タイムワープを体験したい方へ 異色の車イベント GOODWOOD REVIVAL 2023

Photo: Ayato Matsumoto, Goodwood

クラシックカーに関係するイベントは、世界中で多種多様なものがある。カリフォルニアの穏やかな海辺を舞台とするコンクールデレガンス、歴史ある建造物が並ぶパリで開催されるモーターショー、イタリアらしい色鮮やかな美しい地を巡るラリー、往年のレースカーが当時戦ったサーキットを駆けめぐるレースイベントなど。どのイベントもそれぞれの個性があり素晴らしいものだが、グッドウッド・リバイバルに初めて足を踏み入れてみて、他のイベントにはない独特なキャラクターを持つ空間に魅了されたのであった。



グッドウッド・リバイバルは、1948年設立のグッドウッド・モーターサーキットを舞台に開催されるレースイベントである。サーキットはイギリス南部に位置し、ロンドン都心からはちょうど100km程、ひたすらモーターウェイを走り続け山道を少し走れば到着する。公共交通機関でも行けなくはないが、車で行くことをおすすめする。なぜならば、駐車場からすでにイベントが始まっているからだ。フランスやドイツ、ベルギーにイタリア、ヨーロッパ各地のナンバーが付いたユニークな一般来場車でびっしり埋まっている。駐車場を見ているだけでもあっという間に一日が終わってしまうほどである。

一般駐車場にて。

イギリスらしい。

展示兼駐車場エリア。

駐車場がモーターショー状態。


大まかに分けると会場は3エリアになっている。ほとんどの人が最初に辿り着くのは遊園地とオークション会場があるエリア(①)だ。ここはビール売り場も多数あり、半分ビアガーデンのような雰囲気になっている。そこから橋を渡ると、カラフルな建物が並び映画のセットのようになっているエリア(②)に続く。さらに奥へ進んで地下の道をくぐるとピットや飛行機の展示があるエリア(③)にアクセスできるが、持っているパスによってどこまで行けるかは変わってくるため、チケットを購入する際はご注意いただきたい。どこのエリアでも、レストアショップやミニカーショップ、グッズショップなどの出店があるのもおもしろい。中にはビンテージ自転車のレストアショップというのもあった。タトゥーショップやシガーショップ、バーバー、アーケードゲーム店があるのも"グッドウッド・リバイバル"らしさを感じたものだ。会場自体はかなり広く、真面目にすべてまわっていたら3日でも足りないと思う。なお、レースを見ることができるのは②と③のエリアで、特に③は出走前後の車たちを間近で見ることができるので一番見応えがある。

会場図

エリア① 昔の機械を使った遊園地が来場者を迎える。

エリア① ビール片手に談笑タイム。

エリア① 販売店ブース。

エリア② MOTULやジュニアカーショップもある。

エリア② ポルシェクラシック部門ではクラシックツールなどを販売。

エリア③ ピットからレースに向けて出ていく。

エリア③ ビンテージ飛行機も勢ぞろいしている。

どこのエリアにいても色々な時間の過ごし方ができるが、やはりここでのメインコンテンツはレースである。今年は9月に入っているにも関わらず気温が30度を超えており、ドライバーにとってもマシンにとっても過酷なチャレンジであったに違いない。めらめらと陽炎が立つアスファルトで、1940年~1960年代のレーシングマシンを中心とした出場車が走りまわる。15レースが設けられたが、バラエティに富んでいるため端的に説明することも難しく、具体的にすべて掲載する。

① “フレディ マーチ メモリアル トロフィー”
1952年~1955年に開催されたグッドウッド 9時間レースに出場した車種が出場する。アストンマーチンDB3S、ジャガーXK120、フレイザー・ナッシュ、オースティン・ヒーレー、ジャガーCタイプなど。1時間、2ドライバーによっておこなわれる。




② “グッドウッド トロフィー”
1930年~1951年のグランプリカーとヴォワテュレットレーサーを対象とした20分間のレース。サーキットがオープンした1948年は戦前車しかサーキットを走れなかったため、このレースではERAやマセラティ、アルタといったメーカーのマシンが走る。


③ ”バリー・シーン メモリアル トロフィー” 
ブリティッシュ・スーパーバイク界、MotoGP界、マン島TT界からVIPライダーが参戦し、2ライダー対決を繰り広げるグッドウッドの伝統的なレースである。2度レースがおこなわれる。


