「あるべきもの」がない !? 特別なカウンタックLP400のレストレーションがついに完成

Yusuke KOBAYASHI

2017年、ランボルギーニ社のクラシックカー部門であるポロストリコに日本から1台のカウンタックLP400がレストアに持ち込まれた。完成披露に立ち会ったジャーナリスト西川 淳氏が、この車の特別たる理由に迫る。



「ようやく完成したようなので、一緒にサンタガータまで見に行きませんか?」
友人(けんちゃん)からそう誘われ、二つ返事で了解した。

足掛け5年。何しろレストアに出したその日から何度も進捗を直接イタリアで見てきた個体である。しかも、とてもめずらしい仕様であることが分かっていた。めずらしいどころじゃない。あり得ない仕様とでも言った方がいいだろうか。とにかく、そんな車のメーカーレストレーションが完成したと聞いて、見に行かないという選択肢はなかった。

そもそもカウンタックLP400のポロストリコによるフルレストレーションと聞いただけで、車好きなら見たくなるだろう。今でこそポロストリコから新車のようになって帰ってくるカウンタックはめずらしくないけれど、友人が出した頃はまだミウラや350&400GT系がメインで、カウンタックは手がけていなかったはずだ。いち早くカウンタックをポロストリコに出した友人の決断には大いに敬意を表したい。その結果として、ただのLP400ではない個体がランボルギーニ自身の手で蘇ったのだから、なるほど貴重な個体というものは収まるべきところに収まるものだなぁと改めて感じ入る。



特別な個体の詳細やレストレーションのプロセスなどについては次号(編集部註:『オクタン日本版』41号/2023年3月発売予定)以降、じっくりと紹介したい。よりマニアックな情報を欲しい人はそちらを楽しみにしていて欲しい。まずは10月頭にイタリアで行われたレストレーションの確認セレモニーとでもいうべきイベントの報告をしておこう。

通常は1、2年で完成するポロストリコのレストア。こんなにも時間がかかった理由は新型コロナに加えて、この個体が非常に特別で、その確認作業にさしものポロストリコも手間取ったからである。何が特別なのか。マニアであればこの写真を見て、とある異変に気づくはず。そう、このLP400のルーフには特徴的なペリスコープがない。



さらに衝撃的な秘密がこのボディカウルには隠されていた。アルミニウム製ではなくスチール製。磁石が引っ付く、のだ!

超カウンタックマニアの間では有名な個体なのだが、今回、ポロストリコが詳細にカウルの接合方法などをチェックしたところ、とにかくサンタガータで作った蓋然性が高いという決断が下された。詳細や所見については次号にて詳しくリポートするが、とにかく珍しい個体であることは間違いない。



色鮮やかなブルー(ディーノの青でLP400にペイントされたのはこれを含め2台らしい)へと復元されたLP400は、新型LPI800-4と共にモデナサーキットで我々を待っていた。長年のレストレーション、しかも貴重な個体の完成ということで、撮影や試乗チェックを思う存分にできるよう、ポロストリコが特別にサーキットを貸し切ってくれたのだ。しかも当日には元F1ドライバーでランボルギーニ製F1エンジンのドライブ経験もあるティエリー・ブーツェン氏も駆けつけ、友人のLP400をドライブした。

メーカーレストアだけあって、ほとんど新車のようなコンディションである。エクステリアはもちろん、インテリアの質感が素晴らしい。新車体験をもう一度味わうことができるという点でも、メーカー仕上げは価値があると思う。

とはいえ試走ではいくつか改善点も発見された。それらを仕上げ直したうえで友人の元へ正式にデリバリーされることになる。来年はランボルギーニの60周年、記念のイベントなどで披露される機会もあるだろう。




文:西川 淳 写真:小林悠佑
Words: Jun NISHIKAWA Photography: Yusuke KOBAYASHI

文:西川 淳

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