日本の有名フェラーリ・コレクターが所有していた、アウディ・スポーツクワトロがオークションに

Kris Clewell ©2023 Courtesy of RM Sotheby's

アメリカ・アリゾナ州で開催される「アリゾナ・カー・ウィーク」に併せ、来る1月25日にRMサザビーズがクラシックカー・オークションを開催する。このオークションに気になる車両が出品されていた。1984年式アウディ・スポーツクワトロだ。



この車両は、2015年に同じくRMサザビーズに出品されたもので、当時40万1500ドルで落札されて話題になったもの。2015年時点での走行距離はわずか8300kmで、その際は「ワンオーナー」という触れ込みだった。ボディカラーはアウディ・スポーツクワトロでは希少な白。内装はグレーとグレーを基調としたオシャレな組み合わせになっている。



アウディ・スポーツクワトロは言わずもがな、グループB車両としてWRCに参戦すべく開発されたホモロゲーションモデル。FIAによって200台の新車生産が義務づけられていたが、スポーツ・クワトロは214台が生産されたという。ドイツのコーチビルダー、バウアーによって生産されたモノコックボディは、いわゆる“ビッグ・クワトロ”よりも320mmホイールベースが縮められ(BピラーとCピラー間で)、軽量化のためにグラスファイバーやケブラーが多用された。



直列5気筒エンジンは、クワトロよりも若干排気量が減り2133ccとなった。フロントノーズの軽量化を図るためエンジンブロックとシリンダーヘッドはアルミ製で、ボーグワーナー製のKKKターボチャージャーとラリー走行に耐えうる大容量のインタークーラーを装着。最高出力306ps/6500rpm、最大トルク350Nmは1270kg(アウディ公式数値)の車両重量には十分だった。





なお、4WDシステムはクワトロ同様、3構成のディファレンシャルギアになっており、センターおよびリアはドライバーの操作でデフロックが可能。1984年の数値で0→100km/h加速4.8秒、最高速度250km/hは、さぞ異次元の性能だっただろう。新車時の車両価格は20万マルクで、当時の日本円換算で1700万円ほど。



この車両は、RMサザビーズの出品車両解説において「神戸在住の日本人コレクターが所有していたものがアメリカに渡ったもの」と記されている。この日本人コレクターとは、日本を代表するフェラーリ・コレクターのひとりであり、著名なコレクターが新車から所有してきたなら、“相応”なメンテナンスやケアが施されてきたことを連想させるための売り文句であろう。

ソニー製のカーTV、今となっては懐かしい「ダイバーシティアンテナ」、定期点検の時期を知らせるステッカー、車検ステッカーまでもが“そのまま”の状態が保たれてており、日本から輸入されたことを如実に物語っている。







歴代オーナーが保管してきた写真や書類(輸送書類、請求書など)の参考資料によると、当該車両の履歴はハッキリしている。歴代オーナーによる修理明細どころか、日本人コレクターがスポーツ・クワトロを売却した際の契約書まで揃っているのだ。ちなみに2011年1月に日本で発行された輸出抹消仮登録証明書では、この車両の初年度登録が1994年3月となっている。新車で購入してから動態保存し、10年後に新規登録したのか、はたまたどこぞに眠っていたスポーツ・クワトロの“デッドストック”を1994年に購入して新規登録したのかは不明だ。



現在の走行距離は8806kmで、前回のオークション出品時から300kmほど増えている。予想落札価格は57万5000ドル~70万ドル。現在の為替レートで日本円換算すると、8340万円~1億150万円だそうな…



文:古賀貴司(自動車王国) Words: Takashi KOGA (carkingdom)

古賀貴司(自動車王国)

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