MGBのレストモッドモデル、4.8リッターV8搭載のフロントライン「LE60」。その実力は?

Octane UK

ティム・フェナによって30年以上前に設立されたフロントライン・デベロップメンツは、10年前のLE50をはじめとするMGBのレストモッドにより、既によく知られている存在だ。

新モデルのLE60では、MGB誕生60周年を記念して、MX-5の4気筒ではなくV8エンジンを搭載。新しいボディは、拡大した車幅に合わせてフロントで6インチ、リアは10インチもワイドになった。そして、LEDのヘッドランプ、控えめなクロームメッキ、ダンロップに似合うホイール、赤一色のUSスタイルのテールランプで、1970年代の逞しさを表現している。

LE60の内装は、MGBの快適なドライビングポジションを実現すべく最適化されている。これらはフロントライン社独自のもので、サポーティブで仕立てが良く、完璧なバケットシートが備わる。それに、ハイエンドのブルートゥースステレオ、回転ハンドルに模した独創的な電動ウィンドウスイッチなども装備し、まさにオーダーメイドを得意とするフロントライン社ならではの仕上がりとなっている。



ボンネットには、イギリスで最も成功したV8エンジンが収まっている。それは最終的に、MGの短命に終わった1973年MGB GT V8に搭載されたものだ。しかし、このショートストロークの4.8リッターで375bhpのモンスターのようなV8を搭載したファクトリーMGBは、未だかつて存在しない。その彫刻的なインジェクション・プレナムの下には、特殊なシリンダー・ヘッド、鍛造ピストン、ローラー・カム、そして完璧にバランスのとられたスチール製クランクシャフトが収められている。

エンジンをかけると、神の救いを求めたくなるほどの雷雨のような音が響き渡る。通常の車とは違い、このLE60はビルを震えさせるほどファンキー型破りでストレートなエグゾーストシステムを装備しているのだ。アクセルを踏み込めば、轟音はさらに狂暴な咆哮へと変化する。4000rpmからどこまで回るのか不安になるが、レッドゾーンの6000rpmでも息切れぜず、憑りつかれたような激しさで回り続ける。(しかも、このV8はとてもフレキシブルなので、トップギアで1500rpm、時速30マイルの状態からでも何のためらいもなく加速するのだ)



この1122kgのGTのパフォーマンスは驚くべきもので、フロントライン社によると0-60mphは4秒、最高速度は170mphとされている。ディスクブレーキとショートかつシャープな5段ギアボックスは、300ポンド(約136kg)の重さに耐える必要がある。よって、当然のことながら少々力がいるが、精通したクラシック・オーナーらならば、これを問題とは感じないはずだ。特に、このブレーキの強力な制動力を考えれば。

様々なタイプの道路において、LE60の才能と落ち着きぶりは目を見張るものがある。「調節可能な」電動パワーステアリングはまだ最終調整中だ。回転の中程に少し一貫性のない軽い部分がある。しかし数回のコーナリングで慣れれば、そんなことはどうでもよくなる。ステアリングは、フロントエンドのコーナリング性能に完璧に対応している。

LE60は、美しく素晴らしいクラシック的な走りで、まさに才能に溢れている。多くの現代のパフォーマンスカーのようなズレを感じることはない。リミテッド・スリップ・デフを装備し、ミシュラン製パイロットスポーツ4タイヤが装着されているため、ドライ路面でのトラクションは強大で、文句のつけようがない。MG社自身が開発を断念したコイルスプリング式ライブリアアクスルの位置は、フロントライン社の6リンク設計により完璧だ。その乗り心地と巧みなダンピングにより、LE 60は少々風変わりではあるものの、日常使用にも理想的な候補だと言えよう。



さて、実際にはどんな人がLE60を購入するのだろうか?価格が21万1200ポンド(4000万円弱)から、なおかつ製造は限定30台であるため、手に入れられる幸運な人の数は限られている。骨太のクラシックGTにスタイリッシュなパッケージングが施され、長年のテクニカル・サポートも提供される、というこの車の魅力が理解できる人々にとっては、他に代えがたい車だろう。


文:Simon Charlesworth

Simon Charlesworth

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