ランボルギーニ、その60年はV12と共にあり|60 Years of Lamborghini V12 Power

Octane UK

ランボルギーニの起源にまつわる物語はよく知られている。イタリアン・エキゾティックの世界で新参者のフェルッチョが注目を集めるためには、フェラーリに匹敵するエンジンを持たねばならなかった。そこで彼は世界最高の、少なくともフェラーリには勝てるエンジンの設計をジオット・ビッザリーニに依頼した。最初期の3.5リッターV12、DOHC4カムはすでに超一級のエンジンで、新型へと完全に代替されるまでおよそ半世紀に渡り使われ続けたのだった。ウラッコのV8やガヤルド・ウラカンのV10といった人気エンジンも開発したけれど、V12はランボルギーニのDNAとなり、伝説となったのだ。ランボルギーニ60年の歴史はV12エンジンと共にあったと言っていい。



350GT


全ての始まりは350GTだった。270bhpの3.5リッターV12を積んだフェルッチョ最初の市販モデル。のちのモデルに比べてそのスタイリングは非常に抑制の効いたもので、それはフェルッチョが、この道に進むきっかけとなった偉大なる隣人、フェラーリよりも優れたGTを作りたかったからに他ならない。例によってより高出力な性能が求められ、すぐさま400GTへと進化する。排気量は3.9リッターまで高められ、最高出力も320bhpに達した。このエンジンペアを載せたフェルッチョ個人のリーバ・アクアラマは当時、世界最速のスピードボートだった。

ミウラ


V12エンジンをリアミドに横置きするというミウラの構造は複雑なものだった。なかでも大きな欠点はエンジンとトランスミッションが潤滑油を共有したこと。そのためギアボックスの動きに問題が生じることが多々あった。扱いやすさを重視していた400GTとは打って変わって、ピークパワーの発揮に照準を当てたエンジンは、4基のダウンドラフト・トリプルチョーク・ウェバーキャブのおかげで初期型でも345bhp、中期のミウラSで365bhp、最終モデルのSVに至っては380bhpを発揮するに至った。エスパーダ、イスレロ、ハラマもこの3.9リッターエンジンを共有する。

カウンタックとLM002


カウンタック用のV12エンジンは実に16年もの間、幾度となく進化しながら積まれていた。エンジニアがもっと強力な5リッターエンジンを望んでいたにもかかわらず、初期型用はミウラと同じ3.9リッターの370bhpユニットだった。その後82年には LP500Sに4.8リッターエンジン(ダウンドラフト)が積まれ、87年には1気筒あたり4つのバルブを備えた究極の 5.2リッター版を搭載するLP5000クワトロバルボーレが登場する。排出ガス規制をクリアするため一部のマーケット用にはインジェクション仕様の設定もあったが、キャブレター仕様もまた最後までラインナップされ、最終的には449bhp(この数字はかなり控えめだ)に達したのだった。このエンジンは四駆のLM002にも積まれたほか、派生機として7.2リッターのマリンスペックモンスターも存在する。

ディアブロ


カウンタック後継モデルとしてディアブロが誕生すると、ビッザリーニのV12は驚くほどの進化を果たしていた。排気量は5.7リッターにまで拡大され、最新の燃料噴射システムを搭載することでスタンダードグレードでも実に485bhp、SE30イオタに至っては523bhpもの出力を発揮するに至った。さらにアウディ傘下になってから行われたフェイスリフトモデルにはついに550bhpの6リッターエンジンが積まれることになる。また世界限定80台のディアブロGTには575bhpの6リッターエンジンが搭載された。

F1用エンジンもあった?


V12エンジンのルーツは1.5リッターのF1ユニットだったが、黎明期のランボルギーニはモータースポーツにまるで関心を示さなかった。のちにクライスラー傘下となってやってきたアメリカ人たちは、イタリア人の助けを借りて F1界にその名を轟かせることを夢見たのだった。おりしも1989年から過給機付きエンジンが禁止されたから、新たなレーシングV12計画にとって、それはまたとないチャンスにも見えたのだった。そこでフェラーリから引き抜いたマウロ・フォルギエリにまったく新しい3.5リッターV12エンジンの設計を託す。LE3512と呼ばれたユニットはラルースF1に搭載され、なかなか見どころのあるパフォーマンスを発揮した。600bhpから750bhpを発揮。パワーはあるが信頼性に欠けるという評価だった。93年にはマクラーレンがこのエンジンを積んでセナがテストするも、彼らはプジョーV10を選択する。ランボルギーニのF1エンジン生産に終わりが告げられたのだった。

ムルシエラゴ、アヴェンタドール、そしてレヴエルト


結局のところオリジナルのビッザリーニV12は基本設計を変えることなく、といってもすべてのパーツが改良されて、元のままのパーツなどもはや何も残っていたなかったけれども、ムルシエラゴの生産が終わるまで使われ続けた。最後のエンジンは限定車LP6704用の661bhp仕様で、これがオリジナルV12の究極となった。2011年、ムルシエラゴを継いだアヴェンタドールのミドシップには、前作とはまるで関連のない完全新設計の6.5リッターV12が搭載された。最新のエンジンらしくはるかに効率的で高性能を誇ったそのV12は、690bhpで始まり、21年に登場した最終モデルのLP7804ウルティメでは769bhpを発揮するに至っている。そして、最新のフラッグシップモデルであるレヴエルトには再び新設計された6.5リッターV12エンジンが搭載された。9250rpmでなんと814bhpを実現。電気モーターとの組み合わせで実に1001bhpのシステム最高出力を誇っている。


編集翻訳:西川 淳 Transcreation: Jun NISHIKAWA

西川 淳

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