超絶ハードなスーパーカーF40 LM |ミケロットの味付けを試すチャンス!

Wolfango Spaccarelli ©2022 Courtesy of RM Sotheby's

1980年代を代表するスーパーカー、フェラーリF40は、発表された当時からセンセーションを巻き起こし、現在に至るまで世界的なアイコンとしてスーパーカーの世界に君臨している。この車はもともとレース用ではなかったが、多くの人がそのポテンシャルを見出した。そこでフェラーリはミケロットを頼り、IMSAのルールに則ったレーシングカーを製作し、世界最速の市販車にレースで活躍する機会を与えたのだ。



ミケロットは19台のF40を手がけ、F40 LMと名付けた。イタリアン・スーパーカー選手権用に7台のF40 GTが、BPRグローバルGTシリーズ用に7台のF40 GTEが製作され、LMをさらに進化させた。前述のF40 LMのGTやGTEが登場したことで、ロードカーとして誕生したF40の多くがレース用に改良された。今回RMサザビーズ主催のオークションに出品されたF40も、そのうちの一台だ。

シャシーナンバー80782は、元々「ノンキャット、ノンアジャスト」の初期型F40として製作され、1989年11月にマラネロで完成した後、オランダのフェラーリ正規輸入代理店クロイマンスBVに新車で納車された。この車はオランダに残り、ファクトリーから3年後、クロイマンスのレーシング部門であるカヴァリーノ・チューニングのピーター・ヴァン・エルプ氏によってレース用にリビルトされた。このとき、エンジンには手を入れられず、イントラックス社製の新型レーシングショックアブソーバーを装着したサスペンション、スタック社の計器システム、ブレーキ、ボディワーク(イエローに再塗装)などが変更された。

完成したF40は、オランダのブラリクムにあるダッチ・レーシング・プロモーションに売却され、H・W・テパ氏がオーナーとなった。1993年から1994年にかけて、テ・パスはダンクラン・ハイスマン、デビッド・ハートとともにレースに参戦した。



1995年、シャシー80782はレースでの競争力を維持するためにさらなる改造が施された。この作業はイギリスのG-Tex社によって行われ、ウィル・ゴラップが監督した。ロールフープのアップグレードやエアジャッキの装着が施された。このとき、エンジンにも手が入り、出力を700bhp以上まで向上させられたと考えられている。資料によると、この作業が有名なレーシングショップであるミケロットとのコラボレーションで行われたようだ。その後、フェラーリ/ポルシェ・チャレンジに参戦するため、デビッド・ハートによってさらに改造されたこの車は、ハートとマイク・ヘゼマンによってドライブされ、1998年にもH・W・テパ、デビッド・ハート、バート・プログによって同シリーズに参戦している。

その後、1997年にフェラーリコレクターでレーシングドライバーのミシェル・オプリーに売却された。この車はフェラーリ348GTの後継車として、1990年代のフェラーリ・ポルシェ・チャレンジに参戦し、成功を収めた。オプリーはこの車にさらなる改良を依頼し、1997年から1998年の冬にかけて行われた。



この車はオプリーと共に、2006年までレースで活躍した。同年、車はイギリスのレーシングチームに売却され、2009年までレースが続けられた。前オーナーがいたこの車は、2019年に英国サリー州エポゾムのエリアス・エリア氏によって整備された。これには、サスペンションのクラックテスト、新しい燃料タンクの取り付けのほか、新しい消火器の取り付けも含まれていた。

現在のオーナーは、このF40を手に入れると、イタリアのマラネロにあるザナシグループに送り込んだ。ザナシグループはフェラーリのファクトリーのすぐ近くにあり、フェラーリのエクストラペイント、スーパーカー、テーラーメイド、アイコナシリーズなどのオフィシャルショップとして、60年近くフェラーリと深く付き合いのあるショップだ。



この車は、コスメティック・レストアの一環として、ボディは完全に分解され、素材むき出しの状態にされた。シートはエレクトリックブルーのファブリックで、ペイントされたスクーデリア・フェラーリの盾は、1960年代のスクーデリア・フェラーリのスポーツカーがイメージされている。同時に、この車はメカニカルな整備も施された。ザナシーでの作業の請求書は、総額12万3000ユーロ以上にもなる。現在では、セットアップにより700~1000馬力近くを発揮し、実にスリリングなドライビングエクスペリエンスを実現している。



275GTB/4や250GTルッソなど、フェラーリ黄金期を代表するロードゴーイングGTカーでも、レース参戦歴のある個体は稀であった。今日、レース参戦歴のある車は、最も価値のある車のひとつとされている。F40も同様に、ピリオドレースでの実績を持つ車は稀であるのだが、この車はそんな稀な車の一台だ。F40は、フェラーリが製造した最高のロードゴーイングGTモデルのひとつとして広く知られており、この個体は次のオーナーに実にユニークな機会を提供するだろう。魅力的な歴史と、ユニークで目を見張るようなコンフィギュレーションを持つこのF40は、コスメディカル、メカニカルの両面で他のモデルとは一線を画し、魅惑的なドライビングエクスペリエンスをもたらしてくれることだろう。

オクタン日本版編集部

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