放置されたディーノを購入してレストア!誰もが気になるその費用は、果たしていかほど?

Paul Harmer


レストアの定価は8万ポンド


ガーグールは、可能な限りオリジナルを保ってほしいとのメッセージを付けて、グッドウッドから直接レストアラーにディーノを送った。作業が終わりに近づいたころ、彼は『Octane』でこのディーノを記事にするつもりはあるかとの連絡をくれた。もちろん、と私たちは答えたが、数字を明らかにするという条件をつけ、それを彼がこころよく飲んでくれたというわけである。

数カ月後、私たちはエプソムのアウトオフィチーナで会う約束をした。そこでは注意深いエリアス・エリアの監督の下、ちょうどレストア作業が終わったところだった。エリアはすでにガーグールのF40LM(コレクター向け16台のうちの1台でバラバラになって倉庫の中で発見された)をレストアしており、他にも360スパイダーと公道走行用にF430チャレンジのモディファイも手掛けていた。

私はずいぶん前にもアウトオフィチーナがメンテナンスを担当していた308GT/4を試乗するために訪れたことがあった。オーナーのジョナサン・ハンプトンは施設の素晴らしさに目を輝かせていたものだった。

私が着いた時にはガーグールはまだ到着しておらず、その辺を見て回っていると、エリアと一緒にいた誰かがショールームの向こうから声をかけてきた。「やあジェームズ、元気かい?」名前と顔が一致するまでちょっと時間がかかったが、それはピーター・ディーチュだった。2012年に、ロンドンで彼が9年間も毎日乗っていたテスタロッサを記事にしたことがあったのだ。そのテスタロッサはマクラーレンのITコンサルタントとして働いていた26歳の彼が2万2000ポンドで購入したものだった。彼はそのキャリアを捨て、今ではこの会社のパーツ部門長になっているという。

続いてピーター・ワードにばったり出会った。彼はロンドンのA4近くに"レース道場"を構え、イタリアン・エキゾチックカーとスカイラインを専門に扱っている。彼は私が所有していたランチア・デルタ・インテグラーレの面倒を見てくれており、一度など、燃料系トラブルの修理のために、当時英国に1台しかなかったランチアS4ストラダーレで我が家まで来てくれたこともあった。ここはそういう特別な場所なのである。

エリアはディーノのレストアを8万ポンドの定価で請け負っている。

ガレージの中に35年間も置き去りにされていた割には状態は酷くなかったが、それでも完全に分解する必要があった。

「皆、ディーノが非常に少ないことを理解しているが、どうしても軽く見がちで多くはすぐ手放してしまうんだ。だが今ではこの形が称賛されているし、その上コンパクトだから街中でも運転しやすいと評判が高い。ただしこの車には厄介な発見があった。エンジンの中に水が残っており、それが結晶化し、色々な部分を侵蝕していたために、シリンダーヘッドは使い物にならなかった」

もっとも厄介だったのはエンジンの中に水が残っていたこと。

これはディーノに共通するトラブルではなく、めずらしい例だったが、ボディをベアメタルまではぎ取って見ると、ありがちなダメージを見つけたという。



「予想していたほど酷くはなかったものの、以前のオーナーが何カ所かフェンダーを修理した痕があった。そのうちのいくつかはフロント・メンバーを切って作り直す必要があった。とはいえ、大きなダメージではなく、ジオメトリーにも影響していなかった。ダッシュボードはまずまずの状態で、シートはまったく問題なかった。良いスタートだと思う」

明らかにオリジナルと異なる点はごく一般的なものだった。ホイールは正しいカンパニョーロだったが、1インチ大きなサイズに変えられており、またこれも普通のことだがエアフィルターに改造が施されていた。ガーグールはレストアに満足しているという。「作業は膨大なものになったが、彼らはこれまでに何台ものディーノをレストアした経験を持つ専門家ばかりだからね」

【後編】に続く


編集翻訳:高平高輝 Transcreation:Koki TAKAHIRA
Words:James Elliott Photography:Paul Harmer, Louis Gargour, Autofficina

オクタン日本版編集部

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