華やかに!明るく!個性あふれる女性たちが集う|富士ファンクルーズ「女性ドライバー」レポート

Octane Japan

昨年10月7日に開業した富士モータースポーツミュージアムと富士スピードウェイホテルは、より多くの方に車とモータースポーツ、そしてその歴史に興味を持てる機会を提供している。なかでも「富士ファンクルーズ(以下、FFC)」は、いわゆる愛車ミーティング+ホテルのランチ+ミュージアム鑑賞がセットになった、ホテルとミュージアムが併設されるこちらの施設だからこそ楽しめる充実度の高いイベントだ。



これまでのFFCは英国車など国別のテーマを設けて行われることが多かったが、第5回となる今回の主役(テーマ)は「女性ドライバー」。彼女たちの愛車12台とご友人やパートナーの方々を含む15名の方が参加した。さらにこの日はスペシャルゲストとして女性たちによる白熱したレースが行われる「KYOJOカップ」に参戦中の三浦愛選手、佐々木藍咲選手、そしてこのレースをプロデュースする関谷正徳さん、そしてアワードの審査員も務められた富士モータースポーツミュージアムの布垣館長らがFFCを盛り上げてくれた。





集合時間前から続々と集まる車たちは想像以上(筆者主観)に個性的な車ばかり。女性レーサーたちがゲストでやって来るという予告の効果か、参加者は走ることが大好きなお稽古(ドライビングのトレーニング)好きが多かったが、ファッションを楽しむようにインテリアの装飾を施し、“おうち時間”ならぬドライブタイムにこだわる方々、愛車との出会いでカーライフが変わったという女性たちと様々。

愛車紹介は笑いと感嘆に溢れるひと時だった。



たとえば、今年の秋のファッショントレンドカラーでもある赤いブラウスを着こなしネイルもバッチリの多田さんのトヨタ86 GT。ブラックのボディカラーにピンクの花柄デカールのほか随所にピンク色のパーツをあしらった外観やインテリアにも女性らしさが感じられたが、それ以上に参加者の感動と「強(共)感」したポイントはボンネットの中にあった。ピンクが好きすぎて、可能なかぎり(それはネジに一本にいたるまで)ピンク色にお色直しされている。ボンネットフード裏までピンクのラメ系色に塗られるほどのこだわりぶりに、エンジンルームに群がる女性たちから賞賛の声が上がっていた。そこで毎回、参加者が選ぶ「エントラント&オーディエンスアワード」は多田さんの86が選ばれたのであった。



トムスのフルエアロを纏いつつ、花柄のデカールが厳つさを和らげる赤い86のオーナーの桜井さんの“好き”モードの変化も86というスポーツカーとの出会いならではだった。ドレスアップから始まった86ライフはいつしかスピード、スライドコントロールなど走り=チューニングにも目が向くようになったそうだ。トークタイムではサーキット走行でのコンマ5秒のタイムアップの難しさと楽しさを紹介。その一方でより多くの女性たちと楽しい時間を共有したいとワインディングへのツーリングなども企画し、女性の車好きを増やす活動もされているという。



紫がかったピンクの80スープラ(MT)から金髪のロングヘア、メイクもバッチリで現われた村田さんは車もキラキラオーラがハンパではない。フロントパネル一面がピンク色に変更されたインテリアも華やか。前オーナーが灰皿として使用したスペースにスワロフスキーが敷き詰めたという彼女らしい発想とカスタマイズはフロアマットにまでおよんでいた。一方でこの日一番みんなを笑わせてくれたのもこの86スープラと村田さんだった。ピンクのボディカラーはドリフの名場面「ちょっとだけよ」のスポットライトの色に惹かれ再現したというエピソードにドッと笑いが起こり場を和ませていたのだ。そんな人も車も魅力的な村田さんが「東京ガールズ・カー・コレクション」の主宰者だと後にわかり皆、納得。女性たちの愛車がレッドカーペットの主役になる機会を作りたかったというこのイベントにも注目してみたい。



LAVOT(愛玩ロボット)を抱っこして現われた大阪さんはそこに居るだけで駐車場を公園の芝生に変えてしまいそうな癒やし系オーラを放っていたのだが…。そんな彼女の愛車はカーショップでたまたま代車で出会った日産シルビアS15(MT)である。デザインに惹かれ、預けていた車が戻ってからも忘れられず求愛。その後15年もS15シルビアに乗り続けている。「維持費に耐えられなくてすぐに降りるつもりでした。JAFの会費のモトが取れるほど何度も故障するけれど(苦笑)、手放したらぜったいに後悔すると思って乗り続けています」と大阪さん。このS15シルビア(‘99年式)は参加車両のなかで最も旧く、長年大切に乗られていることを称え布垣館長から富士スピードウエイミュージアムアワードが授与された。



大阪さんのお友達、“スイスポ”ことスイフトスポーツで参加された出原さんはお兄さんのランエボの助手席でターボエンジンの加速Gにすっかりヤラれ、ターボ車好きが高じてスイスポを購入したという。近々、念願のFSWを走るためにカスタマイズを進行中だ。ちなみに一見すると車の趣味の異なる大阪さんと出原さんの出会いが首都高のパーキングだったという。



