レトロモービルで活気づくパリ|ボナムスのオークションではエンツォが6億円超えで落札!

Tomonari SAKURAI

1月の最終週はレトロモービルでパリが活気づく。そのちょっと前からパリは暗雲が立ちこめてきた。パリオリンピックを半年後に控え、まるで便乗値上げのような政策を次々と繰り出してくるフランス政府に農民が耐えかね、地方からデモが拡散してきている。そのデモ隊は各地方からじわじわとパリを包囲する。数十台のトラクターが高速道路を封鎖、市役所前でタイヤやゴミをばらまき火を付けるなど事態は深刻になってきている。このデモ隊のパリ侵入を阻止しようと先に高速道を閉鎖したことで、一般車は強制的に高速道路から追い出されて周辺の一般道は大渋滞。パリの台所と呼ばれるランジスの市場はオルリー空港に近いこともありその周辺にトラクターが集まり取り囲んで流通を妨げたり。こうなるとパリ市内への影響も徐々に出てきて心配ではあるが、そんな中、パリの旧車ウィークが幕を切った。

エッフェル塔の後に建てられたグラン パレ エフェメールに旧車、名車が集められた。

世界中の旧車マニアが注目するレトロモービルに合わせてボナムス、RMサザビースのふたつのオークショニアがパリでオークションを開催した。最初に始まったボナムスのオークション”Les Grandes Marques du Monde à Paris”をまず訪れた。ボナムスは毎年シャンゼリゼ通りのグランパレで通常行われているが、オリンピックを前に大改修工事の真っ最中のために、エッフェル塔の後に設置されたグラン パレ エフェメールで行われた。

会場に入るとランボルギーニ ミウラP400SやカウンタックLP400Sシリーズ2などが中央にスポットライトを浴びて展示されている。

338が生産されたランボルギーニミウラ P400 Sの1台。新車でフランスに輸出され1986年にレストアされ2008年までは100kmしか走行していない記録が残っているというもの。落札価格は約1億5千万円。

1981年ランボルギーニ カウンタック LP400SシリーズII。メタリックブルーはこのシリーズで唯一この一台のみのモデルだとか。落札価格は約1億円。

それよりもマイクロカーに心を奪われる。このコレクションはあるコレクターがヨーロッパ中を探して15年にわたり収集、レストアをしたものだ。特にレストアに定評があり、この15年間でいくつも賞に輝いているという。おなじみのイセッタやメッサーシュミットに囲まれオーストラリアのゴッゴモービル ダーツなんて言うのもある。これは1959年から61年に生産され、ドイツのハンス グラス社で作られたシャシーをオーストラリアに送りスポーツカーとして生産されたもの。今回のモデルはオランダで見つかったモデルをフルレストアし、いくつかの賞を受賞している一台だ。その際ボディシェルの接合部分を除去するなど、さらに魅力的な仕上げを施している。最高速度は392cc 2ストツインエンジンから104km/hを発揮。ギアチェンジも申し分なく十分に楽しめる一台だという。落札価格は2万5300ユーロ(約400万円)。

かわいらしいマイクロカーが並ぶ。

当時16万台以上生産されたマイクロカーでもっとも成功したイセッタ。2015年にフルレストア。外装のツートンカラーは当時の色を再現している。約380万円で落札。

これだけイセッタによく似たスタイルを如何にしてハインケルが製造できたか謎の一つ。イセッタよりもウィンドウが大きく取られているのが特徴的。2020年にフルレストアされており約430万円で落札された。

探し続けて20年ようやくオランダで発見。フルレストアされたゴッゴモービルダーツ400。落札価格は約400万円。

手前もゴッゴモービルのT300サルーン。奥はツェンダップ ヤヌス250サルーン。

そして気になるのはバイク。バイクは30台ほどが出品されていたが、それらはひとりのコレクターから出品されたものだという。決してコンディションが良いとは言えないが魅力的なバイクがずらりと並んでいる。タンクやフレームの塗装は剥がれシートもボロボロだが一際目を引く1台は1958年のグランプリレーサー。250ccでイタリアGPで優勝した250cc最速のシングルのひとつ、ビアルベーロだ。フレームは1958年製でエンジンは62年の後期型のものを積んでいる。落札価格はバイクの中でダントツの12万6500ユーロ(約2000万円)という価格が付いた。

最速250ccシングル グランプリ マシン1958年 モトモリーニ 250cc ビアルベーロ。

DOHCを持つビアルベーロ シングルエンジン。

車の方では、今回最高価格で落札されたのは2004年フェラーリ エンツォで、391万ユーロ(約6億2000万円)だった。落札には至らなかったが、気になった1台は1948年に製造され1953年から3年連続でミッレミリアに出場し完走を果たした、フィアットのワークスチームによるフィアット 1100 S ベルリネッタ ミッレ ミリア“ゴボーン”。1948年9月21日に“カロッツェリア スペシアリ”として開発が進められ、その姿から背骨が弓なりに曲がる状態を意味する“ゴボーン”と呼ばれるようになったモデル。美しいカラーと特徴的なスタイルが魅力だが残念ながら落札には至らなかった。

2017年に新しいオーナーの手に移り3年間で1千万近い費用をかけてレストアされた。ミッレミリア焼かずカスのレースの経験を持つフィアット1100Sベルリネッタ ミッレミリア “ゴボーン”。

こうして、旧車ウィークの幕が開けられたのだ。


写真・文:櫻井朋成 Photography and Words: Tomonari SAKURAI

Tomonari SAKURAI

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