現実的な値段で手に入るV12 フェラーリ?都心でも「飼える」2台のサラブレッド

Photography:Paul Harmer

V12フェラーリを夢見ない人はいないだろう。だが、大変残念なことにそれはどれも非常に高価である。その中でも比較的身近で、かつ都会でも"飼える" 2台のサラブレッドに試乗した。

紳士たるもの、いや淑女ももちろん、一度はV12エンジンの真髄を経験すべきである。上品で洗練され、パワフルで朗々とした美声を持ち、また同時にずば抜けて静粛なV12エンジンは自動車エンジニアリングの極致といえる。それがロールス・ロイス製でもキャデラックでも、あるいはジャガーやランボルギーニのものでも、V12エンジンは内燃機関の特別なクラスに属している。
 
エンツォ・フェラーリの名前を冠した最初の車は1947 年の125Sだが、それは宝石のような1.5リッターV12 エンジンを搭載していた。ジョアッキーノ・コロンボが設計したエンジンは史上最高のV12 のひとつといわれている。フェラーリはその後もコロンボの傑作エンジンを進化させ続け、166 バルケッタから250カリフォルニア・スパイダー、250GT SWB 、250GTO 、そして365GTB/4デイトナに至る偉大なスポーツカーに搭載してきた。素晴らしいコロンボ・ユニットは40年以上にわたって受け継がれ、多くのコレクターはそのV12フェラーリをとりわけ称賛している。そう、"本物"のフェラーリはV12エンジンを搭載すべきであり、それもできればフロントに積んでいることが望ましいのである。
 
ただし、そこに難関が立ちはだかる。フロントエンジンのV12フェラーリは常に少量しか生産されず、それゆえに貴重で価格は天文学的、ほとんどは百万ポンドの単位で取引されており、大多数のエンスージアストにはまったく手が届かない。しかしながら、ここに紹介する2 台、すなわち1972年365GTC/4とシリーズの最終型である1989年の412は、本当のV12モデルでありながら、比較的現・実・的・な値段で手に入る稀なフェラーリである。もちろん、"安物"のV12というわけではない。フェラーリはどれも特別だ。
 
この2台はいわば守旧派であり、年月とともに旧式化するのが避けられない電子制御機器をほとんど採用していない。どちらのV12エンジンも本質的にコロンボの傑作ユニットの末裔に当たるが、強靭なタイミングチェーンのおかげで、数年ごとにタイミングベルトを交換する必要はない。また365GTC/4はウェバー・キャブレターを備え、いっぽうの412は、クラシック・メルセデスやVWなどと同じボッシュKジェトロニック燃料噴射システムを装備している。したがってラップトップに頼ることなく、ほぼ工具、すなわちドライバーだけで調整可能というわけだ。
 
ボンネットに跳ね馬のバッジが輝くこの二台は、最も洗練され、最もエレガントなV12搭載のGTカーである。GTとは一般的に「グランツーリスモ」を意味するが、ここでは"ジェントルマンズ・ツアラー"と読み替えたほうが相応しいかもしれない。365GTC/4は1971年から1年半にわたって500台だけが生産された。それゆえに有名な兄弟と言うべき365GTB/4デイトナよりもずっとめずらしい。常に比較されるデイトナは1968年から73年までの間に1284台が造られているのだ。



ピニンファリーナのフィリッポ・サピーノが描き出したGTC/4は、デイトナよりもシャープなエッジと低いボンネットライン、切り落とされたカムテール、リトラクタブルヘッドライトを特徴としていたが、マットブラックの樹脂のノーズコーンと同様のリアバンパーについては意見が分かれた。もっともこの車の場合は、ダークブルーのボディカラーが黒いバンパーとマッチしている。この種の車はボディカラーに大きく印象が左右されるが、この色合いはベストな選択だろう。

編集翻訳:高平高輝 Transcreation:Koki TAKAHIRA Words:Robert Coucher Photography:Paul Harmer

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