健やかなるラグジュアリーカー、ベントレーコンチネンタルGTCスピードで癒しの旅へ

Toshiki KOBAYASHI

「整うクルマ」。最近では“整う”という言葉を良く耳にするけれど、私が車でそんな感覚を初めて意識できたのが実は5年ほど前に初めてベントレーのベンテイガを試乗したときだった。

モーターショーが開催されていた時期でふだん以上に忙しく仕事をしていたあの日も、青山で取材をひとつ終えたあと、ベンテイガの取材をすることになっていたのだ。疲れていた私は「決して扱いサイズとは言えない“ベントレー”は気を引き締めて十分に注意して運転をないと」と、ふだんより少し気乗り薄だった。

ところが・・・。走りはじめて数百メートルで「なんだろう、この安らぐ感じは?」と身体の緊張がほぐれていくような感覚を覚えたのだ。それが今となっては私にとって忘れられないベントレーの細やかさを感じた成功体験のひとつになっている。

だから今回、「ウェルビーイング」というテーマをいただき、ベントレーコンチネンタルGTCスピードをドライブしながら箱根は強羅の旅館「佳ら久」に向かうことには最初から少しの違和感も疑問もなかった。「ベントレー×温泉」、それだけで幸福な気持ちになる。



2017年に登場した3代目コンチネンタルGTやGTコンバーチブルをはじめほぼすべてのベントレーを何度となく試乗している。そこでベントレーの車づくりには乗る人に充実感や豊かさを与えてくれるという本質的な部分を共通して持ち合わせていることは理解しているつもりだ。唯一の興味は、ベントレー史上最もハイパフォーマンスモデルと称されるGTスピードの“SPEED”の世界でも心や身体が整うのか、ということだった。


コンチネンタルGTCスピード、その「静的空間」の中での豊かさ


まず、室内で過ごすだけで感性を豊かにしてくれる車なのだ。内外装の素晴らしさはベントレーとて決して当たり前と片付けてはいけない。感覚的な豊かさとそれを整然と魅せる隅々まで配慮がうかがえる統一感。その“質の高さ”こそベントレーのこだわるところだ。

「感覚的な体験の豊かさ」。レザーや木材のバリエーションも豊富なベントレー。今回のGTCスピードは伸びやかなオープンフォルムに「ピーコック」という色名のメタリックブルーを纏い、室内はリネン×インペリアルブルーのレザーが組み合わされていた。ラウンド感とシート配置のデザインも美しい後席にいたる隅々まで高い品質と共に美しさが保たれている。そんなインテリアも覗ける姿を空と海の青さも爽快な海沿いの駐車場で眺めウットリ、ため息がこぼれた。



さらに内装に注目したい。このスピードモデルではシートバックやトリムに「ダイヤモンド・イン・ダイヤモンド」キルトを標準採用している。これはひとつのダイヤモンド(ひし形)に712針ものステッチをほどこし二重になっているパターンで構成され、沢山のダイヤモンドのステッチはレザーの張りを計算しながら施され、その立体的な仕上がりが室内に華やかな印象を与えている。



ダッシュパネルは輝度も統一された上下異なる2種類(2色)の木材を使い、その間を細いメタルラインがエアコンの吹き出し口を通過しドア(サイド)まで寸分違わず一直線で繋がり、ラウンド感を演出。実に優雅だ。しかもこの中央部はタッチスクリーンやアナログメーターなど3つのパターンに切り換えられるローテーションディスプレイが採用されているのだが、動作を目撃でもしないかぎりそのようなギミックが採用されていることには気づかないだろう。エアベントの風量調整のレバーの重みを伴う操作感しかり、金属のヌメっとした指触りは高級宝飾ブランドの指輪の滑らかに仕上げられた内側(指通りが良く幸福な気持ちになる)の仕上げに似ている。円形のエアベントの存在感もふくめベントレーに無くてはならないパーツだ。ダイヤル類も凝っている。リング部に時計のベゼルのような精巧なカッティングをほどこされ、内部にゴールドメタルをあしらう細工、表面の艶感も空間の世界に数点のアクセサリーのような存在感をさり気なくも演出している。





革のコンビや糸の刺繍、木、金属の素材が創り出す色や艶、温もりはベントレーの職人たちによる精巧な組み立てや仕上げがあってこそというもの。ただ上質な素材を使っているわけではない、すべての操作フィールにも妥協せず、感性を豊かに満たす感覚にまでこだわるクラフトマンシップはここでは語りきれない。しかし、この空間で過ごす時間が気持ち良いことは間違いない。

文:飯田裕子

無料メールマガジン登録   人気の記事や編集部おすすめ記事を配信         
登録することで、会員規約に同意したものとみなされます。

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

RANKING人気の記事