「ボルボC40 Recharge」EVであることは、その魅力の一部に過ぎない

Masaya ABE


走り始めは穏やか、踏み込めばドーンと背中を押される加速




今回試乗したツインモーターモデルは、その名の通り前後にモーターが搭載され、408ps/660Nmという強力な出力を誇る。実際にやや重めのアクセルペダルを踏み込んでみると、そのスペックと裏腹に走りはじめは非常に穏やかだ。踏み込むにつれ自然にパワーが出てくる。もちろん踏み込めばドーンと後から押されるような猛烈な加速感を味わうことができる。ただし最大出力を発揮するのは70km/h以上で、AWDにもかかわらずリアタイヤの方が大きいなど、ボルボらしい配慮もなされている。

最近は意図的に「音」を演出したEVも出てきている。マツダMX-30はまるで直列6気筒のような心地よいサウンドを出すし、ポルシェタイカンのそれは空を飛ぶのではないかと思わせた。個人的には三菱アウトランダーPHEVの中高速域での2次曲線的に音階が上がっていく音(これは演出ではないかもしれない)はお気に入りだ。さて、ボルボは一体どのような音を聴かせてくれるのかと期待していたが、残念ながらC40 Rechargeはそのような取り組みはなされていなかった。ただしロードノイズや風切り音の侵入も少なく、静粛性はEVとして標準以上であることは付け加えておこう。


慣れればこの上なく便利なワンペダル


C40 Rechargeも電動車らしくワンペダル機能を搭載しているが、他社のような減速度の変更機能はなくオンかオフしかできない。そしてワンペダルの減速度はかなり高い。急に全閉にすると同乗者に驚かれるほどだ。とはいえ制御自体はとても洗練されているから、慣れればスムーズに扱えるだろう。停止時は3km/h以下で機械式ブレーキに切り替わるが、それをまったく意識させず非常にきれいに止まる。前述のようにアクセルが意外と重たいこともあって試乗中は思ったよりも手前に止まってしまうことが多かったが、それも慣れで修正できそうだ。

ワンペダルに慣れればアクセルワークだけで車を思い通りに操ることができる。そしてそのレスポンスの良さは内燃機関とは比較にならない。加減速の多い街中ならドライブアシスト機能としてイージーな運転を可能とするし、ワインディングや雪道などでは積極的な姿勢コントロールに貢献する。電動モデルならではの魅力だ。

ワンペダルオフの時はコースティング設定となり、アクセルオフでの回生ブレーキは作動しない。停止時にブレーキを離せばクリープする。停止時にホールドモードがないのはちょっと不便だと感じたが、こちらは主に高速道路での使用前提なのだろう。まあ高速であればワンペダルのままでもACCを使えば良いのだが。


2.1tの重さが乗り心地に与えた好影響は明らか




C40 Rechargeが搭載する78kWhの大型バッテリーは、長い航続距離と引き換えに、それ自体で500kgもの重量を持つ。したがって車両重量は2.1tを超える。そのことの是非はともかくとして、重さが乗り心地に良い影響を与えているのは明らかだ。どちらかというと薄味な印象を受けることの多い(乗り心地が悪いという意味ではない)ボルボのノーマルモデルにあって、C40 Rechargeは重厚感と軽快さのバランスが心地良い。

重たいバッテリーは低重心化と前後50:50の重量配分ももたらしたが、ステアリング特性は基本的には穏やかなボルボ流を引き継いでいる。ヒラヒラと動くような車ではないが、2段階ある設定の軽い方でも適度に手応えのあるステアリングを切れば鼻先はスーッと目標に向かい、その安定感は非常に高かった。


「不便」を乗り越えるだけの魅力がある




C40 RechargeはEVであることだけなく、今後のボルボが目指す方向を具現化した力作だ。スタイリッシュな内外装には普遍的な魅力があるし、乗ればEVらしい新鮮なドライビング感覚とボルボらしい仕立ての乗り味を味わうことができる。EVを日常使いするには、特に遠出の際にはまだまだストレスを感じることが多いのも事実だが、C40 Rechargeはその不便を乗り越えるだけの魅力を持つ一台ではないだろうか。


ボルボC40 Recharge Ultimate Twin Motor(2023年モデル)
ボディサイズ:全長4,440mm 全幅1,875mm 全高1,595 mm
車両重量:2,160kg
最高出力/最大トルク:408ps /660Nm
駆動用バッテリー容量:78kWh
航続可能距離:485km (WLTC)
車両本体価格:699万円(消費税込)

文:馬弓 良輔 写真:阿部 昌也 Words: Yoshisuke MAYUMI Photography: Masaya ABE

文:馬弓 良輔 写真:阿部 昌也 Words: Yoshisuke MAYUMI Photography: Masaya ABE

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