最新PHEVモデル「V90 Recharge」に見る、ボルボの全面BEV化へ向けた着実な歩み

Volvo Car Japan

電動化戦略を着々と実行に移しているボルボは、2025年までに電気自動車(BEV)の販売比率を50%まで引き上げるとともに、2030年にはBEV専業メーカーになることを目指している。同様の目標を掲げる自動車メーカーは少なくないが、このゴールに向けて着実に歩を進めているという意味でいえば、個人的にはボルボがトップに位置しているように思う。

理由はいくつか挙げられる。

年間販売台数が70万台と比較的規模が小さいため、取締役会を始めとする意思決定が迅速かつ明快で、目標達成に向けて実効力のある施策を行いやすい体制が確立されていることが理由の第一。また、ボルボにとって主力の販売市場は欧米の先進諸国ならびに中国が中心で、BEVを受け入れる土壌が整っていることが理由の2番目だろう。そして3番目の理由としては、かねてより安全や環境問題に積極的に取り組んできたボルボにとって、「電動化によるCO2削減」というストラテジーが、ブランド・イメージとの親和性が高かったことが挙げられる。



こうした戦略にのっとり、昨年から今年にかけてはC40とXC40のBEVを国内市場に次々と投入。そのセールスは堅調で、2022年10月までの統計ではプレミアムBEV販売台数でランキング6位に食い込んでいる。

とはいっても、その販売台数は400台で、ボルボ全体が日本国内で販売する1万5000台強には到底及ばない。つまり、いくらBEV化を積極的に推し進めているとはいえ、現在販売している“エンジン付き電動車”の商品力強化にも努力しなければ、2030年の完全電動化まで企業としての体力が持たない恐れがあるわけだ。したがって、若干のアイロニーは含んでいるものの、「将来の全面BEV化のためにも、引き続きハイブリッド・モデルの改良に取り組んでいく」姿勢がボルボには求められているのである。



今回、ご紹介するのは、そんなボルボが先ごろリリースした最新PHEVモデルのV90 リチャージ ウルティメイト T8 AWD プラグインハイブリッドである。

我が国では「ハイブリッド車の発展版」と位置づけられることの多いPHEVだが、欧米では“プラグイン・モデル”としてBEVと同じカテゴリーに分類されることのほうがはるかに多い。つまり、大切なのは「エンジンを積んでいるかどうか」ではなく、「外部の電力で走行できるかどうか」であると考えられているのだ。

これと同じ発想でいえば、PHEVは大きなバッテリーを搭載して長いEV航続距離を実現することが大切という結論に達する。新しいV90 リチャージがまず取り組んだのもこの点で、バッテリー容量を11.6kWhから18.8kWhへと拡大することで、EV航続距離を従来のざっと2倍、新型V90 リチャージであれば75kmを達成したというのである。



実際に試乗してみると、PHEV化の恩恵を確かに感じることができる。

エンジンを始動させることなく発進するので静かなことはもちろん静かなのだが、やはりエンジンと電気モーターとでは発進のマナーが微妙に異なっているように思う。

たとえば、従来からのエンジン車は、「ガソリンや軽油の燃焼」で発生した力を歯車でタイヤに伝達するため、その動き方に金属的な硬さを感じることが少なくないが、電気モーターで走り出す車は、最初の“一蹴り”がもっと「ヌルッ」というか「モワッ」としていて、よりソフトでスムーズに感じられるのだ。そうした感触は、両手に磁石を持って反発させたり吸い付かせたりするときに伝わってくる力の働きとよく似ているように思う。

もっとも、そうした「ヌルッ」もしくは「モワッ」が感じられるのは動き出しの一瞬だけで、そこから先は電気モーターらしいレスポンスのよさ、そして分厚い低速トルクを堪能できる。つまり、動き出しはソフトで洗練されているけれど、その後はレスポンスのいい軽快なフットワークを示してくれるのだ。

V90は現行ボルボの最上級ワゴンという位置づけだけあって、その乗り味はふわっとしていて快適。ただし、速度を上げていけばしっかりとフラット感が感じられる上質な乗り心地に仕上がっていた。



最新のV90にはこのほかにも改良点がたくさんあり、たとえばフロントとリアのデザインがブラシュアップされたり、グレード体系が見直されたりしているが、そのなかでも特に注目したいのがグーグル・アシスタントの採用である。これを平たく説明すれば、ダッシュボード上のセンターディスプレイがネット接続されてグーグルの各種機能が使えるようになったとなるだろう。



たとえばナビゲーション・システムの地図は常にオンラインでアップデートされるほか、目的地検索も音声認識で可能になった。しかも、その認識率が高いうえに、インフォテイメント以外の一部機能を音声入力で操作できるのである。それも、システムによってあらかじめ決められた定型文だけでなく、普段の会話と同じ自然な発話で理解してくれるところがありがたい。

ドライブトレインだけでなくインフォテイメントでも“新しさ”が満喫できるV90 リチャージ ウルティメイト T8 AWD プラグインハイブリッドは、2023年1月1日より価格が改定されて1109万円(税込み)で販売される。


文:大谷達也 Words: Tatsuya OTANI

文:大谷達也

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