女性だけのクラシックカーラリー『ラリー・デ・プランセス』|優雅に華やかに、そして力強く

Kazuhiro NANYO


スタートの光景は、ヴィヴィアヌがフランスの三色旗を振って一台一台を送り出すという、このラリーの伝統通りだった。異なったのは方面で、従来なら南を目指していたところだが、オペラ座から17区を抜けて、各車とも北西を目指したのだ。そう、パトリック・ピーターの新提案は、これまでのアルプスなどの山越えの後に南仏を目指すルートではなく、ノール地方からノルマンディ、ブルターニュを周って最後に大西洋岸、ラ・ボールの街をゴールするという、北仏ルートだった。以前よりも多少、総走行距離は短くなったものの、陽射しも徐々に強さを増して気温も上がる南仏ルートとは、また異なる楽しみと快適さがあったことは確かだ。温暖化の進む今、5月初旬の北仏なら概してまだ冷涼で、コンバーティブルやカブリオレはおろか、ドロップヘッドクーペなどオープン・モデルも少なくないプリンセスたちには好都合。むしろ雨の多いこれらの地方を楽しむには、晴天率の高いこの季節こそが最良といえる。





果たして主催者のこの賭けは、幸いしたようだ。初日のゴールに設定されたル・トゥーケはノール地方にあり、現職のマクロン大統領の一家が別荘を所有することで知られる北仏有数の名リゾート。北国特有の鮮やかな新緑と柔らかく長い陽射し、そしてリンゴ園や麦畑の景色は、エントラントたちを楽しませた。





2日目はオート・ノルマンディからバス・ノルマンディへ、ノルマンディ地方を横断するコースだった。ランチ会場となったディエップ近郊、シャトー・ドゥ・ヴァランジュヴィルで、広大な芝生の庭にプリンセスたちの愛車が緩やかな扇状に並べられた様は、圧巻のゴージャスさだった。加えてこの日は、旬のフリュイ・ルージュ(いちごやベリー類)をたっぷりのせたデザートが、好評だった。



2日目ゴールのドーヴィルでは今開催を通じて唯一といっていい土砂降りに見舞われたものの、プリンセスたちも心得たもので、幌屋根の下で雨宿りしながらルートブックの予習に充てていたようだ。モーガン4/4の二人だけは、シート上で雨傘を差していたが。



文・写真:南陽一浩 Words and Photography:Kazuhiro NANYO

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