なぜ斬新なのにシトロエンに見えるのか? C5 Xの世界観をカラーデザイナーが解き明かす

Citroën



――C5 Xのインテリアでお見事だと思うのは、レザー張り×ウッドパネルにクロームが走る内装をDセグのサルーンでやると、ともすればコンサバなおっちゃんグルマに堕するじゃないですか。その組み合わせがC5 Xでは、恐ろしくモダンに見えますよね。ダッシュボードにもウッドにもレザーのパーフォレーションにも、ダブルシュヴロンの模様柄が細かに入っていて、でもやり過ぎていない。あれは、カラーマテリアルの担当デザイナーがインテリアデザイナーと協調して作業するとは思うんですけど、どうやって実現にこぎ着けたのですか?

YC/ありがとうございます。あれは開発したんです。ダッシュボードのシボを開発した、ということですけど、これはカラーマテリアルとして提案したアイテムで、全部シトロエンのシュヴロン柄を入れたんです。



――はい、初めて見た時は驚きました。なんて芸が細かいんだろうと。ウッド表面のシュヴロンの模様は、あれは熱転写のような処理ですか? ちょっとレリーフ状というか、指でなぞると凹凸がありますよね?

YC/あれはフィルムのインサート成型で、まさしく、金型の方にシボを打っているんですよ。より立体感・レリーフ感を出すために、模様柄のヘアラインのシボを型に入れて、その上でフィルムを挟んで打っているので、すごく凹凸感があります。

――あれはじゃあ、グラフィックとなる線が凸で出ているということ?

YC/柄が線状になっているのですが、型にも線状の凹凸がついているので、フィルムの柄と型の凹凸が組み合わさって、ウッドの上ではより強い凹凸があるように見えるという。

――(感嘆しながら)じつは近頃もう老眼気味で、近くに寄って眺めても表面がどんな風が把握しきらず、でも指でなぞると凹凸が感じられるので、ウッドと柄の線と、どちらが掘れて凹部なのか触るほど分からなくなっちゃったんです。いや、想像のナナメ上を行く処理でした。

YC/ウッドの表面を断面で見ると、波々になっています。その上さらにラインの陰影がのっているので、目にも指にも、さらにレリーフ感が強調されて感じられるという。

――確かに、あの処理が無いとペタッとウッド貼っただけで、いわゆるレザーとウッドの間にクロームのインサートを挟んだだけで、一丁上がりという質感になってしまいます。

YC/そうなんです。印刷でぺたーっとしただけのウッドになってしまう。今回のC5 Xの内装は、あまり色味がないことで逆に細かな仕立て、素材感の違いがちゃんと際立って見えると思うんです。逆に強い色が入っているとそちらに目が行くので、質感が楽しめるというか。微妙な色合いの中だったので、各素材がちゃんと見えてくる効果があると思います。

――さっきおっしゃってたシボの話にまた戻りますと、これは型にきゅっと入れて押し当てるようなイメージですか? 模様が幾何学的だから、すごいエッジが立っていますよね?

YC/これは今までとちょっと工法が違いまして。まず金型の作り方としては、木型があって、通常はその上にシボがついたPV紙を張り込むんですね。その張り込んだものを元に金型を成型するんですよ。なので、張り込んだところを引っ張りながら木型に張ったりするので、シボが変形しちゃう部分が出てくるんです。

文:南陽一浩 写真:南陽一浩、シトロエン Words: Kazuhiro NANYO Photography: Kazuhiro NANYO, Citroën

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