いずれも傑作揃い!コンクールコンディションのジャガーEタイプ4台|最初の精鋭たち【中編】

Amy Shore



シャシーナンバー860001


次は“ショー・クイーン”だ。プロダクション版フィクストヘッドクーペの右ハンドル仕様の1台目として、1961年7月10日に製造され、シャシーナンバーは860001である。文句なく完璧なコンクール・コンディションで、"1VHP"のナンバーを付け、オパレッセント・ダークブルーの塗色に、目にも鮮やかな赤のレザーインテリアの組み合わせである。



最初は、ロンドンのディーラー、ヘンリーズの試乗車として使われた。あの重要な外部ボンネットロックを持つFHCのうち、右ハンドルはたった4台しかない。現オーナーは、レストアのスペシャリストCMCの創業者で、コレクター兼レーシングドライバーのピーター・ニューマークだ。「この車は1ポンドで買ったんですよ」とニューマークは笑う。「ジャガーの歴史家でパブリッシャーでもあるフィリップ・ポーターから買い取ったんです。彼はジュネーヴのショーカーだった9600HPを所有しており、それを私たちが無料でレストアしたら、この車を名目上の1ポンドで私に売ってくれる、という取り決めでした」

1VHPは、2000年代初頭にCMCによってジャガーのオリジナル仕様にフルレストアされ、いまだに新品同様に見える。“ショー・クイーン”と呼ぶのは妥当だろう。「私はこの車を広く乗り回して楽しんでいますよ。フランス旅行もしました」とニューマークは話す。実力を示すヒントは、わずかに太いだけで大幅に使いやすくなる205/70の15インチタイヤを履き、サイドミラーがないことにある。実はニューマークは2015年に、フロントのグリルバーとバンパー・オーバーライダーも取り外して空力効率をさらに高めた状態で、この1 VHPを『Octane』に貸し出し、ドイツのアウトバーンで最高速を計測させてくれたのだ。英国ヒルクライム・チャンピオンのデビッド・フランクリンがステアリングを握り、146.49mphを記録した。「150mphも破れただろうが、交通量が多すぎた」とフランクリンは語っていた。ただのショー・クイーンではないのだ。

シャシーナンバー850035


最後の1台は、“スピットファイア”である。この850035は、1961年12月4日にイーストボーンのウィレッツというディーラーに供給され、今もオリジナルのナンバープレート“JJK195”を付ける。よく知られたEタイプで、1960年代をとおしてクラブレースで使われた。セミ・ライトウエイト仕様にモディファイされており、ボンネット、トランクリッド、ドアはアルミニウム製で、リアのハッチは迫力あるアクリルガラスに交換されている。“スピットファイア・カー”として知られているのは、二人目のオーナーがスピットファイアの元パイロットで、あの戦闘機から様々な計器やコンポーネントを移植したからだ。時計や油温計、室内灯のほか、方向舵ペダルを助手席のフットレストに活用した。さらにはスピットファイアのテールライトを後退灯にしていたが、これは1970年代初頭に姿を消した。



このEタイプは、あるジャガーのスペシャリストに救われた。分解して木箱に収め、長年、大切に保管していたのだ。それを、整備士でエンジニアのハワード・ワッツがオリジナルの状態に戻した。ワッツが経営するリドルズデール・ブラザーズは、現在まで続くものとしてはヨーロッパ最古の整備工場で、1900年からサフォーク州ボックスフォードで営業している。いうまでもなく、ワッツはやり手のビジネスマンだが、根っからのメカニックでエンスージアストでもある。このEタイプを慎重に組み立て、イベントの直前に完成させた。

「私は長年の間に極上のクラシックカーを何台も所有してきましたが、一番好きなのはたぶんこの車ですね。箱に入った状態で見つけて、ジャガーの様々なスペシャリストの助けを借りながら、かつての輝かしい姿に戻しました。この希少で重要な初期Eタイプを、私と同じように多くの人に楽しんでほしいと思っています。まだ慣らし運転の最中ですが、先日の夜もテスト走行に出掛けたら、延々と走り続けてしまいましたよ。80マイルほど走ってガレージに戻ったときには、前にもまして惚れ込んでいました」


...次回は、これらの伝説的ジャガーの走りを試す。


編集翻訳:伊東和彦(Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:木下恵
Transcreation:Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.) Translation:Megumi KINOSHITA
Words:Robert Coucher Photography:Amy Shore
取材協力:ファストレーンクラブ社(thefastlaneclub.com)、ボウクリフホール(Bowcliffehall.co.uk)ボウクリフ・ドライバーズクラブ

編集翻訳:伊東和彦(Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:木下恵

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