「日本はフェラーリにとって大切なマーケットです」フェラーリ極東・中東地域 代表取締役社長 ディーター・クネヒテル氏にインタビュー

Ferrari

去る9月後半、フェラーリの最新の限定車、SF90XXストラダーレの発表会にお邪魔した。SF90ストラダーレをベースにしたスペシャル・シリーズで、初めて公道走行可能なXXモデルという触れ込みである。プレス向けの発表会は午後に行われ、顧客向けには同日夜、F1日本グランプリ間近とあってフェラーリのF1ドライバー、シャルル・ルクレールが出席したそうだ。

そんな発表会のためにシンガポールから来日したのがフェラーリ極東・中東地域 代表取締役社長、ディーター・クネヒテル氏をインタビューする機会を得た。まずは日本市場ならびにアジア市場の現状を聞いてみることに。

フェラーリ極東・中東地域 代表取締役社長、ディーター・クネヒテル氏

「日本はフェラーリにとって大切なマーケットです」と開口一番、口を開いたクネヒテル氏。聞けば日本におけるフェラーリの販売台数は世界で2番目に多いそうだ。フェラーリの決算資料を眺めてみても販売台数が明記されているのはドイツ、イギリス、イタリア、スイス、フランスだけで、ほかの国々は「地域」ごとにまとめられている。あらためて日本市場の大きさを耳にすると、世間がどう騒ぎ立てようと日本の車好き…、少なくとも富裕層の車好きが健在であることを思い知らされる。

「フェラーリは57年前から日本に進出していますから、ディーラー網もしっかりしています。世界的なコレクターも多数いらっしゃいますし、日本のお客様はほかの市場よりもフェラーリへのブランドロイヤリティが高いのも誇りに思っています」

昨今、フェラーリはラインナップの拡充を図っている。これにより既存の顧客を満足させるだけでなく、顧客層の新規開拓にもつながっている。つまりは販売台数を着実に増やしているのだ。それでいて1モデルあたりの生産台数が絶妙に抑えられているので、常に需要過多(エクスクルーシビティ)という状況を生み出している。“需要よりも1台少なく”がモットーだとクネヒテル氏は話していた。

ブランドロイヤリティの高さの要因をフェラーリがどのようにとらえているか聞いてみたところ革新的技術、エクスクルーシビティ、デザイン…、と模範的回答のほか、リセールバリューの高さにまでクネヒテル氏は言及した。

「フェラーリ車が高い残存価値をキープすることは日本のみならず、世界的にフェラーリが好まれる理由の一つだと思っています。そして、フェラーリではオーナー様ひとりひとりを家族の一員として捉えていることも、ブランドロイヤリティに寄与していると思っています」とクネヒテル氏。インタビューに同席していた、フェラーリ・ジャパン代表取締役ドナート・ロマニエッロ氏は顧客のみならず“ディーラーもフェラーリにとっては家族の一員だ”と付け加えていた。

フェラーリ・ジャパン代表取締役ドナート・ロマニエッロ氏(左)

フェラーリの残存価値についてはフェラーリ、もしくはフェラーリ・ジャパンが中古車市場を“下支え”するようなことはしていないそうだ。にもかかわらず高い中古車相場が維持されているのは、新車でも中古車でもとかく需要が旺盛であることを意味する。

フェラーリの“家族”になりたい、とまで熱血的な想いとともにフェラーリ車を購入する人は少ないかもしれないが、一度買うとフェラーリの虜になりがちなのは否めない。フェラーリという車の魅力だけでなく、オーナー同士の集い、各種イベント、本気で走りたい人向けのレース・プログラム各種、はたまた元F1参戦マシンの購入や走行など、懐が許すかぎり充実したオーナー・ライフを送れるようになっているからだ。

SF90XXストラダーレのような限定車を入手するには、フェラーリ・オーナーとして“修行”を積まなければならない。あれも乗り、これも乗り、やがてディーラーに選ばれし人たちがリストアップされ、本国で吟味された上で限定車の購入を「オファー」される、という流れだ。蛇足ではあるが昨今、高級腕時計もそのような買い方だと耳にする。

もっともフェラーリの新車は納期に時間を要するので、新車が到着するまではフェラーリの認定中古車を乗り回すのが理想のスタイルだという。これを繰り返しながら、フェラーリ顧客としてのステイタスを高めていく…。SF90XXストラダーレのような限定車を所有できる、ということは車両価格以上に価値がある、ということだ。

フェラーリといえば、その美しいエグゾースト音が多くの人を魅了している。SF90XXストラダーレのようなPHV車でも、エンジンのエキゾースト音はフェラーリらしさがある。今後、BEVの投入にあたってフェラーリ・サウンドがどうなるのか、クネヒテル氏に疑問を投げかけてみた。

「現在、社内でもBEVでのフェラーリ・サウンドのアプローチを議論しているところです。フェラーリ初となるBEVの投入まであと2年ありますから、どうなるのか楽しみにしていてください」と何やら自信ありげな回答であったことを報告しておく。


文:古賀貴司(自動車王国) 写真:フェラーリ
Words: Takashi KOGA (carkingdom) Photography: Ferrari

古賀貴司(自動車王国)

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