SF90の秘めたる性能を開花させた|フェラーリSF90 XXストラダーレ試乗インプレッション

EVO/ Aston Parrot

ウィング。「リアウイングがすべて」と言うと少し大袈裟かもしれないが、フェラーリの広報が、自社のプレス資料の中で伝説的モデルのひとつ「F50」(固定式ウィングを装備した最後のフェラーリ)の名前を挙げている時点で、最新のハードコアモデルのウィングに対する信頼性に自信があることがわかる。SF90 XXストラダーレは、「XXスカンクワークス」によって開発された初の完全ホモロゲーションストリートリーガルフェラーリである。2005年に設立されたエリートXXプログラムのエンジニアリング理念を応用し、ホモロゲーション外のローリング・ラボが設立され、そのすべてが後のフェラーリ・ロードカーの開発に一役買っている。

通常のSF90 ストラダーレは、フェラーリお馴染みのツインターボV8とトライモーター・バッテリー・エレクトリック・システムを組み合わせた超高性能ハイブリッド全輪駆動ミドシップ・スーパーカーで、1000bhpという驚異的なパフォーマンスを発揮する。フェラーリにとってこのモデルは、トップクラスのスーパーカーに匹敵するハイパーカー・パワーを提供するという点で、革新的なマシンであった。

XXスペックへの変更により、SF90はその秘めたる性能を開花させ、より強烈なドライビング・エクスペリエンスを実現した。ハイダウンフォースのカーボンファイバー製ボディワーク、パワートレインとアクティブエアロを制御する先進のエレクトロニクス、トラクション、スタビリティ、ブレーキシステムを満載したXXストラダーレは、並外れたテクノロジーを駆使し、街乗り可能なフェラーリとしては前例のないコーナリングとブレーキングを実現している。

エアロ性能に主眼が置かれているが、35kgの軽量化も達成されている。ただし、固定式リアウイングとその下に搭載される「シャットオフ・ガーニー」抗力低減システムによって質量が増加するため、正味のメリットは乾燥重量で10kg減という控えめな数値に抑えられている。

サポート性の高いシートに身を預け、ショルダーハーネスを下げると同時に、期待と興奮が高まる。エンジンはノーマルのSF90よりも高揚感をもって点火し、巧みなエグゾーストシステムがV8のよりまろやかで露骨なトーンをコッピットへと導く。本気だ。真剣勝負だ。という想いが伝わってくる。

XXの天才的なところは、フェラーリお馴染みの段階的なアプローチをドライビングモードに適用しつつ、その限界をより高く追求できるように昇華させていることだ。XXストラダーレは、メカニカルグリップとエアロダイナミクスグリップが融合する想像を超える領域にあなたを誘う。

SF90からのパワーアップ(30bhpアップ:V8から17bhp、電気モーターから13bhp)を感じるのは少し難しいが、パンチの効いたギアシフトは鋭く、最新のABS EVOエレクトロニクスで制御されるブレーキはセンセーショナルだ。XXのロール率は10%ほど低減されているが、完全にフラットではないので、フロントエンドのグリップが限界に達すると、横方向の荷重が増加し、最終的には解消されるのを内部のジャイロで感じることができる。

そして自信を持ってスロットルを操作できるようになると、フェラーリのエレクトロニック・サイドスリップ・コントロールのおかげで、テールは自由自在にスライドさせることも可能だ。XXストラダーレがガソリンと電気のパワーをフロントとリアの両アクスルで制御していることを考えると、その卓越した性能には驚きを隠せない。



もどかしいことに、今回の試乗では発売スケジュールの関係と、気温が低すぎることが理由で、私たちはフェラーリXXシリーズ初のロードカーを公道で運転することはできなかった。レーシーな見た目とは裏腹に、フィオラノの平滑な場所以外でも輝きを放ちそうな気がするのだが、楽しみは次回に取っておこう。

素晴らしいものを手に入れるためには、それなりのコストが伴う。SF90 XXストラダーレはオプション装着前で67万3584ポンド(約1億2700万円)。XXスパイダーもあるが、価格はまだ明らかにされていない。生産台数は前者が799台、後者が599台限定。既にソールドアウトだ。


文:Richard Meaden 写真:EVO/ Aston Parrot

Richard Meaden

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