④ ”フォードウォーター・トロフィー”
今年はポルシェ 911の生誕60周年を記念し、30台のナロー 911が白熱の戦いを繰り広げた。ジェンソン・バトンやマーク・ウェバーが出場していたことでも話題に。




⑤ “セントメリーズ トロフィー”
1950年代のサルーンカーが対象となっている。オースチンA40、ジャガーMk II、アルファロメオ・ジュリエッタなどが出場し、2日目の土曜日はF1、ル・マン、NASCARなどから選出されたVIPドライバーによるシングルドライバーレース、日曜日には車のオーナーによるレースがおこなわれた。




⑥ “ラッジ ウィットワースカップ”
2023年からの新しいもので、今年100周年を迎えるル・マン24時間レースへのオマージュを込めて開催された2ドライバー制の30分間レースである。そのため、出場する車は第1回 ル・マン24時間レースに出場したブロワー ベントレーやブガッティ Type50など、1920年代のスポーツカーが対象となっている。


⑦ “グラバー トロフィー”
1961年から1965年までの1.5リッター グランプリカーが対象のレースで、ジャッキー・スチュワート、ジム・クラーク、グラハム・ヒルといったレジェンドたちを彼らが当時レースで使用していたマシンとともに称えるというレースである。ゆえに、出場する車はロータス25、BRM P261、フェラーリ1512、ブラバム BT7などといったラインナップだ。


⑧ “ラヴァン・カップ”
1960-66年のフェラーリGTが多数出場し、フェラーリファンにとっては堪らないレースであっただろう。グッドウッドで開催されたRAC TTでグラハム・ヒルがフェラーリ250GTOを駆り優勝してから60年という歴史を祝して開催された。250GTOが250SWBや250LMと繰り広げるバトルは迫力満点である。





⑨ “チチェスターカップ”
1960年~1963年までのリアエンジン、ディスクブレーキのフォーミュラ ジュニアカーが対象。ロータスやクーパーなどのマシンが勢揃いし、華麗なバトルを繰り広げる。


⑩ “リッチモンド&ゴードン トロフィー”
1952年~1960年までの2.5リッター グランプリマシンが対象となる。1950年、ランチアD50、フェラーリ500F1、マセラティ250Fといったフロントエンジン搭載のグランプリマシンが主流を占めていた時代を再現するため、フロントエンジンとリアエンジンのF1マシンがバトルを繰り広げる。




⑪ “RAC TTセレブレーション”
グッドウッドでRAC TTが開催されていた時代のスポーツカーレースの祭典であり、1960年から1964年までのクローズドコックピットGTカーとプロトタイプカーが駆け巡る。具体的な車種としては、ライトウェイトのジャガーEタイプ、コブラ、コルベット・スティングレイ、ポルシェ904など。




⑫ “ウィットサン・トロフィー”
1960~1966年のスポーツプロトタイプが対象となっており、フォード GT40、ローラ T70を、マクラーレン M1AとM1Bというモンスターマシンが25分間のバトルを繰り広げる。ちなみに、30台の出場車のうち7台がGT40であった。


⑬ “サセックス・トロフィー”
最後におこなわれたレースで、1955年~1960年までの世界選手権スポーツカーが対象。グッドウッドの歴史において、常に三つ巴のトップ争いを繰り広げてきたフェラーリ246Sディノ、リスター・ノブリー、ロータス15がフィナーレを飾った。


これらに加えて、セトリントンカップと呼ばれるレースもある。これは、子供たちがペダルカー オースチン J40を漕いで順位を競うもので、“世界一かわいいレース”といわれている。ペダルカー用のピットも用意されていたりと本格的である。老若男女問わず、盛り上がりを見せるグッドウッド・リバイバルの人気コンテンツのひとつとなっている。





また、2023年はロータス 75周年のため75台のロータスでのパレードや、キャロル・シェルビー 生誕100周年を記念したパレードもあったりと盛りだくさんだ。1973年にジャッキー・スチュワート卿が3度目のチャンピオンに輝いてから50年を記念し、共にチャンピオンに輝いたマシンであるティレル・コスワース006でのデモランもおこなわれた。

ロータス75周年パレード参加車両。
ロータス75周年パレード参加車両。

キャロル・シェルビー セレブレーション参加車両。

キャロル・シェルビー セレブレーション参加車両。

ジャッキー・スチュワート卿とティレル・コスワース 006。

オクタン日本版編集部

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