氷の上でポルシェ911の限界を試す!│他では味わえない究極のドライビング体験

Photography: Malcolm Griffiths



2日間のコースは、まず慣れるためにハンドリングサーキットで数時間走行することから始まる。そこで911のコントロールの仕方を覚え、プロのラリードライバーから指導を受ける。それから直線とカーブの入りまじった氷上コースに出て、いよいよ911との真剣勝負が始まる。最初に履くのは3mm径のボタンスタッドを備えたスパイクタイヤで、まだルーズで滑りやすい。慣れたら、7mm径スタッドの競技用タイヤに交換し、160km/hでの走行を体験。最後は、湖周辺の7kmに及ぶラリーステージを走って、WRCに出場しているかのような究極のドライビングを体験する。

腕に自信がなくても大丈夫。コース全体を通して左右に柔らかい雪の土手があるのだ。それでは生やさしいという人は、タティルのチームに所属する恐れ知らずのラリードライバーにスペシャルステージを走行してもらい、超絶技巧を助手席から堪能することもできる。 

リチャード・タティルはテキパキと物事を
進めるタイプで、一刻も無駄にしない。私たちはさっそく手近な911に乗り込み、レース用ハーネスを締めた。まずリチャードが運転席につき、エンジンをかけ、轟音を上げる。1速に入れると、小雪の舞う中をホイールスピンしながら発進。練習用スラロームの1つ目のポールへとぐんぐん加速していくが、その間に早くも私は大船に乗った気分になっていた。

「911は運転がやっかいだという通説を覆したいんだ。私は大好きだよ。シンプルかつパワフルで信頼できる車だし、ドライビングの素晴らしさを肌で感じられる。911に仕事をさせるんだ。何をすべきか単刀直入に言って聞かせなきゃいけない。クラシック911に丁寧にお願いしても、ただ乗せられて後手に回るのがオチだよ。こういうクラシックならなおさら、こっちが先手を取らなきゃダメだ」



リチャードはこう話すうちにも、胃がひっくり返りそうな勢いでスライドしては、ピンポイントの正確さで長いスラロームをこなしていく。

「楽観的にやればいい。911のリアは傑作だから。
難しいのは、フロントをグリップさせることだ」そう言うと、左足で軽くブレーキを足し、リフトオフで車の向きを変える。

次は私が運転する番だ。教えてもらったことをはじから全部思い出そうとしながら、2速に上げ、最初のポールを目指す。アクセルを戻し、ブレーキ、ターンイン。ステアリングを逆方向に軽くひねった途端、もう911は滑り始めていた。アクセルでスライドを維持し、リフト、ブレーキ、逆に振って次のスラロームへ。こいつは最高だ! 

ものの数秒で、もう911を自由
に滑らせることが出来ていた。コースオフする心配などまったくない。失敗しても、柔らかい雪の土手に突っ込むだけなのだから。

どんどんコントロールの自信が増し、やがて鋭いアングルでロックするまでステアリングを切り込むようになっていた。車の後ろから大量の雪が吹き上がる。一通り走ったところで、再びリチャードが運転席に戻り、指導を続ける。私のスライドは低速だし、アクセルに頼りすぎていると指摘された。

「911の場合、コーナリングには3つの段階が
ある。まずは攻撃的に、次にある程度のがまん、そして力強く立ち上がるんだ」さっそく教えられた通りにやってみる。すると、すぐさま速くなった。

編集翻訳:堀江 史朗 Transcreation: Shiro HORIE  原文翻訳:木下 恵 Translation: Megumi KINOSHITA Words: Robert Coucher

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