健やかなるラグジュアリーカー、ベントレーコンチネンタルGTCスピードで癒しの旅へ

Toshiki KOBAYASHI



動的性能においてもベントレーは「癒して」くれるのか


しかしそれだけではベントレーのウェルビーイングは完成しない。車の感性の品質は静的×動的な性能が高いレベルで共鳴しなければ完璧な一台とは言えない。

手馴染みはもちろん視覚的にも質の良さが愉しめるアルカンターラとレザーを組み合わせたやや重めのステアリングを操作しながら、トルクの厚みを操作感で伝えるやや踏み応えの重めのアクセルペダルを踵を床につけミリ単位で操作してみる。決して硬質ではない足元の滑らかな走行フィールと操作感、それに反応する動力レスポンスが実に整えられている。そこでドライバーはスポーツ走行のようにドライビングに特別な意識を求めないときはストレスフリーの“移動”をこの空間でゆったりと楽しむことができるのだ。

6リッター W12ターボエンジンに8速トランスミッションを採用するGTスピードコンバーチブルは発進も加速も非常にマナーが良い。箱根を目指し高速道路に向かう途中の街中では659ps/900Nmを忘れ、高速道路であっても持ち合わせた動力性能の一部を引き出して走る“余裕”がドライバーにはゆとりとなる。もちろんドライバーが望めば淀みない加速を厚みのある音質のエキゾースト音とともに得ることができる。ただし音の侵入はレーシーなモデルほどダイレクトなものではないのがベントレーのスピードモデルらしいところだ。

正直なところ、GTスピードコンバーチブルはV8エンジンを搭載するGTモデルやクーペモデルのGTスピードに対して車重が増し、実際やや重たい印象はある。しかしそんなボディを四輪が路面にドッシリと乗り心地も良く安定させ、優雅なグランドツーリングを味合わせてくれるのだ。

専用ルーフを閉めた状態の静粛性はクーペのそれと遜色ない。不要な音は遮断され、しかし“スピード”モデルとしては多少の音は欲しいところでもある。走行シーンによって求め引き出すエキゾースト音もトルクもドライバー次第だ。



高速道路を降り、走行中でも50km/h以下であれば約19秒で開閉できるルーフを開け、少しだけ海岸線をドライブしてから箱根の山を上がった。

「静×動のGTスピードのシナジー」はまだ続く。新緑のトンネルを抜けるようなワインディングドライブはストレスフリーであるばかりか、爽快さに心身がクリアされていくようだった。



コーナーではステアリングやアクセル/ブレーキペダルの操作フィールと動力のリニアな連動感が色濃く伝わり高性能モデルぶりが表れる。高い剛性を保つボディをフラットに保ちつつ、タイトなコーナーが連続するようなシーンでもスキルを問わずスマートなステアリングワークでクリアしていくことができる。豊かなトルクの与えられたこのモデルはアクセルを踏み込むほどにタイヤが路面を捉える感覚が増す。そんな感覚をオープンドライブでも愉しめるがコンバーチブルの魅力でもある。このコンチネンタルGTにはオールホイールステアリング(4WS)を採用し、さらにこの新型GTスピードにはベントレー初採用となるエレクトロニック・リア・デファレンシャル(eLSD)も装備されている。アクティブAWD(4WD)の前後の駆動力配分のフレキシブルさもさることながら、4WSがタイヤの舵角を、さらに後輪のトラクション性能をコントロールするe-LSDが加わり、ひとクラス下のボディを走らせているような感覚を抱いた。



ちなみに今回、復路はクーペモデルのGTスピードをドライブしたのだが、クーペはコンバーチブルとは少しキャラクターが異なる印象だ。ボディの塊感がより強く、滑らかな走りは変わらぬもののコーナーリングをした際の俊敏さやダイレクト感が“GTスポーツ”らしい。スポーティなドライブフィールに求めることを優先(オープンドライブの愉しさよりも)するならクーペモデルがおすすめだ。



ドライブモードをスタンダード=“B”(ベントレー)モードから”スポーツ“モードに切り換えれば、エンジンやトランスミッション、e-LSDなどの電子デバイスの制御も音もスポーツドライブモードに切り替わるが、今回のようなドライブでは”B”モードでも十分だと思えた。

あくまで車は工業製品だ。車で心身が整う感覚を最上レベルで求めれば、静×動のどちらも高いレベルになくてはならず、そのどこか一部でも妥協や雑味を感じてしまえば不完全なものになってしまう。ベントレーのウェルビーイングはそう言ったところが質高く整えられている。さらにコンチネンタルGTスピードコンバーチブル/GTスピードは速さだけを求めるのではない高性能さが備わり、より豊かな感性を愛でて、触れて、走らせた快感とともに満たしてくれるモデルだった。

文:飯田裕子

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