ジャガーCタイプでも、Cタイプのレプリカでもない「エキュリー・エコッス LM-C」とは

Octane UK

物事は見た目通りだとは限らない。これはジャガーのCタイプでも、Cタイプのレプリカでもない。エキュリー・エコッス LM-CはCタイプと似たスタイリングを持っているが、あらゆる点で異なっている。最も異なるのは全幅が4インチ広く、全長が8インチ長い点だ。

ヘンリー・オン・テムズで生まれ変わったエキュリー・エコッスでは、5台のLM-Cが製造されている。2台は完成済み、1台は進行中で、残りの2台も着手予定(取材当時)だ。この車のカムカバーにはメーカー名は書いていないが、インジェクションを搭載した直6の4.2リッターエンジンに、トレメックの5段ボックスが組み合わされる。

正直言って、ジャガーのエキスパートでなければ、これがインスパイアされた車両ではないとは思わないだろう。ダッシュボードとドアパネルがフルレザーで縁取られ、エキュリー・エコッスのロゴが入ったユニークなメーター、そしてドアジョムにあるモダンなトランスポンダースイッチに気づくまでは、である。コクピットの広さは、本物のCタイプで旅をしたことのある人なら、うれしいサプライズになるだろう。



私は幸運にも2014年のミッレミリアに参加することができたのだが、さらに幸運なことにLM-Cを実際に運転する機会を得ることができた。

「この機会に、いくつかのラインをすっきりさせました」とエキュリー・エコッスのMDであるクリス・ランドールは語っている。

「もちろん、IVA(Individual Vehicle Approval)の要件を満たすためにライトユニットを統合する必要がありました。コクピットの幅を4インチ、ボンネットの幅を8インチ拡大したのとはわけが違うのです」

パネルのフィット感と仕上げは素晴らしい(ボディはコヴェントリーで超形成合金から製造されている)。乗り降りの際はドライバーシートの後ろにあるカウルに体重を預け、足を下ろす必要があるが、本物のCタイプよりも多少は乗り降りがしやすくなっている。



LM-Cのコクピットは、1950年代のものよりも明らかに豪華だが、時代錯誤的な印象はない。「Crank」と書かれたノブを引くと、数秒後にエンジンが始動する。これは、燃料噴射のECUマッピングに意図的に組み込まれたもので、より古い時代の雰囲気を出すためのものだという。

アイドリングは1950年代のホットロッドに搭載される4気筒のような印象だ。ラウドなサイドエグゾーストも相まって、正直LM-Cはあまりに派手すぎるし、滑らかに発進するには相当な回転数を必要とする。2014年のミッレミリアでは、中世のイタリアの町の通りをゆっくりと進まなければならなかったため、1953年のCタイプの方がはるかに扱いやすかった。LM-Cでそこまで静かに走るのは難しいのだ。

クリス・ランドールは、ここに改善の余地があることをよくわかっている。
「この種の燃料噴射装置を取り付けたのはこの車が初めてではないのですが、これまで使っていたカムよりも高温のカムを採用しているんです。マップを作り直したところ、すでに50%ほど良くなっています」と彼は私に語った。

フューエルインジェクション(この場合、ボッシュの部品とライフレーシングのF88 ECUをベースにしたもの)を採用したことで、LM-Cのエンジンは300bhpを発揮しながら無鉛レギュラー燃料で走行できる。クリスによれば、この車の最高速度は157mph、0-60mphのタイムは5秒程度だそうだ。

ヘンリー周辺の道路では、その半分の速度を出すこともできないだろうが、5秒というタイムは嘘ではないだろう。レブカウンターの針が3000rpmを超えると、LM-Cは「やけどした猫」のように加速する。弾けるように速く本格的なレーシングカーのような咆哮を発し、下の回転数ではやや物足りなさもあるが、適度にレースカーの雰囲気を醸し出している。トレメック製のミッションも、1950年代のモス製ボックスと同じような重さと操作性を持っている。

さらに言うと、LM-Cはハンドリングと乗り心地も素晴らしい。本格的なヴィンテージのようなフィーリングがあり、鉄のグリップを握るのではなく、手のひらで優しくホイールを浮かせているような感覚だ。本当に楽しい…。車の乗り心地も非常によく制御されている。決してハードではなく、柔軟すぎることもない。唯一注意が必要なのはブレーキだ。完璧に機能するもののアシスト機能は装備されていないため、突然直列6気筒の300馬力を制御しなければならない場合はよく注意する必要がある。タイヤも同様だ。路面が完全に乾いていない場合、アクセルを踏み込むと簡単にお尻が滑り出してしまう。

しかし、それも魅力のひとつなのだ。この車は本当の意味で "運転 “をしなければならない。今回新たなクラシックカーを試すということで、そこまで乗り気ではなかったのだが、帰りにはすっかり元気をもらって、夢中になってしまった。そして、43万ポンド(約7200万円)+税という価格も、決してバカ高いとは感じない。私だって、買えるものなら間違いなく欲しい1台だ。


文:Mark Dixon

文:Mark Dixon

無料メールマガジン登録   人気の記事や編集部おすすめ記事を配信         
登録することで、会員規約に同意したものとみなされます。

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

RANKING人気の記事