ルーフはまるで魔法の扉。フェラーリ575スーパーアメリカに魅せられる

Aston Parrott

フェラーリ575Mはモダン・フェラーリのいわば分岐点だった。だが本当にその扉を開けたのはレオナルド・フィオラヴァンティが生み出したスーパーアメリカである。



すべてはたった10秒で完了する。そんな短い時間ながら、フェラーリ575スーパーアメリカがルーフをくるりと反転させるのを実際に目の当たりにすると、まるで魔法を見せられたようだ、言うまでもなくこれはスーパーカーのサラブレッドであり、0-60mph加速タイムや最高速について語るべきなのかもしれない。だがカーボンファイバーのフレームを持つサンゴバン社製ガラスルーフが後方に180°回転するメカニズムこそこの車の最高の演技である。「レヴォクロミコ」というからくりはデイトナや288GTOなどの生みの親として知られるレオナルド・フィオラヴァンティその人が創り出した特許システムである。

フィオラヴァンティの発明


フィオラヴァンティは長くピニンファリーナに在籍した後にフィアットのデザイン・ダイレクターを務め、その後独立して1991年に自身のデザインハウスを設立した。この画期的なルーフ・メカニズムは、2001年にアルファ・ロメオの21世紀のスポーツカーとして提案された「ヴォーラ」と名付けられたコンセプトカーで初めてお披露目された。数多くのコンセプトカーとスーパーアメリカの他にも、ライセンスを受けたルノーが「ウィンド」という2シーターに採用して短期間生産したこともある。

フェラーリの場合、フィオラヴァンティのルーフはいつの時代にも難しい問題に対するスマートな解答となった。限定モデルのスーパーアメリカは、550バルケッタの後を受けて登場した。550マラネロの屋根を切り取った550バルケッタは、ピニンファリーナの70周年を記念するモデルとして2000年に発売された同じく限定生産車である。その種の車に対する需要は間違いなく存在したが、そのルーフは、正確にはルーフがなかったために、寒冷地や降雨量が多い地域に住むユーザーには問題が多かった。というのもバルケッタはルーフなしで走ることを前提に設計されており、簡素な幌が用意されていたとはいえ、その場合は70mph(113km/h)以下で走ることと定められていたのである。豪勢な車ではあったが、フェラーリのカスタマーはそのような妥協を快く受け入れる人々ではない。

その5年後、フェラーリは575Mをベースにしたスーパーアメリカを発表する。あらゆる面で先代モデルより優れた V12搭載のフラッグシップ・コンバーティブルを狙ったものだった。その当時、他の主要メーカーは複雑で重くかさばる折り畳み式メタルルーフのコンバーティブルをラインナップしていたが、それに比べてフィオラヴァンティのシステムは標準型575Mの60kg増にとどまっていた。しかもそれは相当のシャシー補強を含んでのことである。リアのいわゆるバットレスはボディ剛性に効果があったが、加えてサイドシルやセンタートンネル、Aピラー、さらにトランスアクスルのマウントにも補強材が追加された。

仔細に見れば見るほどスーパーアメリカのリア部分がどのように違っているかに気づくはずだ。頑丈そうなバットレスはルーム・メカニズムを内蔵し、わずかにふくよかになったヒップはクーペよりもっとホットロッドのような迫力を感じさせる。トランクリッドはカーボンファイバー製の専用品で、跳ね馬のエンブレムはエンドパネルの上部に誇らしげに取り付けられている。フロント周りは明らかに575Mに近いが、ヘッドライトには宝石のように輝くリングが加えられ、エアインテークにもアルミニウムのメッシュグリルが装着されてスーパーアメリカであることを主張している。特別装備の最後は豪華な19インチBBS2ピースホイールである。



若干の重量増加に対応すべく、フェラーリは既に十分パワフルな5.7.ドライサンプV型12気筒エンジンの吸気系とエグゾーストに改良を施し、これによってさらに25bhpを得たスーパーアメリカのピークパワーは533bhpに達している。パフォーマンスにも不足はない。フェラーリによれば0-60mph加速は4.3秒、最高速は199mph(≒320km/h)にも達するという。



編集翻訳:高平高輝

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