60年を経て蘇った!フェラーリ テスタロッサから再製作されたレーシングカー

Photography:Reverendpixel



グッドウッドでのデビューのすぐ後、我々はこのフェラーリを運転するチャンスを与えられた。その日は激しい通り雨に歓迎されたが、コークのトレーラーに雨宿りしながら、雨の中に佇むフェラーリのボディラインをじっくりと眺めることができた。フロント周りはポンツーン・フェンダーのテスタロッサ・デザインがその後どのように進化したかを反映している。いっぽうでリアエンドは、マラネロ製モデルほど抑揚が強くはない。コークが指摘したように、より高く、幅広く、フラットなリアセクションはコスティン・ボディのリスターを思い起こさせる。

無塗装のボディとサイドエグゾーストは、1961年の最初のレ―スに臨んだオリジナルカーそのままだ。ジョルジュとクロードその後間もなく赤に塗装し(コークもそうする予定だ)、リアの両サイドにつながる6イン1の長いエグゾーストシステムを開発した。ドライビングポジションはラグビー選手にとっては申し分ない。もしあなたがそうでなければ、たとえばクッションを2個ほどシートに挟めば快適な姿勢を取ることができるだろう。一旦身を落ち着ければ、シートからの眺めは素晴らしい。ウェバー・キャブレターのインテークボックスの両サイドにはフロントフェンダーがくっきりと盛り上がっているのだ。



クラッチはオンとオフが明確なスパルタンなタイプで、混みあったパドックを移動するだけで楽しかったに違いない。シフトレバー操作は重いが、動きは正確で素晴らしい感触が伝わってくる。ディスクブレーキは重いペダルを踏んだ分だけしっかりと効き、実際に2頭の鹿がコースを横切った時にその能力を証明して見せた。幸いバンビとその友だちは無事に走り去り、見事に製作されたボディワークにも影響はなかった。いくつかの操作系の重さはウッドリムのステアリングホイールの繊細さと釣り合っているとは言い難かったが、ハンドリングは、この時代のスポーツレーシングカーに想像するような腕っぷしの強さではなく、正確さとバランス感覚を要するものだ。濡れたコースのすぐそばにまで立木が迫っているために、さすがに限界までグリップを試すようなことはできなかった。

3リッター V12ユニットは最高のひと言に尽きる。スロットルを試しに恐る恐る踏んでみると、キャブレターはわずかに咳き込むが、思い切って深く踏み込めば、たちまちエンジンは鋭く反応し、低回転では互いに競い合っているような様々なメカニカルノイズが、回転が上昇するにつれて一体となり荘厳な咆哮に変わる。1950年代から60年代にかけてフェラーリの伝説を築き上げたのは、まさにこのV12エンジンと言えるのに、不思議なことにコークは彼の最初のテスタロッサを売却した後になって、それなしでは暮らせないということに気づいたという。

「本格的にテスト走行を行い、セッティングを始めると、これはテスタロッサよりもはるかに運転して楽しいということが分かった」と彼は語った。「テスタロッサはどうしてもアンダーステアを解消できなかったが、このフェラーリはバランスが良く、本物のレーシングカーのフィーリングに近い。最初はグッドウッドのバックストレートで心許なかったが、微調整を進めると改善された。それはまさにガシュナン兄弟の開発の狙いだった」

ジョルジュとクロードの助けによって、コークはこの車を正式にCEGGAフェラーリとして登録できた。ガシュナン兄弟の協力によって、これは単なる「リクリエーション」ではなく、オリジナル・レースカーの魂を宿したワンオフ・フェラーリとなったのだ。

「私たちは望み通りの車を作り上げた」とコークは言う。「それは、当時のように甦ったこの車であの頃の偉大なライバルと競い合うことだ。それだけで素敵なことじゃないかい?」

編集翻訳:高平高輝 Transcreation:Koki TAKAHIRA Words:James Page Photography:Reverendpixel

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