クラス随一のパワーを誇るアストンマーティンDBX707をFSWで試す!

Aston Martin

アストンマーティンDBX707を富士スピードウェイで試乗できると聞いて、密かに期することがあった。それは「クラス随一のエンジンパワーを誇るDBX707だったら、サーキットでオーバーステアを引き出せるのではないか?」というものだった。

いやいや、公道を走るための車でドリフトができるかどうかなんて、本筋の話でないことは百も承知。それでも、アストンマーティンが作る特別なSUVのDBX707であれば、そんな“余技”を備えていることがオーナーの「密かな喜び」につながるのではないかと思い、是非とも試してみたかったのである。

ノーマル550psのDBXに比べて開口部が大きくなっているDBX707のフロントグリル。これは冷却効率を考慮した上でデザインでいる。バンパー両サイドのインテークもノーマルよりも拡大していて、ここはブレーキの冷却も兼ねている。

これには伏線があって、イタリア・サルディーニャ島で行なわれた国際試乗会に参加した際、ハーフウェットのワインディングロードでテールがアウトに流れる経験をしていたのである。「あのときは雨が降っていてたまたまグリップが失われたのか、それとも適切にドライビングすればドライの路面でもオーバーステアに持ち込めるのか?」 富士スピードウェイでの試乗が、この疑問を解消する絶好のチャンスであるように思えたのだ。

サーキットでの走行フィールはSUVという概念を完全に超えたもの。707馬力のパワーは圧倒的だが、一方でとても扱いやすく乗りやすい。

試乗のスタイルはレーシングドライバーに先導されての、いわゆるカルガモ走行だったが、幸いにも腕利きドライバーたちのペースは驚くほど速く、2周目のメインストレートでは最高速度が早くも270km/hを越えたほど。「これはいけるかもしれない」 そんな手応えを掴んだ私は、走行モードをスタンダードなGTからスポーツへと切り替えた。

タイヤサイズはフロント285/35ZR23、リア325/30ZR23。ブレーキはフロントにφ420mm、リアにφ390mmのカーボンセラミック・ベンチレーテッドディスクを装備。3020㎏の車重をしっかりと止めてくれる。

これだけで足回りがぐんと踏ん張るようになり、コーナーでの過大なロールが抑制されるようになった。おかげで、それまでよりもペースを一段と上げられたが、どうスロットルワークを工夫してもオーバーステアにはできない。テールが流れ出す前にスタビリティコントロールが作動し、安定した姿勢をシステムが自動的に取り戻してしまうからだ。

ここでふと思い出したことがあった。「たしかサルディーニャでオーバーステアになったときも、ドライビングモードはスポーツ+だったはず」 そう思った私は、センターコンソール上の大ぶりなダイヤルをひねって、スポーツ+を選択。次のラップへと進入していった。

ノーマルのDBX V8に比べて最も異なるのがコンソールセンターにある走行モード切り替えだがダイヤル化したこと。走行モード切り替え機構であるダイナミックドライブモードは「GT Sport」「Sport+」モードでもローンチコントロールが使用できるようになっている。

高速コーナーのAコーナー、100R、そして300Rでも安定したコーナリング姿勢を保っていたDBX707のテールがジワリと流れ始めたのは、中速ライトハンダーである第13コーナーのエイペックスに近づいたときのこと。路面に逆向きのカントがついたこのコーナーではしばしばオーバーステアが引き出せることを知っていた私は、慎重にスロットペダルを踏み込めばリアのスライド量がジワリと増えることを確認すると、自分がオーバーステアをコントロールしている確かな実感を味わったのである。

そこからコーナー出口に向けてステアリングを戻していけばオーバーステアは滑らかに解消されていき、次のGRスープラ・コーナーに向けてDBX707は鋭い加速を開始した。

駆動力のかけ方でオーバーステアの度合いを調整できるのは、DBX707の4WDシステムが後輪駆動に近い状態まで駆動力を配分できるからといって間違いない。いわゆる前輪駆動ベースの4WDでは後輪に50%以上のトルクを配分することは基本的にできないが、後輪駆動ベースのDBX707であれば、これが可能。さらに、リアアクスルに搭載された電子制御式のe-Diffが強力なトラクションを生み出すことで、コントローラブルなオーバーステアを引き出せるのだ。

エンジンは3982ccV型8気筒DOHCガソリンターボを搭載。組み合わされるトランスミッション9段AT。最高出力は707ps / 6000rpm、最大トルクは900Nm / 2750 - 4500rpm。0-100km/h 加速は3.3秒となっている。

流麗なスタイリングにラグジュアリーなインテリア、さらにはアストンマーティンのバッジと誇れるアイテムが数多く揃っているDBX707だが、スーパースポーツカーばりのハンドリングもまた、DBX707の誇れるアイテムといっていいだろう。



ホイールベースが3060㎜もあるため直進安定性が高く、一般路での乗り心地は良い。前後シーと共にホールド性に優れていてサーキットでもしっかりと走行することができる。

文:大谷達也 写真:アストンマーティン
Words: Tatsuya OTANI Photography: Aston Martin

文:大谷達也

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