「多大な努力と幸運の象徴」8台のポルシェ964が並ぶガレージ

Porsche

弁護士にとって、物事を白黒はっきりさせることは重要なことである。しかし、ある一人の弁護士であるハンス・オリバー・プレガーは仕事以外の生活において、特にガレージはさまざまな色に溢れている。

ずっと夢見ていたものを見つけるため、長い時間をかける人がいる。彼は車というひとつの夢があった。その夢のため勤勉に働き、憧れていた夢の車を手にするとガレージを家のすぐ裏に作った。情熱の証ともいえるプレガー夫妻のガレージには、現在8台の車が収められている。いずれも964世代のポルシェ911モデルだ。彼らのリビングソファから見えるその1台1台は、喜びの源であり、幸せな時間の思い出であり、多大な努力と幸運の象徴でもある。



ベルリンの南郊にあるリヒテンラーデのガレージを開けると、8台の911が誇らしげに佇んでいる。リビエラ・ブルー、ルビー・スター、バイオレット・ブルー・メタリック、ミントグリーン、イエロー・グリーン、マリタイム・ブルー、ブロッサム・イエロー、コンチネンタル・オレンジ......そして数日後には、9台目のコッパ・フローリオが加わる。バーベキューのスイッチを入れ、ガレージの裏で日が暮れ始めると、元プロバレーボール選手の彼は、翌日に小旅行を計画していることを明かした。

話すことが好きなプレガーは、その性質が家族に受け継がれているという。彼の父、ハンズ=エッケハルドは有名な弁護士で、詩を自費出版したり、法廷でのスピーチを詩にしたりしていた。「父は大きな口ひげを生やし、鮮やかな色のネクタイを好んでいました」と語るプレガーは、父の死後、姉のマヤ=シルヴィアンとともに法律事務所を引き継いだ。「私は正義感が強いのです」と説明する51歳の彼は、「常に弱い立場の人の味方をします」と語っている。彼の専門は、交通法と刑法である。また、民事、相続、契約などの分野も担当している。

そんな彼が初めてポルシェ964を購入したのは1993年11月のことだった。彼がある日出会ったミントグリーンの911はマナーハウスの前に停められており、「黒いコンバーチブルトップには雪が積もっていた」とプレジャーは記憶している。「ポルシェ初心者の私は、1990年代のカラーには馴染みがありませんでした」と彼は振り返る。「しかし、雪に覆われながらも輝いていたミントグリーンのポルシェは、すぐに私の心を奪いました。911でこのカラーより素晴らしいものはないと瞬間的に確信したのです」 その後、車の書類を見させてもらっているとミントグリーンの964が最初に登録された日は、自分の誕生日である10月29日であることがわかったのだという。誰しもが運命を感じてしまうだろう。ここからポルシェという大きな目標がスタートしたのであった。ちなみに、ハンスにとって車のオリジナリティは重要ではないという。しかし、スピードラインのホイールだけは重要なポイントなのだとか。



印象的なプレガー夫妻の自宅は9年前までハンスの兄が住んでいたが、元を辿れば1920年に建てられており非常に長い歴史を持っている。天井の高さは3.5メートル以上あり、夫妻のお気に入りの場所である。ポルシェを購入するとすぐにその家の裏にガレージを建てた。ライトブルーの壁がカラフルなポルシェと見事にマッチしている。オルデンブルク出身で美しい伝統とともに育った妻であるアンドレアは、東フリシア産の紅茶を結晶化した砂糖に注ぎながら2人の思い出を話してくれた。2人が知り合ったのは、1986年の休暇中、10代の頃だった。すべてが始まったキャンプ場には今でも足を運んでいるそうだ。もちろん、そこへはポルシェで向かう。それぞれがその日の気分でポルシェのカラーを選び、ビビッドな2台でのツーリングも日常の一環である。



2人は法律事務所で共に働き、カラフルな911への情熱を共有している。アンドレアのハンドバッグには、ガソリンポンプ、イグニッション、エンジンコントロールユニットを制御するDMEリレーがいつも入っているというのだ。「いつか必要になったときに、持っていなくても困らないようにするため」と彼女は説明する。そして、ドライブには数年前に迷子になっていたところを保護した猫も一緒だ。ポルシェ仲間とは猫の話でも楽しんでいるようだ。



911の3代目が発売された1989年、ポルシェは厳しい経済状況に置かれていた。944と928の販売台数が大幅に減少していたため、多くの人が964の時代が来たと感じていた。964では85%のパーツが新規に開発されたが、先行するGモデルの伝統的なフォルムをほぼそのまま受け継いでいた。964は、困難な時期にあったスポーツカーメーカーに幸運をもたらしたモデルであった。そしてそれから数十年後、964はプレガー家に幸せをもたらし、彼らの記憶の中、そしてガレージの中を満たしている。プレガー家だけではなく、世界中で今もなお愛され多くの人に幸せを与えている。車というものは、真の意味で時代を超えて人々に喜びを運んでくれる、唯一無二の存在であるのだと2人の笑顔を通じて改めて感じさせられた。

オクタン日本版編集部

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