エントリーモデルなのにプレミアム!ボルボ XC40でハイブリッドの魅力をあらためて知る

Kazumi OGATA

現在のボルボのラインナップにおけるエントリーモデルがC40とXC40だ。C40はBEVのみの設定なので、内燃機関を搭載するモデルとしては、XC40の48Vハイブリッドが(価格面でも)エントリーカーとなっている。つまりユーザーにとって、もっとも身近なモデルだ。

それ故か、MY23モデルではフェイスリフトやラインナップの刷新だけでなく、ハイブリッドモデルの改良も行われた。エンジンがミラーサイクル化され、ターボも新型を搭載。トランスミッションは8速ATから7速DCTになるなど、年次改良としてはなかなかの大手術。2030年にBEV専業メーカーとなる予定のボルボだが、内燃機関にもまったく手を抜く気はないようだ。

エントリーモデルとはいえ、XC40のボディはそれなりにデカい。4440×1875×1655mmというサイズは、いかにCセグメントとはいっても、快適に動かすにはそこそこ骨の折れる大きさだ。1968ccの直4ターボエンジンとマイルドハイブリッドの組み合わせで問題ないのかといえば、実にスムーズに加速する。

重いバッテリーを大量に積む必要がないから、車両総重量はBEVモデルに比べて1~2割軽い。軽量化が加速力や乗り心地、燃費に大きく寄与することはいうまでもない。この恩恵は想像以上に大きく、軽快感はBEVを凌ぐ。ハンドリングや安定性は円熟味が増し、ボディ剛性や足回りも固すぎず柔らかすぎず、絶妙なセッティングだ。ロードノイズも抑えられており、BEV並みの静粛性とまではいかないまでも、比較の対象にはなるレベルまで高められている。

つまり、走り出してみるとCセグメントやエントリーモデルというワードから想像されるベーシック感とは全く無縁の、プレミアムなSUVであることがわかる。48Vのモーターがアシストする加速は実にスムーズで、7速DCTもシフトのアップダウンのタイミングを意識しない(できない)レベルに昇華している。洗練された大人の乗りものという雰囲気が随所に漂っている。





室内は、基本的な仕様はBEVと共通している。センターにはタッチスクリーン式の9インチディスプレイがドーンと存在を主張する。既にXC60やV90などに採用されているGoogleのデジタルサービス(マップ、アシスタント、Playなど)が導入されたため、特にAndroidのスマートフォンやタブレットを使用している人には高い親和性を体感できるだろう。独自のAIで音声認識を行うより、いっそGoogleに任せてしまうというのは慧眼だと思う。

音楽を再生するオーディオシステムはサブウーハー付きのharman/kardonと、このあたりも抜かりはない。大型のサンシェード&グラスルーフの開閉スイッチが物理的ではなく、タッチ式というのは新鮮だった。ガラス工芸で知られるスウェーデンのオレフォス製クリスタルシフトノブは、ハイブリッドのみの仕様だ。







シートはグレードに合わせて、本革やスウェードテキスタイルなどが組み合わせられている。動物愛護の観点からレザーフリー化を進めるボルボは、ステアリングにも代替素材を採用しているが、革との違いを全く感じさせない仕上がりだ。嬉しいのが左右のドア内張りに樹脂ではなく、カーペット生地が貼られていること。サイドポケットへものを入れるときに、傷つける心配がない。


細やかなギミックがいろいろ設定されているのも魅力だ。センターコンソールには取り外し可能なゴミ箱が設置されていて、グローブボックスからは買い物のあとに袋をかけられるフックが取り出せる。BEVにはフロントにもラゲージスペースが存在するが、ハイブリッドはもちろんリアのみ。特筆すべきものはないが、必要十分な使い勝手は備わっている。





同じボディであるにもかかわらず、BEVは現状ではどうしても遠出をする際に、充電設備の制約がつきまとうため、近距離限定で使用するか、セカンドカーとしての活用が想定される。対するハイブリッドは、長期休暇などの長距離移動で活躍する1台目として、十分に応えられる存在といえるだろう。

それだけに、プラグインハイブリッドモデルが廃止されたのは残念なところだ、左右を固めるBEVとハイブリッドがあればニーズに応えられるとの判断だろうし、半導体の供給難など生産体制に制限があることは推測できるものの、ハイブリッド以外の電動車両の普及率が圧倒的に低い日本では、中間的な存在はまだ必要なのではないだろうか。


文:渡瀬基樹 写真:尾形和美
Words: Motoki WATASE Photography: Kazumi OGATA

文:渡瀬基樹

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