英国文化のアイコン・ランドローバー|ジープにも影響を与えた偉大なる約70年の歴史

ランドローバー



ランドローバーの足跡
ランドローバーが、その後 60年間にわたって維持することになる独自のスタイルに落ち着くには数年を要した。これこそ、今回、私たちがスタジオ撮影に初期のランドローバーの代表とされる2ヒューイ(登録番号HUE166からそう呼ばれる)"ではなく、あえて1951年型を選んだ理由に他ならない。ランドローバー社は極初期の1948年に生産された"ヒューイ"を現在でも所有しているが、これがライトグリーンに塗られていることが撮影を断念した理由のひとつだ。

実は、すべてのランドローバーは、ローバー社が英国陸軍からの大量受注を見越して、ブロンズグリーンに塗る1949年の中頃までは、最新のヘリテージ90エディションのライトグリーンに似たセージグリーンに塗られていた。さらに機構的に顕著な違いがある。すべてのランドローバーは、動力を前軸と後軸に振り分けるためにジープ型のセントラル・トランスファーボックスを使用しているが、ごく初期に限って、前輪にロックが可能なフリーホイール機構を持つフルタイム四駆だった。それは間もなく、ハイ・ローの切り替えが可能なハイレシオのパートタイム四駆へ変わった。ノブを押し下げる事でエンゲージされ、またトランスファーレバーを"ハイ"から"ロー"に動かせば、自動的に四輪駆動が選択された。

外見上の主たる変更はヘッドライトとフロントグリルだ。当初の4年間、前照灯はグリルの中にあり、ライトはメッシュガードを通して照射された。その後、おなじみの逆 T型グリルとなり、ライトは露出してグリル脇の上方に落ち着いた。今回、ご覧にいれる1951年中期モデルは、その過渡期といえるものだ。

この、トム・ピックフォードがレストアし所有するシリーズI、登録ナンバー"LAC295"は、興味深い来歴を持っている。これはプロトタイプの2リッターエンジンを搭載し、当時、アシスタント・チーフエンジニアだったアーサー・ゴダードが登録した。94歳になるゴダードは、当時のオリジナルデザインチームで唯一の存命者で、現在はオーストラリアに住んでいる。この車はその後、ベルギー陸軍による査定評価のためベルギーに送られ、英国に戻される前に、1948年製プリプロダクションの1600ccエンジンに積み替えられている。おそらく通常のランドローバーとして販売されたのだろう。その後はレッカーとして使われ、トムが入手した時には完全に壊れていたものの、1951年当時のオリジナルのリアナンバープレートが残っていた。現在はトムが可能な限り元の状態に戻し、彼が19歳の時に入手しておいた、今では相当に貴重といえるダンロップの"トラックグリップタイヤ"を装着し、2リッターエンジンを積んでいる。1600より元気なユニットで、80インチモデルにかなりよいパフォーマンスを提供してくれる。パブの物知りたちは、初期のランドローバーは絶望的に遅く、現代の交通にはついて行けないというが、私は、それはどこで乗るかによるのではないかと反論したい。田舎の裏道ならまったく問題はないし、都会でも同じだ。それにこのLAC295には、よりオールラウンドに使用できるよう、フューリー製の機械式オーバードライブが装着されている。これは半日の単純取り付け作業で巡航速度を45mph(72km/h)から、55〜60マイル(89〜97km/h)に引き上げることができる。だが、シリーズIでの長距離運転は、背中を丸めなければならないドライビングポジション、骨を揺さぶる乗り心地、頭痛を呼びおこす騒音レベルで常に過酷だ。ただし乗り心地に関してだけは、車体後部にちょっとしたウエイトを積む事でドラマティックに改善できる。

もし過度にネガティブに聞こえたならそれは真意ではないが、シリーズIは悪天候では特に楽しい車ではない。これは晴天でこそ真に楽しい乗り物だ。ドアの上部は取り外し可能。ウィンドスクリーンは前方に倒せ、キャンバストップは取り外せてスポーティなドライブが楽しめる。ドアを前方に完全に開けば、簡単に持ち上げてヒンジから外すことが出来るし、ボンネットも同じく簡単に外すことができる。シリーズIはまさに1/1のメカノのおもちゃだ。

編集翻訳:小石原 耕作 Transcreation:Kosaku KOISHIHARA Words:Mark Dixon Photography:Paul Harmer

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