ル・マン クラシックの10年|リシャールミルの情熱の意味

Richard Mille

近年はクラシックカーも投資の対象となっており、オークションで次々と高額で落札されていく。しかし自動車は、走ってこそ価値がある。だからリシャール・ミル氏は、クラシックカーのイベントをサポートする。今年で10回目を迎えた「ル・マン クラシック」は、自動車のあるべき姿を取り戻し、そして文化を醸成する場となっている。



レーシングカーの精密なメカニズムとレーシングドライバーの正確無比なドライビング技術は、高性能機械式時計を同じ価値観を共有しており、両者の親和性は極めて高い。

しかしリシャール・ミルほど心底モータースポーツを愛している時計ブランドは存在しないだろう。ブランドの創立者であり、ウォッチコンセプターでもあるリシャール・ミル氏はクラシックカーのコレクターであり、フランス・レンヌ郊外には、納屋を改造したガレージがあって、専門のメカニックが住み込みで管理しているのだ。

コレクションはブルース・マクラーレンがドライブしたマクラーレンM2Bや、レーシングカー仕様のフェラーリ・デイトナなど多岐にわたるが、そのどれもが動態保存されている。近所のブーランジェリーにバゲットを買いに行く際に、アリタリアカラーのランチア・ストラトスを使うなんてことも日常だ。

そんな筋金入りのエンスージアストであるリシャール・ミル氏が、モータースポーツへの情熱を形にしたのが、2002年から始まった「ル・マン クラシック」。これは24時間耐久レースと同じル・マン サルト サーキットを舞台に、1920年から80年代のクラシックカーが参戦するレース。もちろん24時間走り続けることはできないので、年代ごとにクラスを分け、40分1セットの3ヒート制でレースを行う。イベントには約750台のレーシングカーがレースに参戦し、さらに愛好家が乗り付けた8500台以上のクラシックカーが駐車場を埋め尽くす巨大イベントとなっている。

ホームストレートに並んだ色とりどりの名車たち。ブガッティT35やジャガー タイプD、フォードGT40などの名車が参戦した。参戦するマシンは、実際にル・マン24時間耐久レースに参加した経歴があるモデルか、その同型車に限られる。さらに一切の改造は許されない。レースにエントリーするのも大変なのだ。

リシャール・ミル氏はこのイベントの創設以来のパートナー。そしてレーサーとしても参戦するというから、その熱量には驚かされる。しかしリシャール・ミル氏は、なぜここまでル・マン クラシックに情熱を注ぐのだろうか? それは歴史と伝統、文化への敬意に他ならない。

夜の帳が下りた後も、フェラーリ250 GTOが疾走する。それぞれのカテゴリーで順番にレースを行うため、結果的に24時間の間レースが続いていることになる。エレガントだがタフなレースでもあるのだ。

1965年製のポルシェ904 カレラ GTSは、イギリス人とフランス人のドライバーがドライブ。

リシャール・ミルの時計は、ハイテク素材や斬新なメカニズム、そしてユニークなコンセプトを持っているが、古い時計技術への敬意も欠かさない。どれだけ複雑なメカニズムであっても日常的に使えるように設計し、耐衝撃性に強くこだわる。それはいくら高価で希少なクラシックカーであっても、ガレージに保管せず、本来の目的である“サーキットで走らせる”行為にも似ている。本物の自動車愛とは、ルーツに敬意をもつことなのだ。

1966年から1971年までに製作されたレーシングカーが参戦するGrid5のカテゴリーは、フォード勢とポルシェ勢がしのぎを削り合った。

今年で10回目を迎えたル・マン クラシックだが、新型コロナウイルスによるパンデミックの影響もあって、開催は4年ぶり。イベントを待ち望んでいた愛好家たちの熱気は例年以上で、5日間のイベントには述べ20万人以上の観客が訪れたという。観客の中には若いカップルも多く、家族連れでやってくるファンも少なくない。こうやってクラシックカーへの情熱を継承していくこともまた、リシャール・ミル氏が望むこと。純粋な情熱は伝播し、そして文化となっていくのだ。


文:篠田哲生 Words:Tetsuo SHINOD

オクタン日本版編集部

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