フェラーリ296 GTS海外試乗|あたらしさ満載の万能スパイダーでマラネロへドライブ

Ferrari

本年4月に発表された、フェラーリの新型オープントップモデル「296 GTS」。296 GTBでデビューしたV6エンジン、プラグインハイブリッドなど、気になる要素が満載のこのスパイダーに、ジャーナリストの小川フミオ氏がイタリアで試乗した。



フェラーリが発表した「296」シリーズは”あたらしさ”が満載のモデルだ。このシリーズのために開発した「フェラーリ初」を謳うV6エンジン、プラグインハイブリッドシステム、それに、2022年10月に試乗したGTSには専用のシャシーと、電動格納式ハードトップが用意された。

そしてもうひとつ、特筆すべきことは、すばらしい操縦性をもっているということだ。

2022年4月に発表された296GTSは、フェラーリ自身が喧伝するように、1963年の250LMというレーシングカーからスタイリングのインスピレーションを得ているとのこと。存在感のあるリアクォーターパネルと、力強く張り出したリアフェンダーと、シャープな造型のノーズでもって、ウェブサイトで公開されたイメージによって試乗への期待が大きくふくらんでいた。

フェラーリが用意してくれた試乗コースでは、地中海に面したリゾート、フォルテ・デイ・マルミから、アペニン山脈を超えて、本社のあるマラネロまで走る。フォルテ・デイ・マルミは、大理石の産地として知られ、ミケランジェロはこの大理石でもってダビデ像を彫ったそうだ。



もうひとつ、自動車好きにとっての情報としては、ここにフィアットの創設者であり、フェラーリの経営にたずさわるアニェッリ家がビラを持っていたというもの。北米・太平洋ぞいのカーメルを私に連想させたこの街で、アニェッリ家は1926年に壮麗な建物を購入。1960年代まで夏になると家族でやってきて、ひとときを過ごしていたそうだ。

さきに6気筒エンジンについて「フェラーリ初」というプレスリリース内の文言を引用したが、読者のかたはご存知のとおり、1968年に同社は2リッター6気筒エンジンをミドシップした「206ディーノ」を発表した。このときは、フェラーリ車が載せるのは12気筒のみというポリシーのようなものがあったようで、この車にはFerrariの文字がほとんど見当たらない。たしか、ホイールには刻印があったかもしれない。

そんな昔のもろもろを思い出させる土地を振り出しに、私は296GTSに乗って、まずアウトストラーダ、そのあと先述のとおり、アペニン山脈のフータ峠のワインディングロードを楽しませてもらった。このサイトをお読みのかたにはおなじみの、クラシックカーラリー「ミッレミリア」で難所と言われる道である。

しびれるような快感を味わえる


フータ峠は、たしかに、ワインディングロードが続くものの、どちからというと、いわゆる中速コーナーが多く、ブレーキと加速、ふたつの性能を交互に味わうのに適した道だ。

296GTSの2992ccV型6気筒はターボチャージャーで過給されて、610kW@8000rpmの最高出力と740Nm@6250rpmの最大トルクを持つだけに、おそらくフータ峠では役不足かもしれない。ただ、私が感心したのは、とてつもなく、といいたいぐらいのスムーズな操縦感覚で、これは速度に関係なく、車好きだったらしびれるような快感を味わわせてくれる。



言ってみれば、ステアリングホイールを操作しなくても、車はドライブしている私が視線を送った方向へ、さっと向きを変える。そんなかんじなのだ。神経質でなく、異次元ともいいたいようなスムーズなハンドリング。フェラーリでは、GTSのホイールベースを2600ミリと短めに設定。さらにGTBのシャシーのねじり剛性と曲げ剛性を引き上げている。

ドライブモードは「eDrive」「ハイブリッド」「パフォーマンス」そして最大のパフォーマンスを発揮するという「クオリティ」の4つが設定され、フェラーリでおなじみの赤いロータリースイッチ「マネッティーノ」に加え、ステアリングホイールの左側の電子的コントローラーに親指で触れることでモードが切り替えられる。

ハイブリッドモードを使うと、35キロまで、あるいは時速135キロ(!)までは電気モーター優先で走る。無音のフェラーリというのは、あらためて独特の雰囲気だと私には感じられた。

いっぽう、フェラーリが「ピッコロV12」と呼ぶ120度のV6エンジンは、魅力がたっぷりだ。静止から時速100キロまでの加速に要する時間がわずか2.9秒だそう。最高速は時速330キロと発表されている。



常識的な速度域でも、高回転型のこのエンジンを回して走る楽しさは十分に味わえる。回転をあげればどんどんトルクが湧き出てくるようなパワー感に加え、「ホットチューブ」とフェラーリが呼ぶ音響システムを装備していて、耳に心地よい(興味ないひとにはうるさい?)フェラーリミュージックを響かせてくれる。これを聴くと、やる気がびんびん出てきてしまう。

文:小川フミオ

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