バーンファインドという言葉がある。納屋などで長期に渡り眠っていたものが見つかることを示す。今回の発見は、正に世紀のバーンファインドといっても過言ではない。
Sleeping Beauty
納屋というよりは、牛小屋と言ってもいいような小屋にずらりと並ぶ名だたる車。その一部は石造りの小屋に眠っており、とりわけ貴重な2台は、ガレージに保管されていた。とはいえ、老朽化の程度にさして変わりはない。緩やかな丘が続くフランス西部の美しい村にけだるく佇むシャトーの敷地内にひっそりと眠っていたのは、誰もが目を見張るにちがいない車のコレクションだった。その車の荒れ果てた状態が、この情景をさらにロマンティックな雰囲気に演出している。
人里離れた小屋で何かを見つけることはさほどめずらしいことではないが、全部で100台ものコレクションを発見することはそうあるわけではない。まして、フェラーリ・カリフォルニア・スパイダーやブガッティT57ヴァントー、マセラティA6G2000グランスポーツ・フルア、ファセル・ヴェガ・エクセレンス、タルボ-ラーゴやドライエなどのワンオフといった貴重な宝物を見つけることはさらに稀なことだ。コレクションの中には、亡きコレクターが自身で製作した見事なクーペもあった。これを世紀のバーンファインドといわず、なんといえばいいのか。
自動車博物館になるはずだった
「フランス空軍のメカニックだったロジェ・バイヨンは、第二次世界大戦後、トンネルを掃除するための化学薬品を工場からパリのメトロまで輸送するためのトラックを製作していた。1950年頃にこのシャトーを購入し、シャトーの向かい側の用地に自動車博物館を造ろうと車を集め始めた」そう説明してくれたのは、フランスのオークションハウスであるアールキュリアル社のピエール・ノビコフだ。今年のレトロモビルでは、このコレクションのうちの60台が同社が主催するオークションに掛けられた。私たちは、そのカタログを制作したピエールと、アールキュリアルのディレクターであるマチュー・ラムーアに同行し、シャトーから運び出される前にその全貌を見ることが叶った。
ロジェ・バイヨンの孫たちは、去年、父であるジャック・バイヨンが亡くなった後にアールキュリアルに連絡をしてきたのだという。
コレクションは、この名車が全盛期のころに建てられた数々の小屋に散らばって保管されていた。1970年中ごろまでには200台もの車が集まったものの、その後、バイヨンは主要な取引先を失い、倒産に追い込まれてしまった。銀行の債権回収により、1979年と1985年の二度にわたって車が売却されることになった。1938年のタルボT150LMが16万フランスフランで新しい所有者に引き取られるなど、数々の宝が「大勢の人であふれるオークションルームで売却された」と、自動車専門誌『LaVie de l’Auto(ラ・ヴィ・ド・ロト)』が1979年号で記している。
それでも114台が債権者たちの手から逃れ、シャトーで眠り続けることになった。シャトーの門を潜り抜けて、最初に目にとまった信じられない光景に息を飲む。さらに進むと、これは現実なのだと信じることができないほどだ。埃をかぶり、蜘蛛の巣が張ったコレクションの全貌は、アールキュリアルのウェブサイト(www.artcurial.com)に掲載されている。まずは、ここでそのコレクションの一部を堪能していただきたい。
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編集翻訳:伊東 和彦(Mobi-curators Labo.) Transcreation:Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:渡辺 千香子(CK Transcreations Ltd.) Translation:Chikako WATANABE (CK Transcreations Ltd.) Words:Glen Waddington Photography:Matthew Howell
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