ジャッキー・イクス氏にインタビュー|キング オブ ル・マンにとっての「時間」とは

Ken TAKAYANAGI

インタビューの場にジャッキー・イクス氏が現れると、その場がパッと明るくなった。彼には人を楽しませ、癒してくれる魅力がある。歴戦を重ねたレジェンドドライバーであるにもかかわらず、まったく偉ぶることはない。否、レジェンドであるがゆえの懐の深さなのだろうか。そんな彼にとって時間とは何なのかを伺った。



これまで、長い人生でとてもたくさんの人に出会ってきたけれど、本当に大切な心の友と呼べる人は二人しかいない。そのひとりがカールフリードリッヒ・ショイフレなんだ」

そう語るのは、かのジャッキー・イクス氏。心を許せる大切な友であるカールフリードリッヒ・ショイフレ氏は、ショパールの共同社長。この二人の関係は長い時間をかけて大切に育まれてきた。ショパールといえば、毎年イタリアで開催されるクラシックカーラリーの『1000 Miglia』のオフィシャルパートナー&タイムキーパーを36年間務めていることで有名だが、この二人の絆を深めたものは“情熱”なのだという。

イクス氏は「レーシングドライバーは鏡なんだよ」という。レーシングカーは、設計する人、デザインする人、組み立てる人、セッティングする人、応援してくれる人、さまざまな人の情熱が注ぎ込まれたものであり、ドライバーは技量とマシンの善し悪しだけではなく、彼らの想いを反映して走るのだ、と。多くの人の情熱がクラフトマンシップに反映されている点においてはショパールの時計も同様で、だからこそ二人の友情は長く続いているのだ。



F1ドライバーであり、ル・マンで6度の優勝を果たし、さらに1981年からはラリーへも参戦したジャッキー・イクス氏は、パリ・ダカールラリーで“人生が変わった”のだそうだ。「ダカールを訪れた際、一見何もないような砂漠で、少数ながらも人々が力を合わせて暮らし、懸命に生き抜いている姿を目の当たりにしたんだ。それこそが現実だった。広い宇宙においては、所詮人間なんて無力なものだよ。レースの世界は勝利というひとつの目的に向かって突っ走るのみで、ドライバーは砂漠の砂粒よりも小さい人間なのかもしれないと感じた。それからはより広い視野で世界を眺めるようになった。人生における重要な体験だったね」

イクス氏の言葉には、豊富な人生経験を反映した哲学的ともいえる重みと深さがある。彼に“時間”の概念を問うと、次のように答えてくれた。

「例えばレーシングドライバーにとっての“時間”とは、とても緻密なもので、より速く走るためにコンマ何秒の世界で争うもの。正確さや精度が重要になってくる。社会的な側面から見た時間とは、皆が一緒に行動するための共通概念としてソサイエティには欠かせないもの。そういう僕は今日のインタビューの待ち合わせ時間に3分ほど遅れてしまったけどね(笑)。これは僕のせいじゃないよ、ランチタイムでの会話がつい盛り上がってしまったんだ。許してくれるかい?」

たしかに、イクス氏と会話を重ねるうちに話がどんどん盛り上がり、時間がいくらあっても足りなくなってしまうのは大いに理解できる。今回のインタビューでも、事前に用意してきた10の質問に対して2問目を伺っただけで、すでに予定の時間をオーバーしてしまった。それだけ彼の言葉には魅力があり、会う人は引き込まれて時間が経つのを忘れてしまう。

「若い頃には、時間は永遠に続くものだと思っていたよ。人生の終焉なんて認識してなかったからね。でも、この年齢になると時間はとても短く感じるんだ。人生は短い。今は政治や経済など世の中がどんどん複雑になっていて、どんな方向に進むのが正解なのかは誰にもわからない。だからこそ、仕事もアクティビティも、いかにポジティブに人生を生きるかが大切。最終的には人は同じように人生を終えるのだから、互いにリスペクトしなければいけないのだよ」

今回のインタビューでは、「time」について訊ねるたびに、その答えは「live」「life」という言葉になって返ってきた。そう、ジャッキー・イクス氏にとっての“時間”とは、すなわち“人生そのもの”なのだ。

こちらは2023年モデルのショパール「ミッレミリア クラシック クロノグラフ」。トピックはケース、ベゼル、リューズ、プッシュボタンに、ショパール独自の究極の耐久性を誇るルーセントスティール.が採用されている点。スイス公式クロノメーター検定局(COSC)の認定を受けた54時間のパワーリザーブと併せて、耐久性と信頼性、実用性をさらに向上させている。40.5mmに小径化されたケースはよりエレガントな印象に。スポーティな着こなしからドレスアップまで、あらゆるシーンに対応する相棒となりそうだ。


文:オクタン日本版編集部 写真:高柳 健
Words:Octane Japan Photography:Ken TAKAYANAGI
取材協力:ショパール

オクタン日本版編集部

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