ブリット350こそロイヤルエンフィールドである理由

Toru Hasegawa、Royal Enfield

ロイヤルエンフィールドが、新型車「BULLET 350」を発表した。120年以上続くブランドが、90年の長きにわたって継承し続ける「BULLET」の最新モデルとはいかなるものか。彼の地インド・チェンナイで、それに触れることができた。

インド・チェンナイにあるバラムバダガル工場内で行われた発表会。



ロイヤルエンフィールド(以下RE)は、いまやインドを代表する工業製品だ。1901年に英国で生まれ、1955年からインドでCKD(コンプリート・ノック・ダウン)車両の生産を開始。1967年に英国での事業がストップしてからもインドで生産を続け、REブランドは生き続けたのである。1995年よりインドのトラック大手アイシャー・モーターズ・リミテッドの傘下となり、ミッドサイズ(250cc~750cc)モーターサイクル・セグメントのグローバルリーダーを標榜し、躍進している。昨年2022年の総生産台数は83万台を超え、インド国内で稼働する3つの工場の生産規模は120万台を超えるなど、いま世界中の二輪メーカーがシェア拡大を目論む巨大なインド市場において、抜群の存在感を示している。



「BULLET 350(ブリット・サンゴーマル)」は、そのロイヤルエンフィールドの最新モデルだ。しかし単なる最新モデルではない。「BULLET」の名前は1932年に当時英国ブランドだったREのフラッグシップモデルとして登場。マン島TTやISDT(インターナショナル・シックスデイ・トライアル)などレースシーンで活躍するとともに、大陸横断など世界中のライダーの、冒険の旅の相棒として世界各地を駆け回った。

また1955年にインドで始まったCKD生産車両も「BULLET」だった。その後は小排気量車も生産していたが、アイシャー・モーターズ・リミテッドの傘下になってからは、生産車両を「BULLET」に一本化、RE=「BULLET」のイメージがここで決定的となる。さらに1990年代後半には40台の「BULLET」に乗った若者たちが、当時自動車やバイクで通過できる世界最高地点だったインド・ラダックにある峠カルドゥン・ラを通過、大きなニュースとなった。以来「BULLET」はインドにおけるツーリングブームの火付け役ともなった。REの工場があるインド・チェンナイで行われた新型「BULLET350」の発表会で、プレゼンテーションを行った首脳陣が皆、REはBULLETであり、BULLETはREだと説明した理由は、ここにある。





発表会にはアイシャー・モーターズのCEO シッダールタ・ラル、REのCEO B・ゴビンダラヤン、車体設計の責任者 マーク・ウェルズが新型「BULLET 350」をラインオフし登壇。またREのヒストリーアンバサダー ゴードン・メイがBULLETの歴史を語った。

その新型「BULLET350」は、じつに大らかなモデルだった。エンジンとフレームは、REの主要モデルである「CLASSIC350」「METEOR350」「HUNTER350」と同じ。それぞれクラシック、クルーザー、ネイキッドとキャラクター分けされていて、同プラットフォームを採用しながら異なる乗り味を造り上げている。新型「BULLET350」は、ビジュアル的に「CLASSIC350」に酷似しているが、エンジンの反応が穏やかで、その乗り味はより軽快だ。インドにツーリングカルチャーを根付かせたモデルの末裔であるなら、その仕上げも頷ける。

インド人ジャーナリストに話を聞くと、「BULLET」の名前はあまりにも偉大で、その新型車開発はREにとって大きなチャレンジだったに違いないという。しかし共通プラットフォームでありながらそのキャラクターを造り上げてきたREに新型「BULLET350」に賭ける強い信念を感じた。

Jシリーズと呼ばれる、RE の350モデル共通のエンジンとフレームを踏襲した新型「BULLET 350」

上級モデルには子持ちラインと呼ばれる、大小2本のピンストライプを燃料タンクにデザイン。4人のスペシャリストによって、すべてハンドペイントされている。







90年の歴史をまとめたブリット・ミュージアム




バラムバダガル工場の一角に、歴史的車両や関連車両などを展示した、90 年の歴史を誇るBULLETシリーズのミュージアムも披露された。一般客が入れない工場内に設置されたことから、我々メディア関係者のほか国内外のディーラーなどに披露することが目的と思われる。恒久的な設置ではないだろうが、その規模の大きさにRE の気合いを感じる。


文:河野正士 写真:長谷川徹 Words:Tadashi KONO Photography:Toru Hasegawa、Royal Enfield

文:河野正士

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