フラットな路面では過激すぎた!ポルシェの「モンスター」ロードカーとは?

ポルシェ911シリーズにRSのモデル名を復活させたタイプ964RSは、911の次世代への対応として1992年に発表され、ポルシェパラノイア達はこのモンスターについてすべてを熟知している。964はフラットな路面上では卓越したロードホールディングとハンドリングをもち、3.6リッターエンジンから発生する261bhpのパワーで当然速かった(161mph=259㎞/h)が、通常の路上では過激すぎた。
 
軽量ワイヤーハーネスに軽量ボディパネル、薄いウィンドウガラス。そして部分的にシーム溶接を使った軽量ボディ。ポルシェはこのRSに大金を費やした。エンジンマウントは油圧ダンパーなしの硬質ゴム製だ。特別のギアレシオとリミテッドスリップデフが標準装備される。
 
このRSは、ベースとなった"どちらかといえばソフトで現代的な"カレラ2とはかなり異なるドライブフィールを提供する。この年式のスタンダードバージョンは、見た目は911だが、パワーステアリングさえ備わり、ほとんど初心者でも扱えるハンドリングという、以前の911からすれば驚くような変更が加えられていた。過激な変更を受けた964RSはといえば、やっかいなことになる可能性が充分あって、ある意味そのとおりであった。すなわち完全に平坦な路面は別として驚くほどすっ飛ぶ。でこぼこのB級国道、特にウェット状態では、熟練の911エキスパートでさえ後ずさりしたくなる。走行中のロードノイズとハーシュネスに関しては、あきれるばかりだ。それにもかかわらずこの車が得意とするサーキット走行のブームの所為で価格は上がり、964による「RS」の復活は成功した。


 
「もちろんこれは最低なロードカーさ」と、オーナーであるジョン・パウエルは笑いながら頷いた。「そんなことは百も承知していたけれど、18カ月前にドイツからこれを買った時、以前のオーナーがこれ以上この車に耐えられたとは思えなかった。彼は72歳の"オールドボーイ"だったからね」
 
ジョンがしたことは正しかった。そしてロールケージを入れて完全なサーキット専用にしてしまった。しかも彼は17インチホイールを18インチに替え、ご想像のとおりドライビングを一層悪くしたのだ。でもがっかりしないでほしい。この野獣でコースに入ると、この日一番の楽しみに出合った。速い。レーサーのように速い。しかもハンドリングはこの環境なら申し分がなく、大きくてガッツのあるエンジンはとにかく回る。そしてマシン全体は、実際のところ古いワーキングシューズみたいに頑丈だ。これで家に帰るのはごめんこうむるが、ブランティングソープの最初のコーナーでは思わず顔がニヤついてしまった。え、もう十分だって。
 
911というものについて疑問視している人を説得するための車を選ばなければならない場合、もし選択肢があるなら、私だったら昔どおり楽しい964RSを最適な車として選ぶだろう。だが、このまま乗り逃げしたくなる1台というなら、993ボディをベースに1996年式として生産された次の993RSのほうを選ぶ。新型マルチリンクリアサスペンションはロードホールディングとシャシーバランスを改善し、またギアチェンジメカニズムを改善した6段ギアボックスが採用されたお陰で、993は一般的には964の大幅改善版となった。

オクタン日本版編集部

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