吸気からターボへの切り替えがどれだけ議論を呼んだか、今となっては想像もつかない。2011年は多くの人が1Mが正統なMと呼べるのかどうか疑問視していた。法規制によって自然吸気エンジンは廃止されたが、事実として、1Mは335bhpの3.0リッター直列6気筒ターボから圧倒的なパフォーマンスを発揮する。1Mは英国でわずか450台しか生産されなかったものの、E46 M3 CSLと並ぶ偉大なMシリーズであると主張する人もいるくらいだ。

2014年には、新しいターボチャージャー搭載のM3(サルーン)とM4(クーペとなった)が登場し、従来のV8ではなく、最高出力425bhpの3.0リッター直列6気筒ターボが搭載された。コンペティション・パッケージは飛躍的な進化を遂げたが、2016年に発表されたM4GTSはBMW史上最速の車と謳われた。さらに、493bhpを引き出すためのウォーター・インジェクション・システムが搭載され、強烈な性能を発揮した。3.8秒で62mphに到達し、190mph(約305km/h)まで加速する(スピードリミッターはない)。

2015年の1Mに続き、M2も逸品で、カルト的な人気を博した。小さく、パワフルで、十分にアグレッシブ。改良によってダイナミクスも改善された。M4の444bhpのターボ6を搭載し、6速マニュアルも用意されたM2 CSは、空高く舞い上がったような感覚にさせてくれる徹底的に走りにこだわった1台だ。

Mシリーズは後輪駆動でなければならないのだろうか?最新のF90世代M5は、そんなことはない。600bhpの4.4リッターツインターボV8を搭載しているため、4WDが必要なのだろうというのが率直なところだ。最新のCSバージョンは、1825kgと標準のM5に比べると軽量仕様で626bhpを発揮し、畏敬の念を抱かせるようなドライバーズカーとなった。

Mシリーズの未来、この先には一体何があるのだろうか?最近だとM4 CSLが発表された。標準のM4より100kg軽量化され、さらにリアシートの廃止や、カーボンルーフの装着など、50年の間で3度目の採用となるこの伝説的なバッジにふさわしい車と言えるだろう。スタイリングは、ダックテールスポイラーを備えてクールである。E46 M3 CSLに倣ったスタイルなのだ。




文:Matthew Hayward

オクタン日本版編集部

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