NDロードスター(MT)のドライブフィールに魅せられ、すでに3台(RS→NR-A→現在の990S)を乗り継いでいるという川上さん。「軽量化にこだわった990Sのヒラヒラとした走りよりNR-Aのマッシブさが好きだとわかった」と先代の愛車に想いを寄せつ、嬉しそうに幌を開け現在のインテリアを披露してくれた。所々にスワロフスキーのデコレーションが施された車内の一番のこだわりはライトブルーのデニム地のバケットシート(BRIDEの限定モデル)。家を引っ越ししてもお気に入りのソファーは持ち続けているように、車を乗り換える度にこのシートを付け替える愛着ぶりとデニム地のシートそのものも女性たちから好評だった。



一方、参加者には愛車に何も手を加えず姿や走りを楽しんでいる方ももちろんいらっしゃる。高速道路でアウディTTの走る姿に魅せられて購入したという軽部さんは、そんなTTがきっかけで走る楽しさを知ったそうだ。今ではふと走りに行きたくなるほどTTとのドライブが一番のリフレッシュタイムになっている。



男性にとってはこんな奥さまが羨ましい? ご主人がずっと憧れていたというポルシェの購入の背中を押したのは今回の参加者である奥さま(橘さん)だったのだとか。でもマイアミブルーのボディカラーを推したのは奥さまで家庭内の商談は見事成立!? 橘さんは車が運転を上手くしてくれることを実感できる911のハンドリングや車両の開発思想に関心を寄せ、ご夫婦でポルシェライフを満喫されている。



参加者の愛車エピソードは尽きないが、ちなみに今回のゲスト佐々木藍咲(ラミ)さんは高校を卒業したばかりの免許取り立て女子である。そんな彼女の愛車は86、それも前オーナーが86レースで使用していたバリバリのナンバー付きレーシングカーだ。サーキットでは優れモノのデフが街中(低速)では路地を曲る際などにデフのゴッ、ゴッとギグシャクな動きをする。「そんな車に初心者マークを付けた女子が粋がって乗っていると思われていそうで、恥ずかしい」と、お気に入りの愛車との日常を語り皆さんの同情を集めていた。参加者の愛車に感心しきりの様子だった三浦愛選手は「愛車のスイフトスポーツ(MT)をもっと可愛がってあげたくなりました」と刺激された様子だった。





Cars & Coffeeから始まった屋外でのファンミーティングはConcours d’Eleganceの発表で終了するのはプログラム通り。ただし今回は関谷正徳さんからドライビングポジションの取り方のレクチャーという特別なギフトも用意されており、皆さんドライビングに向き合う“姿勢”を再認識できたようだ。



世界でも数少ないアンバウンドコレクションby Hyattとして誕生した富士スピードウェイホテルの随所に配された大小のオブジェとともにイタリアンランチを楽しんだ後は、布垣館長によるミュージアム鑑賞がスタート。館長が最初に選んだのは「今回、FR車で参加されている方が多かったので」とFRを初めて採用したルバッソールのType B2をセレクト。富士モータースポーツミュージアムの2フロアに渡って展示されるモデルはレースという競争の歴史や異なる国のモータースポーツ文化、さらに車両性能の進化の変遷を見知ることができる。今回はサーキット、ラリーと様々なカテゴリーで活躍した国内外のモデルも含め、時に駆け足で時にジックリと立つ止まり紹介をしてくださった。加えてル・マン24時間レースのチャンピオンでもある関谷さんのル・マン解説やドライバーを務めたMINOLTAスープラ紹介なども加わるという贅沢な鑑賞ツアーはいくら時間があっても足りないほどだ。

終盤、布垣館長は初めてのレースは蒸気/電気/ガソリンの競争だったと紹介し、車の技術を磨き産む“走る実験室”であるモータースポーツの魅力やこの先の車社会への思いを巡らせつつ、「でも今は皆さんの愛車をぜひもっと愉しんでください」と締めくくった。

ちなみに管内の展示モデルはサーキットで開催されるレースの他、イベントによって展示内容も変えることがあるそうだ。ただでさえ一度では見尽くせない知り尽くせないモデル展示は何度訪れても新しい発見を得る愉しみがあるだろう。









「女性ドライバー」をテーマとした第5回目の富士ファンクルーズは人も車も華やかさとスポーティさに溢れる、楽しい時間となった。今回はこういったイベントへの参加経験のある女性たちが多かったのだが、イベントに参加してみたいけれど車に詳しい男性たちに圧倒されて気後れしてしまいそうと躊躇する女性も実はいらっしゃるのではないか。このイベント主宰者でもある布垣館長は「このテーマの開催は今回が第一回目と言っても良いくらい。次回はより多くの女性ドライバーの方々に参加していただきたい」と次回の開催を匂わせてくれた。女性同士、遠慮なく“好き”を紹介し合い、色々な車好きの世界を楽しめる機会をぜひ楽しんでみてはいかがかしら? 


文:飯田裕子 写真:オクタン日本版編集部
Words: Yuko IIDA Photography: Octane Japan

飯田裕子

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