伝説的ジャガーは公道でどんな走りを見せるのか?|最初の精鋭たち【後編】

Amy Shore

この記事は【いずれも傑作揃い!コンクールコンディションのジャガーEタイプ4台|最初の精鋭たち(中編)】の続きです。



4台の精鋭を試す


これら伝説的ジャガーは、公道でどんな走りを見せるのだろうか。まずは、完全な標準仕様のままオリジナルを保つフィクストヘッドクーペ、1VHPから見てみよう。外観だけでなく、においも操作感も新車のようだ。奥行きのあるリアラゲッジデッキが秀逸で、これなら大陸を疾走する旅にも最適だ。たしかに、過度にデジタルな現代モデルに比べれば、いかにも“機械式”の車だ。しかし、ロレックス・サブマリーナーと同じように、ほとんど気づかないところまで精巧に角が取られて滑らかである。ほっそりとしたウッドリムのステアリングホイールは、見た目でも史上屈指に数えられるが、ノンアシストのラック&ピニオン式ステアリングを操作できるだけの十分な太さもある。シリーズ1のシートは華奢でクッション性には欠けるものの、大型のスミス製計器や、整然と並んだトグルスイッチ、センターコンソールにはめ込まれた機械加工のアルミパネルなど、コクピットは実に美しい。



モス製ギアボックスは、評判どおり最初はやや遅く感じるが、車に合わせられるドライバーなら、ゆっくり正確に操るコツをすぐに飲み込めるだろう。その頃には車全体が温まって、本領を発揮し始める。いったん温度が上がれば、ブレーキはより効果的に利き始めるし、田舎道を横切るうねや凹凸もサスペンションが巧みにやり過ごしてくれる。何といっても絶妙なのが、SU製トリプルキャブレターを備えるロングストローク、ヘミヘッドのDOHC直列6気筒XKエンジンだ。この車の場合は高回転型の3.8リッター仕様で、低速では子猫のようにスムーズだが、回転を上げると虎(ジャガーというべきか)のように牙を剥く。“ジキルとハイド”という表現では単純すぎる。もっとずっと繊細かつ優秀なのである。



それは、プロジェクトZPのレースウィナー、ECD 400にも当てはまる。感触は量産型Eタイプとほとんど変わらないし、実質そのとおりなのだが、手作業による丁寧な組み立てとブループリンティングによって、アスリートレベルに引き上げられている。予想どおりギアボックスのシンクロは遅いものの、ECD400の走りはキビキビと無駄がなく、パンチがある。約1220kgと軽量なロードスターだから、反応は驚くほど鋭いが、それでも掌握していられるのは、シャシーに施されたモディファイの賜物だろう。

ダークグリーンの“スリーパー”、4133 RWは、プロトタイプのセミ・ライトウエイト構造なのでいっそう軽く、涼しい顔でたいへんな速さを見せる。開発が進んだあとのシリーズ2のシートはより快適だし、車内空間も広い。間違いなく4台の中では最速だ。現オーナーのウィル・ヘインズは、控えめなリフレッシュが必要だと考えているが、私なら気にしない。ナットが吹き飛ぶまで走りたくなる。



では、“スピットファイア”はどうだろうか。クラブレーサーだっただけに、このカルテットの中でも過剰なまでにレーシーである。構造部はアルミニウム製のセミ・ライトウエイト仕様で、内装をはぎ取ってフルロールケージを装着し、窓はすべてアクリルだ。大きなレース用アロイホイールを履き、ゲトラグ製5段ギアボックスを搭載する。いかにも“ホットロッド”だが、ジャガーらしさは失っていない。あくまでも焦点を絞ったEタイプである。

Eタイプを“伝説”と呼ぶのは大げさだろうか。歴史上特に重要なイギリス車を振り返ってみよう。1900年代初頭には、ロールス・ロイスが“世界最高の車”、シルバーゴーストを生み出した。1959年のBMCミニは、その後の乗用車のパッケージングにおける先例となり、1990年代のマクラーレンF1は、最もラディカルな最速のスーパーカーとして君臨した。この偉大なリストの中に、1961年のジャガーEタイプも名を連ねて然るべきだろう。イギリス車の歴史上、屈指の傑作であることに疑問の余地はない。



1961年ジャガーEタイプ
エンジン:3781cc、直列6気筒、DOHC、SU製キャブレター×3基
最高出力:265bhp/ 5500rpm
最大トルク:33.9kgm/ 4000rpm
変速機:4段 MT、後輪駆動
ステアリング:ラック&ピニオン
サスペンション(前):ダブルウィッシュボーン、トーションバー、テレスコピック・ダンパー、アンチロールバー
サスペンション(後):固定長ドライブシャフト、ラジアスアーム、ロワートランスバースリンク、コイルスプリングとテレスコピック・ダンパー 2組、アンチロールバー
ブレーキ:4輪ディスク、リアはインボード式
車重:ロードスター1220kg、フィクストヘッドクーペ 1232kg
最高速度:240km/h(公称値)
0-100km/h:7.4秒


編集翻訳:伊東和彦(Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:木下恵
Transcreation:Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.) Translation:Megumi KINOSHITA
Words:Robert Coucher Photography:Amy Shore
取材協力:ファストレーンクラブ社(thefastlaneclub.com)、ボウクリフホール(Bowcliffehall.co.uk)ボウクリフ・ドライバーズクラブ

編集翻訳:伊東和彦(Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:木下恵

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