見るも無残な「ボコボコにされた」カウンタック。映画『WOLF OF WALL STREET』主役級2台のオークションの行方に注目!

Bonhams

以前、octane.jpにて映画「ウルフ・オブ・ウォールストリート」に登場したランボルギーニ・カウンタック25thアニバーサリーがRMサザビーズ(ニューヨークにて12月8日開催)に出品されていることを取り上げた。一方、11月28日にはアブダビにてボナムスが映画において最も露出時間が長かった“ボコボコになった”カウンタック25thアニバーサリーを出品している。



マーティン・スコセッシが監督した「ウルフ・オブ・ウォールストリート」はレオナルド・ディカプリオ、マーゴット・ロビー、ジョナ・ヒル、マシュー・マコノヒーが出演する、ダークでコメディタッチの風刺映画である。ディカプリオ演じるカリスマ株式ブローカー、ジョーダン・ベルフォートが、1980年代から90年代にかけてウォール街で非倫理的で詐欺的な行為を通じて富と権力を築き上げた実話を描いている。映画はベルフォートの贅沢なライフスタイル、金融スキーム、そして最終的な没落を暴露したもの。なお、映画の中で最も多くの罵詈雑言が登場する作品としてギネス世界記録を樹立している。

そんなウルフ・オブ・ウォールストリートには2台のランボルギーニ・カウンタック25thアニバーサリーが用意されていた。1台は無傷な状態を撮影するため、もう1台はボコボコになった状態を撮影するために…。無傷な状態の撮影を終えてから、ボコボコな状態に“仕上げる”とか、ボコボコな状態のカウンタック25thアニバーサリーはレプリカで撮影する、という生ぬるいことはしないのが、巨匠が巨匠と呼ばれる所以。



映画に登場するカウンタック25thアニバーサリーのハイライトといえば、レオナルド・ディカプリオ演じる主人公、ジョーダン・ベルフォートが薬物の影響下で運転するシーンだろう。ベルフォートが雇った探偵から自宅にFBIが盗聴器を仕掛けた、との報告を受け、最寄りの公衆電話から折り返すことになったベルフォート。カウンタック25thアニバーサリーで向かった先は、地元のエリートたちが集うカントリークラブだった。

ただ、ベルフォート、探偵からの報告を貰うまで親友でベルフォートの証券会社で副社長を務める、ジョナ・ヒル演じるドニー・アゾフと「クエールード」と呼ばれる鎮静睡眠薬(かつては合法、1980年代には濫用の危険性から禁止薬物に指定)を摂取していた。カントリークラブまでの道のりは”正常”に運転できたベルフォートだが、公衆電話で探偵と喋りはじめてからクエールードの作用が表れた。呂律は回らず、鎮静作用で身体に力が入らない。金融犯罪でFBIに狙われている身で、どんな些細な事件でも逮捕は避けたかったベルフォート。薬物の影響下ではあったが、とにかく自宅に戻ることを決意した。

ナメクジのような動きでかろうじてカウンタック25thアニバーサリーに乗り込むシーン、「神様、もう薬物はやらないので、どうか安全に家まで帰らせてください」と祈って帰路に着くシーン、R18+指定の映画としては爆笑できる。どうにか自宅に辿り着いたとき、カウンタック25thアニバーサリーは無傷だった、…と薬物の影響下にあったベルフォートは思い込んでいた。しかし、数時間後、警察がベルフォートの自宅に現れ、「器物損壊(当て逃げ)」で逮捕された。

自宅を出たベルフォートは、ボコボコになったカウンタック25thアニバーサリーを目の当たりにする。映画ではどのように傷がついたか回想するシーンが流れるのだが、これまた実にコミカルに仕上がっている。現実にはカウンタック25thアニバーサリーではなく、M・ベンツSLクラスで事故を起こしたそうだ。ちなみに、自宅前シーンに映るパトカーが実は映画の舞台である1987年よりも新しい1998年以降に登場した、フォード・クラウンビクトリアであることに気づいた方はいるだろうか?





無傷なカウンタック25thアニバーサリー、実はリア・ウィングがなかっただけでなく、ヨーロッパ仕様の車両ゆえにフロントバンパーの形状が異なっていた。撮影時はボコボコなものから一時的に“移植”していたという。ボコボコの劇中登場時間3分以上、無事故車の登場はたったの16秒、とボナムスは強調して紹介しているのは、ボコボコなカウンタック25thアニバーサリーが真の劇中車と暗に示唆しているのだろう。なお、落札者には4着しかない、カントリークラブでのシーンでディカプリオが着ていた衣装(靴もセット)、監督が撮影時に座っていた椅子、ディカプリオとロビーのサイン入りクラップボード(いわゆるカチンコ)、撮影クルー専用のパーカー2着、そしてDVD2枚が付いてくる。





劇中車のオークション、しかもウルフ・オブ・ウォールストリートという名作のもの、というだけでも熱いのに、RMサザビーズとボナムスの出品車両“調達能力”の対決も面白く感じられる。どちらが高値で落札されるのか、この勝負を見届けようではないか。




文:古賀貴司(自動車王国) Words: Takashi KOGA (carkingdom)

古賀貴司(自動車王国)

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