小さいけれど、温かい。とても居心地のよい旧車クラブのミーティング

Tomonari SAKURAI

シトロエン2CVの分解世界一の記録を持つブブさんこと、ブルノさんからもらった情報。シュシー=アン=ブリという街で旧車クラブのミーティングがあると教えてもらった。その名もシュシー クラシック クラブ。パリの東方ヴァンセンヌから少しだけ東に行った街だ。

ヴァンセンヌ旧車クラブのように大きなクラブでないことは予想できた。会場はシュシーにある公園の一角で行われた。たしかに小さなミーティングだ。それでも車好きの集まりは変わらない。クラブを仕切るミッシェルさんが、この小さなクラブノミーティングをなぜ知ったのかと不思議そうに話しかけてくるほど。それでもヴァンセンヌ旧車クラブを話題に持ち出すると「決して負けていない!」と強気である。いまは冬の寒い時期で、またクリスマス前なので集まりが悪いだけだと、夏の盛況だった時のビデオを見せるほど。プライドの高いクラブなのだ。まあ、こちらはその規模を見に来たわけでもないので気にもとめていないのだけれど。とにかくこのクラブへの誇りと車好きであることは熱いくらいに伝わってきた。

先頭を飾るのは何の変哲もないルノー5。

MX5とMGBが並ぶ。

さて、集まった車に目を移すとルノー5やトライアンフにMG、どれも綺麗なコンディションだ。そして目にとまった一台、ローゼンガルト・スーパーサンクを眺めていると、そのオーナーがやって来た。1935年のローゼンガルト。1928年から1955年まで存在したフランスのブランドだ。シトロエンの技師だったルシアン・ローゼンガルトはオースチン・セブンのエンジンやシャシーを使って、車体だけをオリジナルに作るいわゆる「カロッツェリア」だ。この時代、ドライエなどコーチビルダーのように既存のシャシーをベースに高級車を世に送り出すという手法が多く存在した。この車両はLR4スーパー5(サンク)だ。オーナーは一枚の戦前の古い写真を見せてくれた。彼が5歳の頃、父親のスーパー5に一緒に乗った写真だ。その思い出からこのスーパーサンクを手に入れたとのことだ。

ローゼンガルト・スーパー5。

そんな話をしていると続々とメンバーが到着し始めた。寒い日曜の朝。公園を歩く人はまばらだ。それでも人々が車を眺めて立ち止まると、オーナー達はその車の話をし始める。…といった感じで、小さいクラブながらも車好きの情熱は負けていない。すぐ隣町にヴァンセンヌ旧車クラブがあるのに、このそれほど大きくない街にこれだけ旧車が集まるというのは逆に驚きでもあった。

到着したアルピーヌ310 V6。

一通りお話しをうかがい、撮影も終わったので退散しようとすると「ヴァンショー(ホットワイン)でも飲んで行けよ」「俺は柔道をやってるんだけどおまえもやってるんだろ?」などなかなか帰してくれない。小さいクラブだけど、いや、小さいクラブだからこそ、なんだか温かくてとても居心地の良いミーティングだったのだ。

写真・文:櫻井朋成 Words and Photography: Tomonari SAKURAI

写真・文:櫻井朋成 Words and Photography: Tomonari SAKURAI

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