伝説のレーシングカー│ル・マンを一度走っただけの「レイトン962」とは?

Photography:John Colley

ポルシェ956と962はこれまで作られた耐久レース用のレーシングカーの中でもっとも成功した車である。両車を合わせるとかなり多くの台数が作られたことで知られている。また、イグニッションキーひとつでレースを走れるというロードカー並みの扱いのよさを、レーシングカーのひとつの基準としてしまった車でもある。956は1982年にグループC規定が施行されるや、早くも圧倒的な強さを発揮した。
 
アメリカで行われるIMSAシリーズの規定に合致させるために設計し直したのが962である。ホイールベースを延ばしドライバーの足を守るペダルボックスをフロントアクスルの後ろに来るようにしたのが再設計のポイントだ。エンジンはこれもIMSAの規定に沿ってシングルターボだったが、のちに登場する世界選手権仕様の962Cではツインターボを搭載した。962は10年間、競争力を保つために継続的な開発がなされた。そして作られた数は、すべてのタイプを合わせると生産能力の限界を超えるほどの100台以上にも達した。これらの車は仕様を問わず、すべてがポルシェ伝統のフラットシックス・エンジンを搭載する。
 
ポルシェとつながりの深い準ワークスとも呼べるチームにはポルシェのパーツを使いながらもマシン製作にモディファイすることも許していた。レイトンハウスがスポンサーとなったシャシー、962CK6-87は、2826㏄エンジンにツインターボを組み合わせたものであり、クレマー・レーシングによって仕立てられた一台である。1987年のル・マン24時間に出場し、4位を得るという戦績を残した車だ。ただし、レースを走ったのはこの一度だけ。その後はクレマー・レーシングのコレクションとして1998年まで保管されていた。

レースに出場したときのまま、何の手も加えられていない稀有な車である。現在のオーナーであるポール・ミカエルズは2006年にこの車を入手、以来よい状態で保存することに腐心してきたコレクターである。彼自身はレースカーをドライブせず、グッドウッドではジョン・ワトソンが走る姿を目を細めて楽しんでいた。これまで車の面倒を見てきたのは、ロジャー・ヘヴンス・レーシングである。

編集翻訳:尾澤英彦 Transcreation:Hidehiko OZAWA Words:Tony Dron Photography:John Colley Thanks to John Watson, Paul Michaels and Donington Park.

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