標高4000mの高地をクラシックカーで旅する│唯一無二の体験

photography:Bruno Leunen

標高4000mの高地を行くチリ-アルゼンチン・ロードクラシックには、ほかではできない唯一無二の経験が待っていた。辺境の高地を旅する。

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ヨーロッパや北米から15組のクルーがチリ北部にやってきた。私たちはベルギーからコンバーチブルの1973年マスタングで参加。マスタングはあと2台おり、ほかに"パゴダ"メルセデスが3台、1937年ラゴンダ、1957年ベントレーS1 が各1台、ポルシェとプジョー504コンバーチブルが2台ずつに、ビッグヒーレーとサンビーム・タイガーという実に多彩な顔ぶれだ。それぞれに数千マイルを移動して2017年チリ-アルゼンチン・ロードクラシックのスタート地点に集まった。ここからフィニッシュ地点まで、さらに2324マイル(約3740km)の長旅が始まる。



太平洋岸の都市アントファガスタを出発し、アンデス山脈を横断してアルゼンチンに入り、再びチリに戻って港湾都市バルパライソへ至る行程だ。苦もないと見くびっている参加者がいたら、初日に気を引き締めることになっただろう。まずは世界最大の銅山であるチュキカマタを通過し、次にサンペドロ・デ・アタカマを目指す。標高2500mに位置するアタカマ砂漠の玄関口だ。ここから標高はさらに上がる。各車には万が一に備えて緊急の酸素ボンベも用意されている。

初日の宿、ホテル・クンブレスに到着すると、さっそくガソリンスタンドで給油だ。周囲数マイルで唯一のスタンドなので、村の車が列をなす。早くも1937年ラゴンダが空気の薄さから調子を崩し、メカニックの再調整を受けた。ゴールのバルパライソまで15日間にわたってメカニックが同行してくれるのは心強い。

翌朝は出発して間もなく南回帰線を横断。平らなアスファルトの幹線道路に別れを告げて、未舗装の道を突き進む。標高4200mまで登っていくと、ミスカンティ湖とミニケス湖の絶景に迎えられた。その道中には、ラマに似た動物、グアナコも見かけた。夜は、アルマ望遠鏡(アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計)を全員で訪問。世界最大規模の電波望遠鏡で、月の表面や火星、土星、天の川などをつぶさに見ることができた。



話を地上に戻そう。翌日もタフな行程だ。朝5時にサンペドロを出発し、標高4500mに広がる間欠泉群で有名なエル・タティオを目指す。そこまでの道には、ひどく波打った箇所があり、車で進むのはひと苦労だった。タティオで朝食をとったあとは、美しい風景を楽しみながらサンペドロに帰還。悪路の震動に耐えた骨休めに、近隣のプリタマ温泉に出掛けてひと風呂浴びるクルーもいた。

4日目に国境を通過してアルゼンチンに入国。サリーナス・グランデス塩湖とサボテンに覆われた渓谷を抜け、つづら折りの山道を下ってプルママルカに至る。古風な佇まいの村で、ホテルは美しいコロニアル様式だ。

5日目は183km先のサルタまで快適なドライブとなるはずだった。しかし、1957年ベントレーS1が予想以上に苦戦し、冷却トラブルに見舞われてしまう。

幸いにも、自身もクラシックカーを所有する地元の修理工場のオーナーが、すぐに原因を突きとめ、無料で直してくれた。その夜はサルタでバーベキューを楽しみ、全員が上機嫌で寝床についた。

編集翻訳:伊東和彦(Mobi-curators Labo.) Transcreation:Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:木下 恵 Translation:Megumi KINOSHITA Words and photography:Bruno Leunen

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