歴史的なグランプリカー"メルセデス・ベンツW196R"が高額で落札された理由

メルセデス・ベンツW196R



W196Rの現在、そして"06/54"号車

W196Rは14台が製作され、そのうち10台が現存し、メルセデス・ベンツ・ミュージアムが6台を保存している(02、05、08、10、13、14)。このほか、各国の主要な博物館に、オープンホイールの03とストリームライナーの09と12が寄贈されている。

本稿の主人公である06/54は、社内での様々なテストに用いられたあと、1973年5月22日、イギリスのハンプシャー州にあるナショナル・モーター・ミュージアム(NMM)に寄贈され、観覧者の注目を浴びていた。

ところが、その後、NMMは図書館と講演会場の建設資金を捻出するため、あろうことか、寄贈されたW196Rを売りに出すことにした。道義的な問題を含めて物議をかもしたが、ダイムラーほかと合意に達し、ダイムラー・ベンツがNMMの新しい設備の建設に貢献したとして名を連ね、06/54は英国の実業家で著名コレクターのサー・アンソニー・バムフォードが買い取った。その後、ドイツのビジネスマンのフリートヘルム・ローの手に渡り、 1999年と2000年にモナコ・ヒストリック・グランプリ、そしてグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードに出場した。その後も転売され、数年ぶりに公の前に現れた06/54は、2013年7月12日にフェスティバル・オブ・スピードで開催されたボナムスのオークションに出された。

電話での息詰まる競り合いの末、落札されたが、それが誰なのかは未だ明らかにされていない。メルセデス・ベンツの革新的な技術の証、ファンジオの偉業を刻んだW196Rは、近代ドイツと、混乱から立ち上がろうとした人々のシンボルでもある。ワールドチャンピオンに向けたイノベーションやパフォーマンスだけでなく、平和も祝う存在であろう。

W196R_000 06/54戦績
1954年
8月1日 第3戦ドイツGP 1位 J.M.ファンジオz
8月23日 第4戦スイス GP1位 J.M.ファンジオ
9月5日 第5戦イタリア GP4位 H.ヘルマン
10月24日 第7戦スペイン GP DNF H.ヘルマン
1955年
9月11日 第 7戦イタリア GP DNF K.クリンク


1954年のドイツGPでファンジオは06/54をドライブして優勝を果たした。1954年のスイスGPでは2度目のワールドチャンピオンシップもこの06/54で獲得した。現在はよりシンプルで軽量な1955年シーズン用のボディワークを持つ


少しゆがんだ軽合金製ボディワーク、そして剥がれかけているペイントが、この06/54がオリジナルであることを裏付けている。


インレットから入った外気は大径のインボードドラムブレーキを冷やす。


幅の広いトランスミッションのため、ブレーキペダルとクラッチペダルはその両側に配されている。シートの幅は広い。


ギアシフトのパターンはパズルのようだ

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