ボルドーの一流シャトーが世界最高クラスで在り続ける理由

Chateau Pichon-Longueville Comtesse de LalandeのGeneral Director兼醸造家のニコラ・グルミノーさん



このように世界的に名が知れた伝統的なボルドーのシャトーも、その歴史と過去の栄光にあぐらをかいていては時代に取り残される。世界トップクラスの生産者が、その地位を守りつつ、さらに向上している背景には、常に前進し続ける姿勢がある。

ボルドーのシャトーには、かつて貴族の邸宅だった美しい建物があり、今もゲストを迎え入れているところもある。

革新を続けるピション・ラランドのワインスタイル


ピション・ラランドのGeneral Directorであり醸造家でもあるニコラ・グルミノーさんは、「私たちのワインには独自のスタイルがあります。ブラインドでもわかります」と言い、それは「力強さとエレガンス、濃密さと洗練さ」なのだと説明する。

2021年のボルドーは、難しい天候条件のもと、大変困難な年となった。今回、ワインを試飲しながら多数の生産者から話を聞いたが、こういう困難な年ほど、その生産者の信念と長年の努力が結果につながっていると感じる。

ボルドーワインの専門家のジェーン・アンソンさんはこう説明する。

「2021年は品質にばらつきがある年です。生産者によっては未熟な果実が見られる場合もあり、特にカベルネ・ソーヴィニョンの成熟を待ったかどうか、さらに品質を高めるために、どれだけ丁寧に選果をしたかが分かれ道になったと思います」

プリムール試飲会の様子。

ニコラさんも、「2021年は畑とテロワールが鍵となった年」だと言う。ピション・ラランドでは、2013年頃からビオディナミ農法を採り入れた栽培方法を開始し、2021年はオーガニック栽培の認証手続きに踏み切った。困難な栽培条件の年だったが、この年に大きな決断をしたのは偶然ではない。

ピション・ラランドでは、長期間にわたり、土地を分析し、より良いものを造るための改革をおこなってきた。ワインはかつて、メルローの比率が高く、その効果もあり柔らかい優しい印象のワインであったが、近年ではカベルネ・ソーヴィニョンの比率を増やしている。これは、15年前に土壌の調査をしたところ、メルローが植わっていた区画がカベルネの方が適していることがわかり、長期的に植え替えの計画を立てたからだ。

慎重なニコラさんは、一度には変えずに、様子と結果を見ながら、毎年4ヘクタール程度の畑の植え替えを実施した。主にメルローを引き抜き、2~3年の間土地を休ませ、新たにカベルネ・ソーヴィニョンやカベルネ・フランの苗木を植えた。そして、休ませた土地は、当初から化学農薬をほとんど使わず、ビオディナミ農法で耕した。

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