フェラーリ296 GTS海外試乗|あたらしさ満載の万能スパイダーでマラネロへドライブ

Ferrari


「スタイル優先」ゆえのハードトップ


もうひとつの肝が、言うまでもなくオープントップだ。比較的小ぶりのハードトップが、コクピットのスイッチ操作で14秒で開閉可能。時速45キロまでなら走行中にも操作できる。ソフトトップを採用するつもりはなかったのか。フェラーリの英国人デザイナー、エイドリアン・グリフィス氏(このひと、かつてローバーグループに在籍してMG EX-Eなども手がけた)によると、「すべてはスタイル優先です」との答えが返ってきた。

ミドシップであり、かつハードトップの格納スペースをかせがなくてはいけないので、ルーフの前後長を短くする必要があったのだろうか。ウインドシールドはそのぶん長くて、ドライバーである私の頭上まで届く。



ほかのオープンフェラーリとことなり、眼をあげたぐらいでは、視界に空は入ってこない。大気にさらされているというより、小さなカプスルのなかにすっぽり包みこまれているような気分だ。なかなかおもしろい。そのぶん、サイドウインドウをおろしていても、風の巻き込みはほとんどない。冬でも快適なオープンエアドライビングができそうだ。



乗員ふたりの背後には、横転時の安全対策をかねてトノーといえばいいのか、クラシックなレースカーにあるようなコブが二つ設けられている。そのままでも雰囲気だと私は思ったが、フェラーリのデザイナーは「エアロブリッジ」と名付けたパネルを左右に渡している。これも、296GTSのデザイン上の特徴だ。「コンパクトなキャビンがフェンダーやサイドボディとさりげなく融合 」している、というのがデザイナーの意図だそう。



総じての印象は、万能のフェラーリというかんじだ。ステアリングはダイレクト感が強いので、狭い市街でも意外なほど扱いやすいし、オープンで太陽の光を浴びながらゆったり”流す”のも快適だ。内外装のデザインはまさにビューティ。もちろん、その気になれば”ビースト”に変身する。価格は4313万円。その価値がある1台といってもいいだろう。


文:小川フミオ 写真:フェラーリ
Words: Fumio OGAWA Images: Ferrari

文:小川フミオ

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