ピカピカのクラシックカーをあえて汚くする!?│デストレーションを探る

Photography:Mark Dixon



いまやRMオークションですべての輸入車、とくにアストンマーティンのエキスパートになっているドン。輸入車の中でも重要な車は彼が扱っており、DB5のボンドカーも売りさばいたこともある。そんな毎日だから彼のDB2/4は貴金属に慣れすぎた目をリセットする解毒剤のような存在であり、その一方で彼の愛の対象でもある。「古い車の心地よさというものを私の車はもっていてね」とドンは続ける。

「いいところをうまく引きだし
てうまく扱う。農業もそうだろ?フェルサムで作られた車はとてもヴィンテージな感覚がある。この車のステアリングは最も時代遅れを感じさせるので、多くの人はラック・ピニオンに替えるけど私は好きじゃない、このままがいいね」

彼はそう言いながら車のキーを私に渡すと、我々はモントレーに向かって海岸線の道路を走り始めた。流す程度のドライブではトルクのあるエンジンが力の要るギアシフトの回数を減らしてくれるので、楽な運転が楽しめる。だが、やすりをかけるような音を発する排気音とうなるような吸気音は実際の速度より速く走っている感じを与える。低速だとステアリングは確かに重い。大部分は太いホイールのせいだが、ステアリングボックスの遊びが大きいことも原因のようだ。細長いシフトレバーを動かすには思ったより長いストロークが必要だった。

ジョン・スタインベックの小説の舞台「キャナリー・ロウ」のエリアを通って海岸線の道に入ると道路も混雑。スタインベックに惹かれてやってきた多くの観光客の集団も、野太いエンジン音を上げるアストンをいぶかしげに眺めている。その間だけはきっとスタインベックのことを忘れていることだろう。



ドンは次に何をデストレーションするのだろうか?ドンの答えは「もっと走ること!」。「これが終わったらカリフォルニア・ミッレをやるよ。アメリカ版ミッレミリアをやりたいんだ。去年申請だけはしたんで今は待ちの状態さ。もしかしたら来年には実現できるかもね」

どんなイタリア人でもこんなに汚れたアストンマーティンが出てくるなんて、けっして思わないだろうが。

編集翻訳:尾澤英彦 Transcreation:Hidehiko OZAWA Words:David Lillywhite 

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