ミウラとウルスとブラック・サバス|伝説のギタリストを魅了した、2台の青いランボルギーニ

(C) Alex Lawrence and Kidston SA

ロックスターには車が似合う。それもとびきりクールな車がお似合いだ。伝説のモンスターバンド、ブラック・サバスのギタリストであり「リフマスター」のトニー・アイオミは長年にわたりランボルギーニに魅了されてきた。アイオミはブラック・サバスで唯一のオリジナルメンバーで、当時のフロントマンのオジー・オズボーン、ベースのギーザ―・バトラー、ドラムのビル・ワードと共に、後に「ヘビーメタル」と呼ばれるサウンドの原型を作り上げた。ブラック・サバスは1968年に英国の工業都市バーミンガムで結成、アルバムの売り上げは1億枚を超え、ツアーで巡った世界中のスタジアムは数知れず、ファンを魅了し、幾世代ものロックバンドに影響を与えてきた。ヘビーメタルというジャンルの轟音を響かせるギターサウンドを生み出した一人であるアイオミが、イタリアのサンタアガタ・ボロネーゼが誇るランボルギーニのファンであることは必然といえるだろう。

アイオミはインタビューで、ランボルギーニへの情熱はバンドが最初にブレイクしたときまで遡ると明かしている。1970年代に2台のランボルギーニ・エスパーダを乗り継ぎ、ミウラSVも購入している。

(C) Alex Lawrence and Kidston SA

アイオミが購入したミウラSVは、1972年のバーミンガム・モーターショーに展示されたシャシーナンバー「4814」そのもので、モーターショー終了直後に彼のもとへ納車された。9台しか生産されなかった右ハンドルのミウラSVのうちの1台である。ボディカラーはシエロ・アズーロ(スカイブルー)で、この色のミウラSVは2台のみという希少なモデルだ。さらにA/C、リミテッド・スリップ・デファレンシャル、スプリット・サンプという“究極のスペック”を備えたヨーロッパ仕様である。

(C) Alex Lawrence and Kidston SA

(C) Alex Lawrence and Kidston SA

「当時は速くて洗練された車が少なかったため、ミウラSVは自分にとって、とても心浮き立つ存在でした。夜遅い時間にミウラで帰宅するときには、近所の人には迷惑だったかもしれませんね。ミウラはとても大きな音を轟かせていましたから!」と、2016年のインタビューでアイオミは語っている。

そんなアイオミのもとに最新のランボルギーニ・ウルスがやってきた。「私はウルスに惚れ込んだのです」と彼はコメントしている。レスポンスの良さ、そしてサイズからは想像できない走りに感銘を受けた。そしてボディカラーは自身が当時夢中になっていたブルーを選んだという。



世の中の流行に迎合しようとするバンドが多い中で、ブラック・サバスは50年以上にわたるキャリアを通じてその確固たるアイデンティティを守り続けている。己が信じる価値観を大切にしている。革新を求め、改善は行いながらも、「パワーとサウンド」を維持し続けているところはブラック・サバスとランボルギーニの共通項かもしれない。

「バンド結成以来、自分たちがやるべきこと、信じていること、好きなことにずっとこだわり続けてきました。流行っているからといって自分のスタイルを流行に合わせて変えたことはありません。世の中が常に変化する中で、バンドも流行に乗ったり、時代遅れになったりしました。それでも決して妥協せず、さらに大きくなってカムバックを果たし、スタジアムを再び観客で埋め尽くしました。最高でしたね!」



「ヘビーメタルというジャンルを誕生させ、メタリカや、デイヴ・グロールのフー・ファイターズなどのバンドにインスピレーションを与え、彼らが独自のスタイルを見つけるきっかけとなってきました。音楽は時と共に変化するものですが、ブラック・サバスはほぼ変わっていません。それがブラック・サバスだからです。自分が関わることについて、自分の中の「何か」、それを演奏するのです。長年の間にスキルは上がりましたが、当初からあった『何か』はそのままです。同様に、ランボルギーニも常に革新を求めていますが、一方、他に類を見ないパワーと独特のサウンドは常にそのままです」

彼にとってギターは単なる楽器ではなく、彼の芸術をステージで表現するのに不可欠なものである。「トップフレットまで手が届くようにいつもダブルカッタウェイのギブソンSGを使っていましたが、しかしギブソンは標準では21フレットまでしかないのです。なので、私はギターの会社を買い、彼らが(さらに高音が出る)24フレットを作ってくれたのです。使いやすさとサウンドの観点からデザインに直接関与し、自分の理想に合わせてギターを調整することは素晴らしいと思います」

アイオミはまた、パンデミックにより訪れた時間も楽しんでいるという。ひとつのところに留まることすら「50年間、世界中を旅してきたので、このように同じ場所に留まることも悪くないと思っています」「しかし、再び旅に出られる日が来たら、ドーセットの海沿いにあるサンドバンクスの家までウルスでドライブしたいですね」と語っている。



それまでの間、アイオミは曲を書いたりレコーディングをしたりしているという。また、オジー・オズボーンのような古くからの友人と連絡を取り合っているそうだ。「私たちは毎週または2週間に1回程度、互いにメールでやりとりしています。電話はあまり得意ではないので。音楽や何かについてあれこれ話すこともありません。なぜなら、私たちはもう十分やり尽くしていますから!」



文:オクタン日本版編集部 写真:Alex Lawrence and Kidston SA/Lamborghini

オクタン日本版編集部

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