ピカピカのクラシックカーをあえて汚くする!?│デストレーションを探る

Photography:Mark Dixon



そのあとだ、DB2/4に災難が襲ってきたのは。2007年のある夜、ドンは酔っ払い運転をして車を壊してしまったのだ。「私はこの車に惚れていたから、こんなことを起こした自分が本当に嫌になった。DB4より古いアストンでミッレミリアに出るのが夢だったんだから」とドンは嘆く。夢を実現させたいから彼は不見転でこの車を買ったのだ。車は即座にカリフォルニアのアストンマーティンを専門に扱うケヴィン・ケイ・レストレーションズのもとに送られた。ケヴィンは2010年のペブルビーチ・コンクールでクラス3位を獲得した、グレーバー・コーチビルドのボディをもつDB2/4ドロップヘッドを含め、その高度なレストレーションで名を売った人物だ。ケヴィンは車を前にしてちょっと考え込んでしまった。ドンの言う修理内容だけでよいのかと。

「ケヴィンはしばらく作業に取りかからずに、いかに車がよくない状態かを示す写真ばかり送り続けてきたよ」ドンは笑いながら言う。「彼はこんなことも言ってきた『ウチの人間だったら屋根の修理に1日もかからないけど』って。そこで私はこう言ったよ。『ボディワークに手をつけていいとは言っていないよ。そのままにしておいてくれ!』と。クロームなんか磨かなくていいんだ」

それに対するケヴィンの反応はこうだ。「私が思うに、彼はクレージーだね。この店なら誰でもそう思うはずだ。このMkIIはめずらしい車なんだよ。MkIIの中でも199台しか作られなかったんだから。1年前に私は初めてコンクールに出品する車を仕上げたんだが、何台かのうちの1台は今ここにあるドンのと同じ車なんだ」

結局はドンの言うとおりの内容でケヴィンの仕事は完了した。6気筒エンジンは電気系を除いて標準スペックでレストアされたが、ただエグゾーストマニフォールドはDB MkIIIタイプのものに換えられ、本来1本出しのエグゾーストも2本出しに変更された。そうすることで10%のパワーアップが見込めたからだ。

トランスミッションも同じく組み直すだけにとどまった。ケヴィンは少しお金をかけてでも5段にしてみてはどうかと持ちかけたが、ドンは4段にこだわった。ブレーキも整備された程度で、サスペンションは安全に関わる部分だけ交換された。DB2/4はフロントに鋳造合金のスプリングターレット(受皿)を用いているが、経年変化で弱くなるためよりしっかりしたものに換える必要があったのだ。フロントハブも問題で、スタブアクスルと一緒に動いてしまうという設計上の欠点があった。これは時に大きな被害をもたらす。そこでケヴィンは新たに設計し直した部品に交換したが、それは新しいハブに使われる小さなベアリングを仕切るために大変凝った構造をもったものである。リアのトレーリングアームには別の弱い箇所があった。

対策品として航空機で使われる軽合金を機械加工したものが用
意されていたので、それを使った。スプリングのバネ定数と長さはオリジナルと同じだが、それはドンが「オリジナルのライドハイトとバネストロークが最良」とこだわった結果だ。

編集翻訳:尾澤英彦 Transcreation:Hidehiko OZAWA Words:David Lillywhite 

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