外も中もボロボロ・・・見るも無残なフェラーリが保存されている理由とは?

Alex Penfold (C) 2021 Courtesy of RM Sotheby's

フェラーリ308は、成功をおさめたディーノ246GTとGTSの後継モデルとして1975年のパリ・サロンでデビューを飾った。1973年に登場したミドシップ 308GT4をベースとしており、横置きV8エンジンは当時の経営陣から絶大な信頼を置かれたといわれている。ピニンファリーナがデザイン、スカリエッティが組み立てた魅力的なボディと2.9リッター V型8気筒エンジンが組み合わさり、デザイン性とパフォーマンス性に長けたことから初期のモデルから顧客やロードテスターに絶賛された。

当初はGTBのみだったが、1977年にGTSが登場(Sはスパイダーを意味するが、このときはタルガトップ)。365GTB/4デイトナや246ディーノを手がけたレオナルド・フィオラバンティがデザインしたウェッジシェイプのボディラインは、今でもフェラーリのアイコンのひとつとなっている。そのルックスと性能は多くのエンスージアストを魅了し、テレビ番組『マグナム』では主役同然の活躍を見せた。俳優トム・セレックが308のハンドルを握り、ハワイの島々を舞台に犯罪者を追い詰める姿は多くの人々の心を捉えたに違いない。

308は1980年からGTSi、GTBi、1983年にはクアトロバルボーレも生産された。1975年から1985年までの10年間で、全バリエーション合計1万2000台弱が生産されている。GTSiとGTBiでは308の4基ツインチョーク・ウェーバー40DCNFキャブレターが、ボッシュのKジェトロニック機械式燃料噴射装置に置き換えられた。エクステリアはキャブレターモデルと同じだが、アロイホイールはミシュランTRXラジアルタイヤを装着したメトリックサイズのホイールに変更されている。キャビンでは、時計と油温計がセンターコンソールに移され、ブラックのパーフォレイテッドレザーのステアリングホイールやシートのデザインも変更された。



そして、この写真のフェラーリは308GTSi。かろうじてボディはフェラーリらしさが残っているが、見ての通りボロボロだ。1982年6月にマラネロ工場から出荷された時はロッソキアーロのボディとベージュレザーのインテリアで仕上げられていたが、インテリアに至っては酷い状態だ。なぜこんなことになっているのかといえば、このフェラーリ308は2014年にフランスで発見された「バイヨン コレクション」の一部だったため。「バイヨン コレクション」とは、フランスの運輸王であるムッシュ・ロジャー・バイヨンが所有していた約100台のクラシックカーコレクションである。多数の価値ある車が埃をかぶった状態で発見され、"世紀の大発見"ともいわれている。バイヨンは1950年代に収集をはじめたものの車をレストアするには資金が足りなくなってしまい、コレクションは錆びつき、埃をかぶったまま放置されることになった。308GTSiもその中にあった一台である。





もともとこの車は1982年6月にマラネロを旅立ち、ベルギーで所有されていた。その後、バイヨンの手に渡りベルギーで登録されている。他のコレクションの多くと同様に、2015年にオークションで売却されていたが、購入した人物はこの車を直さずにあえて換気された空気室で保管し、発見された状態のまま保存していた。そして以前の状態のまま、また2月2日のオークションに出品されることになった。フランスで発見された100台のうち、60台ほどが復元可能だったといわれているが、このフェラーリも幸いその中に入っている。オークションハウスのRMサザビーズによれば、このフェラーリのエンジンは、3.2リッターのクワトロバルボーレから交換されたユニットを積んでいる。しっかりと動く綺麗な状態にするまでは、かなり手がかかるだろう。もしかしたら、次のオーナーもこの状態のままで"芸術品"として所有するかもしれない。この308GTSiが辿る次のストーリーが気になるものだ。なお、推定落札価格は5~7万ユーロ(約640~896万円)となっている。

Alex Penfold (C) 2021 Courtesy of RM Sotheby's

オクタン日本版編集部

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