次の15万kmへ!|30年間ワンオーナーのホンダNSX リフレッシュ大作戦[前編]

Fuyuki HYODO



レストアではなくリフレッシュ


東京から東北自動車道を快走して約1時間半。栃木県の旧高根沢工場の一角にあるリフレッシュセンターは、指定工場、板金・塗装工場の役割を兼ね備えた上で、骨格の損傷修復や交換品の管理もおこなうサービス工場だが、提供するプランはあくまで「リフレッシュ」プランであり、決して「レストア」と呼ばれることはない。オールアルミボディのNSXは、骨格が錆で腐食することがないからだ。

実はこの「NSXリフレッシュプラン」は、29年前から存在する。1990年の新車販売から3年後、最初の車検を迎える1993年に設置された。2002年にNSXの生産が鈴鹿製作所へ移転したことで、拠点はいったん移るものの、鈴鹿製作所での生産が終了したことにともない、2010年にNSXの生まれ故郷である栃木へ戻り、リフレッシュセンターとしてサービスを開始した。鈴鹿から栃木へ移転してまで継続する理由は、現在も登録されている車両数の割合(残存率)が際だって多いことにある。

一般財団法人自動車検査登録情報協会は、2021年3月末現在の車両残存率を発表している。データのあるなかで初度登録年度が最も古い1992年4月~1993年3月の車両で、残存率はわずか3.27%。一方で、初代NSXの残存率は約80%に達する。これは多くのユーザーが大切に乗ってきたことの証明であり、アルミ製の骨格に劣化が少ない証でもある。そして、現役の車両が多いということは、リフレッシュのニーズも高まる。1年もの入庫待ちが続いている背景には、そういった事情もある。

「トップクラスの技術者による、匠の技を基盤とした、人材育成と市場支援の場です」とリフレッシュセンターの古市所長は語る。歴戦の職人たちがパーツの入ったダンボールの山に囲まれ、数台のNSXに向かって黙々と作業する姿は、山中の工房で刀剣を鍛える名匠のように見える。さらに薫陶を受けた若い技術者が、その志を継いでいく。

栃木県の旧高根沢工場の一角にあるNSXリフレッシュセンター。現行モデルのNSXのほか、レジェンドなどの一部車種も扱っている。整備棟の内部には数台のNSXが並ぶ。

入庫をすると、さっそく車をリフトアップ。アンダーフロアを覗くと、オイルの滲みや錆が見て取れる。アルミボディゆえに、一部のナットなど限られた部分しか錆が発生していないのが面白い。このように実車を見ながら、オーナーと実施するプランについての最終的な打ち合わせが始まる。



完成するのは早ければ3カ月後の予定だが、複雑な作業が多いことから、さらにもう少し時間がかかるかもしれない。リフレッシュプラン実施後のインプレッションにも、乞うご期待を。

オクタン日本版編集部

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