英国の田舎を縦断するクラシックカーラリー│準備もしないで参加した2人の珍道中

Photography: Gerard Brown

ロンドンの北からスコットランドまで、英国の美しい田園風景のロンドン-エディンバラ間をヴィンテージカーで縦断する"フライング・スコッツマン"と名付けられたラリーに、オクタンのロバート・カウチャーがジョナサン・ターナーと挑んだ。さて、ろくな準備もせずにやる気だけで長距離ラリーに臨んだ二人の珍道中はいかに……

ヴィンテージカーや戦前の車は、老人のものと思っている人がいる今でもいるかもしれない。自慢の車を磨いては、乗るのはせいぜい近所のパブに行くときくらいで、車仲間と1、2杯ひっかけるのが楽しみ……、と。そんなイメージを持っているとしたら間違いだ。私たちはハートフォードシャーの大邸宅ハンブリー・マナーへ出掛けた。

そこには、耐久ラリー協会(Endurance Rally
Association)が毎年開催するスコッツマン・クラシック・リライアビリティ・トライアルの第5回大会に出場する車両が集まっていた。大きさも姿形もさまざまなヴィンテージカーが100台余り並ぶ光景に、思わず血が沸き立つ。エンジンやエグゾーストのノイズ、光を反射するスポークホイール、ノンシンクロメッシュのギアが噛み合うガリッという音。その場全体が期待と興奮に包まれていた。



105台がエントリーし、19カ国から集まった参加者が車両検査を受け、書類にサインしている光景は、このラリーが大成功している証拠だ。ここに集まった車は、豪華なものも実用的なものも、すべて特別な1台だ。ピーター・リヴァノス/アレックス・ドロリシュコス組のアルファ8Cザガートは音からして素晴らしい。ビル・エインスコフ/ジェイソン・ディアデンのフレイザー・ナッシュ・スポーツはよく締まって見える。ベントレーは多いが、ピーター・ニューマーク/ガイ・ウッドコックのスピード6はル・マン出場のヒストリーを持つ。マイクとジョシュ・トンプソン父子は、北京-パリを難なく完走したクライスラー75ロードスターで挑む。

私が乗る車はすぐに分かった。その傍らに立っていた人物は、話し好きで真っ赤なキルトを着ていたからだ。ジョナサン・ターナーはヨークシャー育ちだが、チェックのリボンがついたスコットランドのグレンガリー帽までかぶり、すっかりスコッツマンに成りきっている。名優ダニエル・デイ・ルイスも真っ青だ。私とジョナサンが乗るのは、小ぶりでシャシーの短い1935年スクワイア・スキンピーだ。ドアもない狭いコクピットを見て、中年男が二人収まるのは至難の業だぞ、と青くなる。



車検を受けて署名をしてパブへ直行する。地図やロードブックは脇へ押しやる。やる気満々の連中は、案の定、囲いのあるブースに引っ込んで時間や速度を割り出していた。その後、大広間で行われたレセプションで、グレガー・フィスケンと妻のキャロライナと知り合い、グレガーの堂々たるベントレー・スピード6クーペでソード・イン・ハンドという居酒屋(近くに行ったらぜひ立ち寄ることをお薦めする)へ移動した。アルファ8Cでエントリーしているエレガントなニコラ・フォン・ドゥンホフも一緒だ。ここでヒストリックカーレースのドライバーであるパトリック・ブラックニー・エドワーズが美味しい夕食をおごってくれた。さらに、ビル・エインスコフがバンジョーで弾き語りを披露。最高の夜だった。

編集翻訳:伊東 和彦(Mobi-curators Labo.) Transcreation: Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:木下 恵 Translation: Megumi KINOSHITA Words:Robert Coucher and Jonathan Turner 

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