オクタンUK版編集長を虜にした車、マーコス・ヘリテージ・マーク6の魅力とは

JONATHAN FLEETWOOD

最初のミニ・マーコスが発売されたのが1960年代中盤だったとは、驚きだ。そのインスパイアの源といえばミニDART。テストパイロットでありレーシングドライバーだった人物、ディジー・アディコットにより作られたDARTは、ミニの駆動部とサブフレームにワンオフのグラスファイバー製モノコックのボディを載せたレーシングカーだ。クラッシュしたミニのバンをベースとしたこの車は、ポール・エメリー(エマーソンフレーム社)によって、アディコットのために造られた。

ミニ・ジェムとミニ・マーコスは、約1500台が製造されたという。ジェム・マーシュは、1965年から1996年にかけて、断続的にキット販売をしていた。そしてマーコスが倒産した際、他のものと同様に、2000年にローリー・マクマスによるマーコス・ヘリテージがその権利を取得。2005年には、マーコスの販売が始められた。

このひときわ明るいイエローのデモカーは、ある意味伝説の一台だ。当初は見習い工たちのためのワークショップ・プロジェクトとして作られ、その後は、このキットやコンプリートカーを購入したいという何百、いや、もしかすると何千人もの人々がこの車のハンドルを握った。



マクマスは、こう言っている。「私たちが販売を再開したとき、ほとんどがキットカーとして販売されると考えました。なので私は、ワークショップのメンバー達のためにサマーフォルド・ミニがレストアした1993年のミニ・クーパーを購入したのです。そしてその車両にボディシェルを装備した上で、仕様書を制作するように指示しました。機械的には、LCBマニホールドとフォークリフト用のサスペンション以外は、完全にスタンダードなものです。その後も、この車はマーコス・ヘリテージ社の唯一のデモカーだったのです。これはマーク6ですが、私たちはヘリテージ・マーク6(レース仕様はGT)と呼んでいます。『ミニ』という名前を使えないためです」

私が初めてこの車を運転したのは、恐らくもう10年ほど前だ。仕事終わりに少しドライブしただけで、記事にすることができなかった。なぜなら、この車のとりこになってしまい、集中することができなかったのだ。

“ザ・セイント”と呼ばれる1600GT(『オクタン日本版』38号参照)の撮影準備をしてすぐ、ヘリテージ・マーク6を借るためにローリーを説得するつもりだった、彼は喜んでキーを貸してくれた。この車について、そのルックスやドライビングを評価していない人がいることは理解できる。しかし私にとっては、身体にぴったりフィットし、私が車に望む、低速でのスリルとアドレナリンの大量分泌という要素が完全にマッチする車なのだ。

操作に対する反応はデリケートかつ正確で、レスポンスも素早く、車とドライバーが一体化するという意味においては、あたかも衣服のように感じられる。大型エンジンの車やレーシングカーの方がセンセーショナルかもしれないが、この車ほど楽しいものではないと私は断言できる。



さらに、クラシックカーを何台も乗り続けた私でも、この車ほどスピードを緩めずにラウンドアバウトを抜けられる車を他に知らない。おかしな褒め方かもしれないが、そのことが頭から離れないのだ。

マーコス・ヘリテージからの販売は年に数台程度で、ロードカーキット1台分は8500ポンド+税金だ(GTバージョンは250ポンド追加となる)。控えめな価格設定だし、喜んでオーナーになりたいという人が今でも絶えないはずだ。

10年以上前に所有していた私も、また一台欲しくなってきた。


文:James Elliott まとめ:オクタン日本版編集部

オクタン日本版編集部

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