どちらが好み? フェラーリ365GTC/4とランボルギーニ・エスパーダを乗り比べ!

Dean Smith


シートは超快適で、後席も十分にスペースが確保されている。2ドアではあるが、エスパーダは大人4名が快適に座れる。エンジンをかけると、エスパーダのもうひとつの個性が顔を出す。アイドリング時のV12サウンドはそれほど大きくなく“ジェントルマンズエクスプレス”の理想に沿ったもの。だが低速域では“まとまり”のなさを感じさせるのは残念だが、20mphを超えたあたりから大きな変化が訪れる。ステアリングは軽くなり入力に対して正確に応えてくれるし、ギアチェンジもしやすくなる。



その昔、エスパーダがとんでもなくワイドな車に感じられたことがあるが、今となってはちょっとしたハッチバックのほうがワイドになっている。荒れた路面でも轍にとらわれることはなく、ステアリングの入力には正確に反応する。多くの人が真っすぐ走らない先入観を持ちがちだが、路面をしっかり掴んで走ってくれる。カリカリになって走らせる車ではないが、運転するとボディサイズが“小さく”なるような塊感があって思いのほか俊敏である。

アクセルペダルを踏み込むと、V12エンジンの強烈な咆哮にうっとりする。回転を上げると、戯れるような吠え声から野性的な吠え声まで、さまざまな音域を聴かせてくれる。それだけでエスパーダを所有する価値がある。ブレーキもこの年代にしては上出来で、ペダルフィーリングも優秀だ。スイッチ類が無造作に配置されているのは不可解に感じる点だが、実に魅力的な車である。



試乗した365GTC/4は英国で販売された31台の右ハンドル仕様の1台で、オーナーは「現代の車と同じように走れる」と口にした。そのとおりかもしれないが、エスパーダとは違う。イグニッションキーを回しても、エスパーダのようにサラウンドサウンドのファンファーレが鳴り響くわけではない。エンジン音はどことなく威厳がある。もちろん、ブリッピングしてやると、目を見張るような轟音が響くのだが⋯。ロングトラベルのスアクセルペダルは硬め。なお、V12エンジンには6基のツインチョーク・ウェバーが搭載されている。運転してみると、GTC/4は“お行儀が良い”という点で大人しく感じてしまう。

油圧式ステアリングは低速域で大きな力を発揮し、加速は特に無理することなく鋭い。加速中にスピードボートのようにノーズが上がったり、テールが沈み込んだりといった劇場的な感覚に欠けている。エンジンの美しい音色の高まりと、車速が正比例している雰囲気が漂っている。V12エンジンは素晴らしく柔軟で、ギアチェンジはエスパーダほどではないにしろ正確だ。



最大トルクは317lb-ftもあるので、ギアチェンジを頻繁にする必要はなく、5速でもグイグイ加速してくれる。この時代のフェラーリは、ほかのエキゾチックモデルと比べると、とにかく運転がしやすい。車はキビキビと曲がり、挙動を把握しやすいのだ。直進走行中にステアリング修正をする必要もなく、高速走行時の安定性は高く評価できる。

ブレーキにはベンチレイテッドディスクが採用されており、ペダルフィールリングも優秀だ。GTC/4がよい意味で古さを感じさせるのは、乗り心地かもしれない。もちろん、段差は感じさせるし、段差を越えた際に音も聞こえるが、柔らかめの乗り心地に仕上がっている。そして、長距離を走ることが想像できるGTカーらしさを感じさてくれる。

エスパーダよりいい車かどうか、それは答えようがない質問かもしれない。GTC/4は優れたオールラウンダーであり、クラシックGTの名に恥じない。生産台数が少ない稀有な存在であるし、過小評価されたフェラーリでもある。しかし、エスパーダは宇宙船のような奇抜なルックスに惹かれてしまうし、笑顔をもたらしてくれる。

フェラーリは頭にも心にも訴えかける車である。一方、ランボルギーニは意味がないはずなのに、世界一意味があるという稀有な偉業を成し遂げている。良くも悪くも、エスパーダは唯我独尊である。だからこそ愛されるのだろう。


編集翻訳:古賀貴司(自動車王国) Transcreation:Takashi KOGA (carkingdom)
Words:Richard Heseltine Photography:Dean Smith

古賀貴司(自動車王国)

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